第二物語 禁忌
中国のとある場所にて、赤い髪に赤い瞳、刺青の入った少年が洗濯をしていた。民家から離れている場所で寂しい場所だった。それでも少年は必死に生きているようだった。
生ぬるい風が吹いて椿の香りがしたのでそっちへ目を向けてしまった。気高い紫色の変な模様の袈裟に笠をかぶったモノクルをつけた男がいた。
「どうも少年」
流暢に喋る中国語、聞き取りやすい。少年は頭を下げてどう喋ろうかなんて悩んでいると、少年の姿をジロジロと見つめた。少年は怯えてしまって離れようとしたが、男は座って釣りを始めてしまった。
きょとんとして見つめていると、男は答えた。
「ここの湖にとある話があった」
少年は恐る恐る横に座った、ふわりと吹く風が安心させてくれるように靡いてくる。
男は少年の頭に向かって手を伸ばした。少年は殴られると思って頭を抱えて怯えていた。だがそれとは真逆で、優しく頭を撫でられた。
顔を上げると男は釣りをしながらなにか釣れないかとのんびりとしていた。少年は初めて頭を撫でられて嬉しくなり笑って擦り寄った。
「これは人間と神の禁断の恋の話だ」
女は宮廷の女だった。とても格上の女で見るものを魅了させる。
そんな女が湖の近くに行って魚取りに向かった。釣りがしたかったし宮廷の女はよくない人間ばかりだった。
釣りをしていると赤い龍が現れた。赤龍という五行思想の者だった。女が怯えるだろうと赤龍は思った。だが女はうっとりとした顔で「美しい」と言っていた。
そこから運命は変わった。いつでも暇があれば湖へ行き、赤龍と交流した。交流し続け恋人になるまで近づいていった。
だが宮廷の女が女帝に告げ口をした。女帝はそれを許そうとしなかった。神を穢れさす女狐と言い捨て、女を殺そうと国全体が立ち上がった。
女は必死に逃げた。腕の中には子供がおり、その子の背中には鱗があったそうな。
まあ女は木の下に子供を隠して、自分だけ捕まり、そして。
「やめてくれ!!」
耳を塞いで泣きじゃくってる少年、少年が泣きじゃくると男は頭を優しく撫でていった。
「その通り、まるで映画のように皮剥の刑にされ豚の餌にされた。もちろん赤龍は怒り狂いその国を滅ぼしにかかったが、仲間に引き止められ、空へと帰っていった。少年は老夫婦に育てられたが不気味な赤い髪と目によってまた捨てられひとりぼっちになった」
少年は泣きながら、呻いている。「俺が死ねばよかったんだ」と何度も呟いているが男は無言になりながら困ったように笑っていった。
「こういうのはえんじゃとしてよくないが、お前は母親に助けられたんだぞ? その命を捨てるのか?」
黙りこくってしまい大声でわんわん泣き出してしまった。大きくため息付き、背中をぱしぱしと叩いていった。
「母親と父親はお前を守るために必死に頑張った。大丈夫、1人で生きていける」
「俺も連れてけ」
男は固まった。言葉が出なくなってどうしようもなくなっていると。
「あんたが話さなかったり現れければ行かなかったけど、これも運命だ。連れてけ。じゃねぇと父親に殺してもらう」
「いやいやいや、どうやって父親を」
神だから見ている。その言葉を思い出し、男ががっくりと肩を落とした。
「わかった降参だ」
少年は純粋な笑みを浮かべて男に抱きついた。男はかかった魚を手に取って、食べれるものかどうか確認した、
「不運、でもこれもまた縁なり」
男はそう呟きながら魚のハリをとって、食べれないものだと判断し池に返した。
流石にこの話をした後で子供がいる魚を食う気には起きなかったらしい。
人生を歩むには演者にならないとならない 野分空蝉 @mireku1118
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。人生を歩むには演者にならないとならないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます