5日で登録者数1万人?無理でしょ?

@Land2000I

第1話

 俺の名前は田中光一。21歳のニートだ。なぜニートかって?それには深い理由がある。せっかくだし俺の半生を簡単に紹介でもしようか。小学校の時に通っていた空手教室で人生の師とも呼べるに出会い、そこで俺は空手の楽しさに目覚めた。それ以降俺は人生を空手にささげていた。しかし、高3の春に大きな怪我をしてしまい空手を続けることが難しくなってしまった。目標を失った俺は放心状態になり、そのままずっと実家で引きこもっている、というわけだ。とは言ってもただ家で引きこもっているだけじゃない。最近俺は動画投稿を始めてみた。内容は自分の好きなゲームの実況をするというものだった。マイナーなゲームの実況だったこともあり再生回数は全く振るわなかったが、動画を撮影している時だけは現実を忘れられるような気がして俺はだんだんと動画撮影という趣味にのめり込んでいった。




 

 

 

 「空手に未練があるのはわかるけど、あんたそろそろ働きなさいよ。親もそろそろ働いてほしいって言ってたわよ。いつまで働かない気なの?」

朝食を食べている俺に姉はそう言った。そんな姉は贔屓目抜きにしてもとても美人で、しかも仕事もできる完璧人間だ。そんな姉からの正論は俺の心をグサグサと刺した。 

「俺は動画配信をしているし、無職じゃない。」 

無理があるとわかりつつも、俺はこう屁理屈をこねた。すると

「動画配信をしていると言っても、登録者数も2人だし流石に無理があるわよ。しかもそのうちの1人は私だし。毎日投稿してるのは偉いけど、全然伸びてないしそろそろ諦めたら?」

と姉がまたもや正論を言った。確かに俺は動画を投稿しているものの全くと言っていいほど再生数は伸びていない。しかし、俺の今の心の拠り所である動画投稿ついて否定されたことにカッとなって俺は 

「俺はたまたま伸びなかっただけだ!」

と、反論をした。すると姉が、

「ふーん。そう。じゃあ今日から5日以内で登録者数を1万人以上達成できたら認めてあげるわよ。今後それについては一切何も言わない。その代わりそれが無理なら働いてね」

と冗談混じりに言った。もちろん姉にそんな決定権もあるわけもなく、ただの軽口に決まっているが、頭に血が上った俺はそれを受け流すことが出来なかった。

「わかったよ! 5日以内に登録者1万人行かなかったら家を出て働くよ!その代わり達成できたら2度と文句を言うなよ!」

そう俺は何を考えたのか“家を出て行くという“余計な一言を加えて啖呵を切ってしまった。



 その日の夜、俺は部屋で頭を抱えていた。

(冷静に考えて5日で登録者数を1万人以上にするなんて無理に決まってるだろ! しかも、家から出て行くとか余計なことも言っちゃったよ…… こんな勝負なんて受けなかったらよかった…… )

その後冷静になった俺は約束を無かったことにできないかと思ったが、既に姉は調子に乗ってそれを両親に伝えてしまったようで後に引けなくなってしまった。両親はしれないこの機会を逃したくないようで、異様なほどにこの話に乗ってきた。そして、それはいつの間にか絶対の約束になっていた。もう逃げられないと覚悟を決めた俺は、再生数が増えることを願って動画を撮影しそれを投稿した。



 


 「全然伸びないじゃないか!」

翌日、俺は部屋でそう叫んだ。昨日の動画の再生数は3回だった。取り敢えず流行りのゲームの実況をすれば伸びると思い最近流行っているゲームの実況を投稿したが、期待に反して全く再生数が増えなかった。人気なゲームの動画というだけあって競合が多く、生半可な実況では見てもらえないということを俺は思い知った。

「残り4日か……」

俺は実家からの追い出される未来を想像しては落ち込んでいた。落ち込んだ心を奮い立たせつつ俺は何とか次の動画のネタを見つけて投稿した。

 


