死を語る人達

白川津 中々

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 いわゆる炎上を起こした配信者が自死し、SNSではお悔やみとお気持ちと手のひら返しと、配信者に対する批判投稿削除が巻き起こっていた。


 死んだ配信者は道義的な不備を犯し批判の的となっていた。彼は日夜人の目を惹く活動を勢力的に行っていて好意的な声が多数聞こえていたのだが炎上により一転、不義薄情の誹りが相次ぎ評判は下降の一途を辿る。それまでの栄華名声は地に落ち、罪人と同様の誹謗中傷に苛まれ、「あいつなら何を言ってもいい」という論調が罷り通っていた。しかし自ら命を絶った事により急変。同情と同時に批判の投稿を繰り返してきたアンチアカウントへの罵詈雑言が正義となる。特にインフルエンサーと呼ばれる人間は道徳を盾に糾弾し、かつて自身が受けた侮辱と屈辱を晴らすかのように激しい理論を展開。容赦なくアンチを追い詰めていった。潮目が変わると追悼とweb社会の悪意について語るアカウントが多数現れ、問題はリテラシーとマナーとモラルに移った。配信者の死は社会悪を論じるための材料となり、誰かを批判する武器に生まれ変わった。この武器はインフルエンサーによる苛烈なアンチ攻撃の中でよく用いられ、矛先は配信者へのアンチから批判を行う人間全員に向けられていった。もはや、配信者の死はきっかけに過ぎず、彼の生そのものに焦点が置かれることはない。彼はデータとなり、数多の例題のうちの一つとして数えられるようになったのだ


 配信者が何を思って死んでいったか誰も語らない。二元的な善悪と、教科書に載るような倫理道徳が叫ばれるばかりである。彼の墓に毎年手を合わせる人間がどれだけいるかは、これから先分かる事だ。

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死を語る人達 白川津 中々 @taka1212384

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