だって、この世界はクソゲーなんだから


 俺が初めて落とし穴を作った日から、約二年が経った。そして、昨日は誕生日だった。

 俺は未だに父さんにはサンドバッグにされてる。

 なんなら今も、サンドバッグにされて、地面に横たわっていた。


「と、うさん……俺、五歳になったん、だけど」


 昨日は誕生日で、なんか色々祝われて、そんなこと言える雰囲気じゃなかったから、言わなかったけど、俺は早く、行っていいのかダメなのかを知りたかったから、サンドバッグにされて、喋るのもキツイけど、今、そう言った。


「……奥に行かなかったら、護衛付きで許すよ」

「よっしゃぐあっ」


 父さんの許しの言葉を聞いて、嬉しさでつい体を起こしてしまって、激痛がした。


「ははっ、もうすぐレイが来るから、それまでは動いちゃダメだよ」


 そう言われて、俺はゆっくりと激痛がして固まった上半身を下ろした。


「父さん、護衛、どれくらいの強さ?」

「冒険者でいう所のB級を付けるから、安心していいよ」


 ……B級か。

 冒険者はEからSまであって、その中のB級。

 ……正直に言うと、心もとない。だって、この世界はクソゲーなんだから。

 その辺で裏ボス様とエンカウントする可能性があるんだ。森なら当然、別物……ドラゴンとかもエンカウントする可能性が出てくる。なんなら、ドラゴンは更に裏ボスよりエンカウント率が高い。

 裏ボス様とエンカウントするよりマシなのは分かってるけど、今の俺じゃあ、ドラゴンにも勝てねぇよ。

 まぁ、流石にドラゴンとか、裏ボス様はエンカウント率低いし、ビビるだけ無駄か。行かないって選択肢は論外だし。


「ありがとう」


 安心は全然出来ないけど、俺は父さんにお礼を言った。

 すると、父さんは満足気に頷いて、屋敷に戻っていた。いつも通り、ボロボロの俺を置いて。

 ……あ、いつ護衛が来んのか、聞くの忘れたな。出来れば、明日から行きたいんだけど。ずっと、楽しみにしてたし。


「リオ、治すわね」


【我が愛しい子の傷を癒しください】


 そんなことを考えていると、母さんが来て、いつも通り、いつも通りの詠唱で俺の傷を治してくれた。


「ありがとう、母さん」


 そして、俺はお礼を言って、起き上がった。

 すると、母さんはまた、いつも通り、屋敷に戻っていった。

 ……俺も戻ろ。と言うか、もう寝ようかな。……いや、流石に早すぎて、夜中に目が覚めるな。そもそも、夕飯の時に起こされるだろうし。


「アイナ、適当に食べれる物持ってきてくれ」


 俺は部屋に戻りながら、着いてきてくれてる専属メイドのアイナにそう言った。

 飯を食ったら、適当に魔力操作練度を上げて過ごそう。

 明日……かは分からないが、森に行く時のために、少しでも、安全性を上げる為に、大事な事だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヒロイン全員がイカれてるクソゲー世界の主人公に転生した俺は裏ボス様を落としたい シャルねる @neru3656

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