第7話 闇の神と冥界の神、王子を攫うお姫様?
上杉が口にした数式は仮想数式であり、我々人間を表す式である。
ある意味では、万能な式とも言える。
オフェアリスが尋ねる。
「理論上で解明できたとしよう。それが現実的かどうかは、実際に実験してみないとね。」
オフェアリスはレイチェルを下ろせば、闇上杉はオフェアリスではなくレイチェルを狙った。
上杉の零に反応できる戦士は、桜井とオフェアリスだけだ。
オフェアリスが上杉の攻撃する手首を捕まえれば相手の背中にくるりと回って腰と腰を合わせると反対側へと飛び回った。
上杉の右手は腰に回ったが、上杉もくるりと回って、互いに正面を向き合った。
「オフェアリス!! 貴様の命、このアポピスが貰った!!」
黄金の国には、ゾークからアポピスが送られていた。
アポピスは闇の神であり、体には大蛇を巻き付けていた。
「と、言いたいところだが、俺には俺の任務がある。はぁああああ!!」
アポピスが世界を闇で包み込めば、太陽が隠されてしまう。
そう、毎晩ラーを戦っていた闇の神がゾークによって支配されてしまったのだ。
「そして、闇の中では無敵なのさ!!」
アポピスが片手を挙げれば、闇がレイチェル、桜井、オフェアリスを縛り上げる。
「ちょ、離しなさいよ!!」
レイチェルが闇の中で藻掻くが無意味である。
「話が主!! 今助けます!!」
桜井が闇を自慢の怪力で振り解こうとする。
「はっはっは!! 無駄だ無駄だ!! 闇が人間に振り払えるわけがないだろう? お前らはここで死ぬのだ!!」
アポピスによる死の宣告にオフェアリスは軽口を叩く。
「おいおい、こんなに暗いんじゃ何も見えないぜ? そんな状況でどうやって俺たちを殺すんだ?」
これにはアポピスも大笑いした。
「面白い冗談だ。俺は闇の神、闇は変幻自在ですべてを飲み込む、圧殺でも串刺しでも何でもしてやるさ!!」
レイチェルは謝罪した。
「ごめんなさい。私が焦らないで一つ一つ国を攻略していれば、こんなことにはならなかったわ。」
レイチェルが涙を流しているとその涙をオフェアリスが指先で拭き取ってくれた。
「おやおや、こんな美人が涙を流してしまったら、美しい顔が台無しかもしれないな。いや、これも芸術か?」
拘束されているはずのオフェアリスが自由に歩き回っている。
レイチェルは驚いて何も言えなかった。
「マアトがまっさきにここへ俺を送ってくれたんだ。闇の神が落ちれば、真っ先に叩くべきは闇の神、俺はレイチェルの策にも賛成だぜ!」
オフェアリスはレイチェルの策略がよくわかっていなかった。
しかし、陽気を振る舞ってレイチェルの肩を持ってくれた。
「違ッ!!? わ、私は………ッ!!?」
レイチェルが自分の失態を告げようとすれば、オフェアリスは陽気にもにこにこと微笑んでレイチェルの顔を見ていた。
レイチェルはオフェアリスの笑みに何を思ったかは定かではない。
しかし、オフェアリスは片目を閉じて指先を向けてこう言うだけだった。
「一気に決めるぜ………」
そういうとオフェアリスは片手を挙げると闇が膨張して破裂した。
闇が晴れればオフェアリスはレイチェルと桜井を担いで一時退却する。
破裂して闇に埋もれたアポピスが払い除けて出てくる。
「ちッ、流石は冥界の神、オフェアリスだ………」
オフェアリスは漆黒の馬を走らせて正義の国、マアトの下へと逃れる。
「マアト様、オフェアリス、凱旋致した。」
レイチェルはオフェアリスの適当な報告に呆れた。
「レイチェルと申します。オフェアリス様のお陰で難を逃れました。オフェアリスにかわり、マアト様は命の恩人です。」
マアトは言う。
「オフェアリスよ。悪いが長居している場合ではない。一刻も早くアポピス、イスフェトのどちらかを叩かねばなるまい。レイチェルもよくぞご無事で戻られた。よろしければ心ゆくまで、この国で休まれると良い。」
オフェアリスはマアトの命に従った。
しかし、レイチェルは異論を唱える。
「お言葉ですが、マアト様。 私も微力ながら国のために戦いたく存じます。」
その言葉に対して、マアトは反対した。
「敵を侮ってはいけません。ましてや、あなたは『第三の目』も開眼なされていない。『第六感』がなければ、彼らの攻撃を捉えることも叶わないでしょう。」
