人生を歩むには演者にならないとならない
野分空蝉
第一物語 赤い小箱
「なんだこれ?」
1人の黒髪の活発そうな少年が赤い小箱を拾い上げた。
風がざわめき、少年が目を閉じてもう一度目を開けるとそこには奇妙な男が立っていた。黒い短髪にモノクル。変な模様の入った袈裟に笠。お坊さんかなと少年は思って挨拶をしようとした時、お坊さんらしき人物は口角を上げて奇妙なことを言った。
「赤い小箱、懐かしいねぇ」
少年は首を傾げた。お坊さんらしき人物は両手を広げて語るようにくるくると回りながら言う。
葉っぱは舞い、暑い日だからだろうか熱風が吹上少年の汗を頬から伝わせる。お坊さんらしき人物は不気味に笑いながら少年に近づいて顔を近づけると言った。
「俺の名前は松栄、これからお前に面白い話をしてやろう」
「面白い話?」
少年は目を輝かせた。松栄は離れて首を垂れ、語り出す。
「赤い小箱」
五百年前、赤い家に赤い壁赤い部屋があった異常な家の人がいた、その人は赤に囚われており、赤以外のことを考えられなくなっていた。
村人は恐れ村八分状態だった。それでも1人で生きてきた彼は、いつの日からか部屋から出なくなった。
なぜかはわからない。村人達は家から出なくなってホッとした。
そのおかげで気づいたことがある。この家の赤は人の血でできているということ。それを知った村人は怒りに狂い、赤い家に突入したという。
赤い家は悲惨な状態だった、蝿が飛び交いうじがわき、肉も何もかもバラバラ、そのせいで寄生虫やいろんなのが来ている。
その中で行方不明だった人も見つかりその人は大絶叫をしたという。
だから見つけたらタダじゃおかないと思い一生懸命探した。
だが見つかったのは赤い小箱だけだった。
その赤い小箱を開けたら。
「あ、開けたら?」
恐る恐る少年が聞くと、松栄は笑って答えた。
「人間見てはいけないものを見ると気が狂う。それは当然であろう?」
「わからないじゃないか」
「じゃあお前の答えはなんだと思う?」
少年は考え込んで考え込んで答えが見つからなかった。
そして松栄は言った。
「真っ赤な部屋に真っ赤な家の一員になったんだよ。彼らは演者の1人になったんだ」
「演者?」
「人生を歩むことによって、我々は演者となる。つまりは、その道を進む演者だったってことさ」
「待ってよ! 真っ赤な部屋の真っ赤な家の一員って」
松栄は嫌な笑みを浮かべて。
「君の後ろにある寂れた家のことと手に持ってる赤い小箱のことだよ」
少年は呆気に取られて言葉を失ってしまった。首を横に振って「まっさかー」と言おうとしたら、そこには松栄はいなくなっていた。
少年は思い切って開ける箱に手をかけて一気に開けた。
山奥で大絶叫が響き渡る。そこにあったのは大量の舌だった。足が震えて動けないでいると、後ろから足音とずりずりと引きずってくる音が聞こえてきた。
振り返ると。
「だから忠告したのにな」
嘲笑うように木の上から見下ろしていた。
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