宝箱
高黄森哉
宝箱
宝箱が欲しい。
その宝箱はとても豪華な見た目をしている。外側には宝石が詰め込まれていて、宝石の中には、化石などが閉じ込められている。箱を金が縁取りしていて、鋲は銀で出来ている。また銅製のリリーフが埋め込まれている。これを見た人は恐らく宝石類や貴金属が中に大量にあると推測するだろう。この箱は投票箱程ある。この大きさは最も大きなダイアモンドが入る最低の大きさである。だから、ここに入っている宝石がそのダイアモンドだと予想する人もいる。
外側には時計のような構造がある。十二時になると回転して、陶器の人形が踊りだし、失われた中世の歌を歌う。とてもとても澄んだ小鳥の声で。まさかこの中には、我々の忘れてしまった、原始の歌の歌詞や旋律が示されているのだろうか。演奏すれば全ての戦争が止まるような。
箱は時々喋る。その意味は支離滅裂であり、ほとんどは文脈を無視している。まさに現実のように。この言葉はアカシックレコードの未来の読み上げだと主張する宗教家もいる。彼中には予言書が一つ朽ちていると。
箱は壊すことが出来ない。核爆弾の真下に置いてみても傷一つつけることは叶わない。複雑な化学式の強酸でさえ表面を融かすことさえ可能でない。これは異星人の贈り物で中には合金の製法がある。と NASA は考察する。
箱には十三の複雑な仕掛けがある。一つ一つ説明すると長くなるため割愛するが、例えば、気温に関係する解法や、重力の変化に対応するカラクリ、ある音楽と共振して進む歯車などがある。こんなにも複雑なのだからと、内部にとても役に立つ、未知の数式が詰まっていると、考える者もいるかもしれない。
鍵はイカニモ厳重で、三重になっている。一つ目はダイアル式で十桁の番号を入力しなければならない。二つ目は星型の鍵穴があり、専門の鍵を刺さなければならない。三つめは液体があり、比重の高い液体を注がなければならない。ここまでするのだから、とんでもないものが入っているはず。
そして、なによりも大切なのは、その三つ目の鍵が、どれも等しく機能しないということだ。こうしてこの宝箱は、人間の夢を含有し続けるのである。
宝箱 高黄森哉 @kamikawa2001
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます