第8話 セト神と不正のイスフェト、そして………

 ホルスは暴挙の国を彷徨っていた。


 暴挙の国は砂漠と化し、猛暑が襲いかかる。


「あ、暑い………すごく暑いわ………」


 人間体温の維持ができなければ7時間で死ぬ。


 本来は10時間で死ぬのだが、7の法則で7時間とされる。


 そして、水分不足でも7日で死ぬとされる。


 これも本来は4から5日で死ぬ。


 しかし、それらは砂漠という環境での話ではない。


 ホルスは女性である。


 男性よりも温度変化に強く、生命力も優れる。


 それでも、気温45度を超える環境は人間が生きていける温度ではない。


「ご主人、日陰に入って休みましょう。昼間は猛暑で人間が動ける気温ではありません。」


 ホルスはバステトの言うことに従った。


 肌の色は元々褐色で、レイチェルはホルスに砂漠を任せた理由の一つでもある。


 この暑い中で、日射病を防ぐために肌を衣類で守らなければならない。


「ご主人、この日陰なら服を脱いでも大丈夫です。」


 砂漠の日陰も涼しいといえば涼しい。


 実際は暑い。


 夏の猛暑と言っても過言ではない。


 しかし、それが涼しいと感じる程の環境だ。


「ご主人!! レイヨーです!!」


 バステトがレイヨーを見つけるとチーターの如く追いかけていった。


 狩りをするために召喚し、新鮮な肝臓を焼いて食べれば、余った肉は干し肉にした。


 バステトはホルスのために囲いを作り、夜に備える。


「ん~~~~ッ♡ 温かい♡」


 ホルスは焚き火とバステトのぬくもりで砂漠の夜を過ごした。


 砂漠でのサバイバルで、毛皮を装着し、すっかり野生女子になってしまった。


「あ、スナネコだ!!」


 ホルスがスナネコを見つけるとそれを抱きかかえる。


 砂漠の環境でバステトが活躍するのもうなずけただろう。


 スナネコは砂漠環境で逞しく生きている。


 サボテンを見つければナイフで棘を取り除いてから食べ、アロエを見つければ、苦味がないか一度食べてみる。


 アロエには苦味が強い場合、毒性が高いものも存在する。


 バステトがライオンのメスを仕留めると、その皮を鞣してホルスの皮膚を守らせた。


「バステトと同じね!!」


 トラ柄の毛皮にネコ科動物の猫耳、逞しく生きているが、砂漠は体力を奪い取ってくる。


 そんな時、バステトが毛を逆立てる。


「なにかいるにゃ!!」


 バステトが周囲を警戒する。


 すると大地から砂の兵士が無数に現れると一斉にホルスへと襲いかかる。


 その数、ざっと30程度だろう。


 バステトはホルスを上空に投げるとホルスはベンヌを召喚した。


 バステトは俊敏な動きでやり過ごすがとても捌けそうにない。


 ホルスがバステトを神界に戻すとベンヌがすべてを焼き払う。


 砂の兵士が消えたが大地が持ち上がって巨大なカバの姿となった。


 カバの頭上に一人の大男が姿を表す。


「我はゾーク四神の一人、戦争の神にして砂漠の神、セト神!! 貴様がホルスか………我が力を思い知れ!!」


 セトが掌から竜巻を起こすとベンヌは巻き込まれてしまう。。


 竜巻の砂塵によってベンヌの炎が消えかけたために、ホルスはベンヌを戻し、地上に降り立った。


「ベンヌ戻って!! エクゾディアを召喚!!」


 ホルスがエクゾディアの右腕を片翼の天使として背中に生やす。


 砂塵を掻き消してセトに殴りかかる。


「フン!!」


 セトは自身の剛腕だけでエクゾディアの攻撃を受け止める。


「なかなかの怪力だ………だが、この俺を倒すには全力で来てもらわねば困るな。」


 ホルスは距離を取れば超魔力を圧縮させる。


 エクゾディアの魔力は聖女・キアナに匹敵するだろう。


「ぬん!!」


 セトが気合を入れて体で受けようとする。


 ホルスは容赦無く魔力を放った。


 余りの反動にホルスの体が吹っ飛ぶ、威力は壮絶だ。


 だが、セトはそれを体で受け止める。


「ぐッ、凄まじい魔力だ………この俺に第三の眼を開眼させるとは………あのゾーク様が手を焼く訳だ………」


 ホルスは驚愕し、恐怖した。


「嘘でしょ? エクゾディアの魔力よ!!? 通用しない訳がないわ!!」


 セトが第三の眼を開眼させて砂を操れば山をも超える巨大な河馬となる。


 河馬が口を開けば特大の魔力をホルスに向けて放った。


「砂丘・剛破山!!」


 その魔力砲はエクゾディアの10倍は超えている。


 ホルスはエクゾディアを開放したが、砂漠という過酷な環境で体力を消耗していた。


 全身鎖で拘束されたエクゾディアが召喚されればエクゾディアも眼から破壊光線を放つ、エクゾディアに取って、その魔力は100分の1に過ぎない。


 しかし、セトの放った魔力がそれを上回る。


「きゃッ!!?」


 エクゾディア諸共吹き飛ばされるホルス、セトが砂の兵士を200程召喚する。


「もう終わりか………詰まらん。」


 ホルスを捜索すれば、ホルスはすぐに見つかり、気絶していた。


「さて、エクゾディアをいただくとしよう………」


 セトがホルスからエクゾディアを奪い取ろうとすれば、セトの前に一人の女が現れる。


 その女はセトを見下ろしていた。


「セト、その女に何をするつもりだ?」


 セトが返答する。


「無論、エクゾディアをいただくまで………何か問題でも? イスフェト………」


 そう、この女がまどかを支配した本人、イスフェトである。


 イスフェトが言う。


「私にも半分寄越しなさい………さもないと、あんたを殺してすべてを奪い取るまでよ………」


 イスフェトは『不正の眼』を開眼させた。


 セトは大いに笑って筋肉を膨張させる。


「わっはっはっはっは!! 我をどうする気かな? イスフェト!!」


 イスフェトは不正の神であり、何をしてくるかわからない。


「開け、冥界の扉よ………」


 現世と冥界、生と死、法則が狂わされる。


「ほぉ、それで、どうするというのかな?」


 不正によって、この世の真理を狂わせれば、イスフェトは聖女・キアナによって消滅させられたゾークの闇を召喚して纏う。


「さぁてね………どうして欲しい………セト?」


 状況は最悪、ホルスの寿命がわずかに伸びただけ、力はセトが圧倒的、だが、イスフェトの能力は計り知れない。


「いい機会だな………闇世界準最強、果たしてどちらか………」


 セトが河馬の口から魔力を溜め込ませる。


 それに対して、イスフェトはゾークの闇から魔力を抽出させる。


「そうね………はっきりさせとこうじゃない!!」


 イスフェトは更に自身の超魔力を加える。


「滅びろ!! イスフェト!!」


 セトの河馬が魔力を放つとイスフェトも魔力を放った。


「死になさい!! セト!!」


 2つの魔力が打つかり合う時、一人の男が魔力に割って入り、炎の翼を広げ、それらを掻き消した。


「何者だ?」


 セトが尋ねるとイスフェトは驚愕して、その男の名を言う。


「ば、馬鹿な!!? なぜ、私に殺されたはずの貴様がいる!!? アトゥム!!」


 アトゥムの姿は炎を纏った太陽神・ラーの姿にそっくりであった。


 アトゥムが言う。


「ホルスに手出しはさせん!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

三流召喚士の娘 飛翔鳳凰 @remon0602

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