第12話

「「あっ。」」


俺の目線の先にはあのときの女子生徒。

俺たちの声にまわりのクラスメイトが俺とその女子生徒に視線を行き来させながら困惑している。


「あら、一ノ瀬さん、もしかして彼とお知り合いなのですか?」


「は、はい。この前に私の不注意でぶつかってしまったのに転ばないよう支えてくれて……。あのときは本当にありがとうございます。」


「そんなに気にしないで。正直、俺も悪かったから……。」


「ちょっとそこのおふたりさん、このままじゃ進まないから少し静かにしてね。」


彼女、一ノ瀬さんがこの前みたいに申し訳なさそうに謝ってきた所を返していると、近藤先生が間に入って止めにきた。

でも無駄に言い合っていても仕方ないのでありがたかった。


「まぁ、とりあえず橋本くん、自己紹介してくれないかな……、時間も押してるし手短で頼む。」


先生が教卓から離れて俺を教卓の前で自己紹介をするよう促す。


「はい、分かりました。近くの西城高校から転校してきました、橋本良太です。こちらの事情があるので、俺が落ち着いている時に話しかけてくれると助かります。どうぞよろしくお願いします。」


「じゃあ、ちょうどいいし橋本くんは一ノ瀬さんの隣に座ってもらおうかな。気になることがあったら一ノ瀬さんから聞いてね。」


「は、はい。」


近藤先生に言われた通りに1番後ろの窓側の隣の席に腰をかける。


「そういえば、名前言ってなかったね。私は一ノ瀬美結。あの時はありがと。これからもよろしくね。」


「ああ、よろしく。」


一ノ瀬さんは少しだけ微笑みながら挨拶をしてくれた。

俺は少しぎこちなくなってはいるが微笑みながら返す。

俺たちが小声で会話をしているとSHRが再開されたのであった。












SHRの後、そのまま授業を受け、昼休みになった。

自己紹介の時に言ったことが効いたのか初対面であるクラスメイトは声をかけてくれても挨拶くらいで精神的にも少し落ち着いている。

だが1人だけ休み時間に話しかけてくれる。


「橋本くん、一緒にご飯食べない?実際助けてはくれたけど、私まだ橋本くんのことほとんど知らないし……できたらでいいんだけど...どう?」


「うん、いいよ。」


「ありがとう。」


彼女はそう言って机をくっつけてくる。


「橋本くん、お弁当じゃないんだね。この学校の人ってなんでか分からないけど弁当なんだよねぇ〜、だから少し意外に思っちゃったよ。」


「へぇ、そうなんだね。俺は弁当作れないからね……、作れるなら作りたいけど。」


弁当なら普通よりも安上がりで済むし、作ったほうがいいだろうけどと考えていると、一ノ瀬さんが続けて話す。


「だったら、お母さんとかからは教えてもらえないの?」


はぁ?、あんな親に教えてもらう?……自分の息子を簡単に切り捨てて自分達のためにしか動かなくて、冤罪であることが分かってからずっと俺の事痛め続けていたはずなのに急に俺の味方みたいな感じて言い寄ってくるやつにどうやったら関わろうと思えるんだ……。


「は、橋本くん?、橋本くん、橋本くん!」


俺は一ノ瀬さんに肩を揺すられ、大きな声で呼ばれたことで俺はハッと意識が戻る。


「ご、ごめん。ちょっと考え事しちゃって。」


俺は流石に考えていた事は話せないので上手い具合に誤魔化す。


「そ、そうなの?......その割にはめちゃくちゃ眉間に皺を寄せて怖い顔してたけど......。周りも見てみて。」


辺りを見渡すとクラスメイトの視線がこちらに向いていて、みんな少し怯えているような表情をしている。

俺は彼女の言う通り本当に顔がとても強ばっていたらしい。


「ご、ごめん、本当に大丈夫だから気にしないで。」


「う、うんわかった。」


少し気まずいが、2人とも昼ごはんを食べ始め、少しぎこちなかったが、ちょっとしてからはまた話しながら昼休みを過ごしたのであった。



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どうもこんばんは。Spaceです。

なかなか投稿できなくてすみませんでした。

次も空くかもしれないと思いますが、これからもよろしくお願いします。

もしかしたら番外編で9話にも上がっていた無理矢理デート編をあげるかも。

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俺の冤罪が明るみになった。 Space @kiraBasket

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