第12話 バズりの兆候
配信枠を切ってから、マキには連絡を取った。
明日の配信の調整だ。
結論から言うと、マキはそもそもライブ配信をする気がなかったらしい。
俺は勝手に、マキは今後も変わらずライブをメインに据えていくものだ、とばかりに考えていた。
これまでライブ配信を中心にして活動していたからだ
マキ目線での話をすれば、ダンジョン攻略チャンネルとして動画投稿を主軸にするつもりだったそうだ。
たしかに、ジョンリーダーズを含め、一般的なダンジョン攻略チャンネルは、ライブ配信ではなく動画投稿が主流だ。
そのイメージが先行していて、ダンジョン攻略情報の発信を目的としたサブチャンネルでは、動画投稿を主にやっていく気だった、とのことだ。
ジョンリーダーズのリュウガはイケメンというよりか雰囲気イケメンの部類だった。そんなリュウガよりもマキはビジュアルで売れるのだから、俺的にはライブ配信中のスーパーチャットなどを目当てにした方がいいと思うのだが。
まあ、そこらへんはコンテンツの中心人物のマキが決めるべきことで、俺がとやかく言うことでもないだろう。
第一、俺の経験だって、登録者数100万人越えの超大手WeTuberと1000人にも満たない弱小WeTuberという、両極端の経験だ。必ずしも参考にはならない。
ただ、カハク異蹟の翼竜だけでは、攻略動画として纏めるには薄すぎる話題だ。
例えば、ウエノダンジョンの移動方法の動画であれば。
各異蹟のオススメの移動手段と確保方法を、複数纏めて紹介する、とか。
初心者向けに、移動手段としては最善ではなくても、確保が簡単なものを紹介する、とかを考える必要があるだろう。
結局、いろいろ勘案した結論として。
今回に限っては、ライブで配信を行うこととなった。
予定している内容としては、情報発信というよりチャンネルの方針の説明に近い。
「……あれ? どうなってるんだこれ?」
そして、マキのチャンネルを再び確認した時、俺はその異変に気がついた。
◇
Side:マキ
『珠城マキのこれからの活動とサブチャンネル創設についてのご報告』。
そんなタイトルが銘打たれたライブ配信枠が私のメインチャンネルには準備されていた。
数千人程度の登録者数となっているとはいえ、この数字は話題性ありきで集まった人たちだ。
残念ながらサブチャンネルまで登録をしてくれる人は多くないかもしれない。
それでも今の登録者数の1、2割でも移ってくれれば、これまでの活動も報われるというものだ。
0から始めるのと、百人程度でも登録者数がすでにいる状態から始めるのでは、雲泥の差だということは、メインチャンネルの活動で私はすでに痛感させられていた。
祈るような気持ちで開いた配信画面には、驚くべき光景が映し出されていた。
10、50と順調すぎるほどに視聴者数は増えてゆく。
最終的には100を越える同時接続数にまで辿り着いた。
「えっ、え。どう言うこと??」
一般に、ライブ配信を視聴する同時接続数は、チャンネル登録者数の1%程度だとされている。
待機を行う視聴者なんて、それから何%という話だ。
昨日までの私の視聴者数が100にも満たなかったことを考えれば、どんだけ異常なことか。
「ふー、落ち着け。私」
いつもと違う状況に、はやる気持ちを鎮める。
大体、実際に配信を開始するのはまだ何時間も先だ。
なんたってウエノダンジョンにすら、着いていないのだから。
[掲示板から来ました]
[同じスレ見てるやついて草]
[攻略組とか言うクソレアが見れると聞いて]
待機画面では、視聴者同士の会話が繰り広げられていた。
割合的に、前までの視聴者なんてほとんどいないらしく。普段の配信とはコメント欄の雰囲気も異なっている。
もっとも、私のチャンネルに守ってほしいルールとか雰囲気なんて存在しないようなものなので、それはそれで別に構わないのだけれど。
何なら、昨日までの配信のより民度がいいくらいかもしれない。
[自殺系なんて見てる底辺さんwちっすwちっすw]
[配信主に興味あるやつ皆無ってマジ?ww]
……いや、どっこいどっこいかも。
しかし、どうあれこんな状況になるとは思ってもいなかった。
確かに攻略組なんて相当レアな存在だ。
出会えたら奇跡、なんて本人たちには失礼だけど。実際のところ、遭遇する確率を数字にすれば奇跡に思える数字が出てくるに違いない。
でも、それがこんなに話題になるだなんて。
というか、これだけの話題性があるのなら、アキトさんは一人でそのままやれるんじゃあないだろうか。失礼ながら私のチャンネル未満にしか広まっていない、アキト本人のWeTubeチャンネルの謎が深まる。
ただ、これは私にとって、またとないチャンスだ。
もちろん耳目を集めた原因は、アキトさんにおんぶにだっこだけれども。ここで注目を浴びることに成功すれば、私の人気へと転換できる。
人気商売で一番重要なのは、人目を集めるキッカケなのだから。
そんな小さな覚悟を決めて。
私は通話アプリを開いた。
アキトさんに連絡を取るためだ。
こういった状況への対応方法を、知っているかもしれない。
……本当に、アキトさんにはおんぶにだっこだなぁ。
◆作者からのお願い
★や❤︎での支援、ご拝読を頂きありがとうございます。
「続きが読みたい」「面白かった」と少しでも感じましたら、『★で称える』の高評価をよろしくお願いします。
フォローや❤︎の応援、コメントなどもいただけると励みとなります。
勇者召喚でネットミーム化した俺は、顔を隠しても有名になってしまったらしい 小南ミカン @RuiLo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。勇者召喚でネットミーム化した俺は、顔を隠しても有名になってしまったらしいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます