ただ、白い線の上を歩く。

もるぽ

プロローグ

 8月24日。今日の気温は38度。暑い。確実に毎年暑くなっている。夏が終わる8月末頃に出すハガキには「残暑お見舞い申し上げます」と書くそうだ。小学校の時の担任の先生が言っていたが、何をどう考えても残った暑さでは無い。最近の地球の頑張りぐあいには頭を抱えるほどだ。完全に空回りしている。ここまで頑張らなくてもいいのに、と思う。

 少し前、夏の始まりを告げるようにやかましく鳴き始め、これ以上暑さを盛り上げる必要も無いのになんてうるさい奴らだと思っていた、そんなセミたちもそろそろ寿命のようだ。最後の力を振り絞ってるのか、はたまた生に縋りついている様子なのか、あちこちで「ジージー」「ミンミン」と音を立てながら地に落ち、じたばたしている。心の底から死を恐れ、運命に抗っているように見える。そうだ、こいつらは7年間も先の見えないような暗がりの中を耐え抜いてきたのだ。強い覚悟と夢を持ち、僕達には到底想像できない下積み時代を乗り越えて、ようやく光り輝く世界を飛び回ることが出来たのだ。それなのに神様は残酷だ。生きることに全力だった純粋な彼らの命を奪っていく。短いからこそ輝く命ということなのだろうか。少なくともこの夏を誰よりも力いっぱい生きたのは彼らだろう。賞賛しかない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ただ、白い線の上を歩く。 もるぽ @morupo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る