そう、まどかがあっさりやられた理由、それは、第三の目が開眼してなかったためである。
「ゾークがエクゾディアの力を一部取り入れたことで、闇の同某たちもエクゾディアの支配から逃れるようになりました。それ故に、敵も第三の目を開眼させることになりました。寧ろ、あなたが生きて戻られただけでも奇跡なのです。」
詰まり、第三の目がなければ戦うことすら敵わないということである。
「第三の目? 第六感? そんなものよりも私には策があるわ!! 必ず役に立ってみせます!! どうか、もう一度チャンスをください!!」
しかし、マアトは許可しなかった。
「マアトのわからず屋~~~!!!」
流石のマアトもレイチェルのわがままには手がつけられなかった。
そのために、投獄されてしまったのである。
「ちょっと、牢屋から出してよ!!」
マアトはレイチェルが国から出て行って、一人で戦うのではないかと恐れたのである。
オフェアリスが言う。
「マアト様、流石にやりすぎなのでは? 彼女も一刻の王女、せめて、牢屋から出してあげては?」
マアトは聞く耳持たず、自室へと去っていった。
オフェアリスが様子を見に来ればレイチェルは壁に寄りかかり、うずくまっていた。
レイチェルは言う。
「あなたは私を監獄するために来たの?」
それを聞くとオフェアリスは困ってしまい、返答した。
「まさか、マアト様は世界のため、君のためにしたまでさ。約束しよう。」
レイチェルはオフェアリスの顔を見て言う。
「なら、私を連れてって………それか、側に居て………」
レイチェルは魅力的な女性でもあり、男性にも化けることができる。
しかし、オフェアリスは正義に生きる男だ。
レイチェルの誘惑で落ちるような男ではない。
「とりあえず、今夜は側に居てあるぜ………それで許してくれ………」
オフェアリスが牢屋に寄り掛かるとレイチェルが寄り添ってきた。
レイチェルはオフェアリスの首を締めて気絶させ、身包みを剥いだ。
「ふ~ん、結構好みかも………でも、ごめんね。まどかを助けるのは私よ………ついでに、メイクしてっと………ふふ、結構かわいい顔にもなるもんね。」
レイチェルはオフェアリスに変装して、オフェアリスから牢屋のカギを奪い、オフェアリスを投獄した。
レイチェルが去って行けば、オフェアリスが目を覚まして言う。
「ふッ、困ったお姫様だ………」
オフェアリスは第三の目を開眼させて針金の代わりになるものを取り出せばピッキングして鍵を開けた。
レイチェルが脱走したことにより、国中が大騒ぎ、レイチェルの姿をしたオフェアリスは街をアクロバットで飛び回り、国民を魅了していた。
「なに? あのすっごく可愛いお姫様!!」
「あれが魅惑の都市に住むキアナⅡ様か!! 素敵!!」
オフェアリスもレイチェルに匹敵する程の美を持っているということになる。
レイチェルことオフェアリスは光輝く第三の目を開眼させて屋根から屋根、壁から壁と飛び回った。
気が付けば国民からも追われては応援されていた。
そして、オフェリアスに変装したレイチェルの下まで辿り着くとオフェアリスがレイチェルを指さして言う。
そして、フリップをレイチェル見せつけた。
レイチェルはそれを見て少しドキドキしてしまった。
「オフェリアス!! あんたは私のものよ!!」
レイチェルがフリップの文字を読み上げれば、オフェリアスが言う。
「レイチェル様、わたくしには使命があります!!」
そういうと後はアドリブでレイチェルが言う。
「下僕は黙って従いなさい!!」
そういうとレイチェルに変装したオフェアリスはオフェアリスに変装したレイチェルをお姫様抱っこして飛び去っていった。
「オフェアリス!! 戻ってきなさい!!」
マアトが命じるとオフェアリスが返答する。
「マアト様!! お助けください!!」
それを見たマアトは呆れて言う。
「全く、嬉しそうに何を言ってるのかしら………」
正義の国ではレイチェルがオフェアリスを連れ去ったということになり、大混乱の中で二人を応援するものも居た。
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