 「やっぱり全然伸びないじゃないか!」

その翌日、また俺は部屋でそう叫んだ。空手をやってきた過去を生かして、俺は空手の講座のようなものを投稿した。自分は空手を心血注いでやっていたので、それが他の投稿者との差別化になると考えたのだ。しかしまたもや全く伸びなかった。再生数は4回と昨日より増えて、さらにこの動画で登録者数も1人増えた。しかし、これでは登録者数1万人は夢のまた夢。期限まで残り3日しかないと言う事実を目の前にして俺は絶望していた。放心状態だったその時、俺の頭に名案が浮かんできた。

「これだ!」

そして、俺はすぐにパソコンに向き合い“あること”を始めた。


 「よし!登録者数が300人を超えた!」

翌日、俺はそう喜んでいた。俺がやったことは、徹夜で大量のアカウントを作成して自分のチャンネルに登録すると言うものだ。つまるところただのズルだ。ただ効果は絶大で、半日で登録者を300人も増やすことができた。動画投稿サイトの利用規約に複数アカウントの所持を禁じるとのの文があった気もするが、そんなことはこの際ささいなことである。その後ちょっとした達成感を抱きつつぼーっとしてると、俺はあることに気づいた。

「期限の日まで後2日しかない。半日で300人しか登録者を伸ばせないなら、これから寝ずに作業をしても2日で一万人は無理じゃないか?」

それに気づいた瞬間俺は再び絶望した。



 「もうダメだ!どうしようもない!」

翌日、俺はそう叫んでいた。姉と約束した期限は明日に迫っていた。この時、俺はもう半ば諦めていた。

その後俺は、最後にダメ元で配信というものをしてみることにした。

「ララララ〜ララララ〜」

俺は配信をしながらカメラの前で歌を歌っていた。視聴者数は平均五人程度だったが、この視聴者を逃さまいと俺はさらに大きな声で熱唱した。すると、

「あんたうるさいわねぇ!」

と姉が俺の部屋にどなりこんできた。その後、俺は地獄のような雰囲気に耐えきれなくなってそのまま配信を切った。




 

ーーその翌日ーー


 「ええええええええ!登録者数が2万人になってる!」

何と、起きた後にその動画投稿サイトを見たら登録者数が急激に伸びていた。さらに今この瞬間も登録者数がドンドン増えている。調べると、どうやら昨日の配信に映り込んだ俺の姉があまりにも美人すぎるとsnsで拡散されバズっていたようだった。それは俺の実力ではないとか、そんな細かいことはこの際もはやどうでもよかった。俺は家から追い出されなくて済むのだ!そうわかると俺はニコニコ笑いながら、パソコンを持っていつもより早く食卓についた。そこでしばらく待っていると、姉が起きて食卓に来た。初めはとても眠そうにしていたが、俺がパソコンを持っていることに気づくと

「おはよう。結局登録者数が1万人行ったの?」

とニヤニヤしながら俺に言ってきた。普段ならムカついているが、この時の俺は勝利を確信していてむしろ心地よささえ感じていた。そして俺は、

「これを見ろ!」

そう言ってパソコンの画面を見せた。

 


 「??」

姉が不思議そうな表情をしていた。あまりにもびっくりして声が出せないのかと思い、その俺の功績を再度確かめるために再度パソコンのスクリーンを見ると

「え?俺の動画投稿のアカウントが消されてる?」

何とスクリーンには、「あなたのアカウントは規約違反によって削除されました」と言う文字が書かれていた。



 「ゔゔゔゔゔ……」

朝食を食べた後に俺は部屋で咽び泣いていた。俺のアカウントが削除された理由は、複数のアカウントを作成したかららしい。複数アカウントを作成しなくても登録者数1万人を余裕で達成していたことを考えると、なんて馬鹿なことをしてしまったんだと後悔してもたりなかった。そうして俺がベッドですすり泣いていると、スマホから着信音がなったのが聞こえた。どうやら誰かから電話が来たようだ。誰からの電話だろうと思いスマホのを手に取り画面を見ると、なんと俺が小学校の時通っていた空手教室の師匠からだった。

「田中くん。久しぶりだね。君の空手の動画をネットで偶然見つけたが、教え方なかなかわかりやすいじゃないか。ぜひ住み込みで空手教室の教師にならないか?」


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