第42話 新しい扉を開けよう


「どうやら、新しい同好会のイメージは少しずつ準備できているようだが……」


 森田先生がそこで口を開いた。


「人員の方が二人だけというのも心許ない。それに夢砂はマジカルサイエンス部では必須と言ってもいいアイテムでもある。それを使うには慣れた人間も必要だろう。お試しのワークショップを行うというのであれば、うちのメンバーもサブで参加したらどうだ? 必要ならサブ部員として登録してもいいんじゃないか?」


「先生!?」


「どうせ泣いても笑っても来年度が最後だ。マジカルサイエンス部という名前はもう復活させるつもりもない。だったら、そのエッセンスを引き継いでくれる二人の手伝いをしてもバチは当たらないだろう」


 先生の言っていることは間違いない。夢砂を作っているのは私なのだし、ワークショップの時だけでなく、私たちの誰かがいるということなら、二人も心強いに違いない。


 確かにマジカルサイエンス部として復活の第一要望だった南桜高校創立五十周年の文化祭に部活参加するという役目は果たした。


 私たちが卒業する来年春までの一年間は、言ってみればおまけの時間でもあるから、私たちの活動の一部を後輩に伝えていくことも十分に意義のあることだと思う。


 さっき試した夢砂を作ったのが私だということもあって、みんなが「どうする?」という顔で私を見ている。


「そんな顔で見ないでよ。私はそれでいいと思ってる。部長はどう?」


「そうなんだよなぁ。去年の今ごろに話を持ちかけられて、手探りでやってきたけど、自分たちも全員高三で受験もあるから、何でもかんでも自分たちだけでフルパワーというのは難しいだろう。それなら新しくパートナーと手を組むことは悪い話じゃないと思う」


 海斗くんもそう感じてくれているみたいだ。


 今度は私が残りの二人に顔を向けると、博史くんも風花ちゃんにも異論はなさそう。逆に何ができるかなという顔をしている。


「よし、それじゃ一年とちょっとだけど協力体制といこうじゃないか」


「やったぁ! 先輩たちが一緒なら不安もなくなります!」


 亜友さんと光莉さんも私たちの決定を喜んで迎えてくれることになった。


 うまく行けば年度が変わった四月に新入生が入ってくれる。


「じゃぁ、あとは正式名とワークショップをいつやるか決めようじゃないか」


 ひとつ方向が決まれば、みんなの頭がフル回転を始める。


「リラクゼーションの言葉は入れたいよね」


「夢砂とかマジカルサイエンス部を表に出すか迷うな」


「夢砂はメニューのひとつでしかないからね。私たちは来年春までのお手伝いだし」


「"presented by"を使ってみたら?」


「せっかくだから、ありきたりのなんとか『部』とか『同好会』ってのも外せれば外したいな」


 森田先生が確認を取ってくれて、特に名前に縛りの規定は無いと確認を取ってくれた。


「こんなのが作られると今の三年生が知ったら悔しがるだろうな」


「確かに〜」


 そこで、在校生へのお披露目を兼ねたワークショップは卒業式が終わった次の日の三月二日の金曜日の放課後。


 そして私たちもお手伝いをすることになった同好会の名前は、「放課後リラクゼカンパニー」に決まった。


「なんだか会社みたいだな」


「大丈夫。カンパニーは仲間、友達って意味がちゃんとあるから」


 日にちと活動の名前が決まればあとは動き出すだけ。


 お試しワークショップだからって手を抜くつもりはないからね。

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雨上がりは君のもとへ 小林汐希 @aqua_station

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