第5話初モンスター戦

 B1F。

 現在俺がいる場所だ。

 ネットで見た情報によると、冒険者が初めてダンジョンに足を踏み入れた時、スキルを獲得出来る者が僅かだがいるらしい。


 俺のスマホに通知音が鳴り響き、DanTubeを確認してみると、スキル獲得メッセージが来ていた。


 スキル獲得:天美龍二

 スキル名:非常識

 攻撃力:コイツに殴られたら痛いよ~、泣いちゃうかもね。

 防御力:どうやったらコイツ倒せるんだよ! 腹立つわ~。

 素早さ:コイツ速すぎて、周りが凄さ認識できない可能性がある。ある意味損なんじゃないいの?

 魅力:ヤバ過ぎ! 女だったら皆股開くね、男の俺だって、ってオイ~!


 何だろうこのスキル説明? よく分からないな……でも、スキルって、手に入らない人の方が多いらしいから、貰えるだけでも良しとした方が良いのかな?





 スキル獲得通知を確認した後、俺は周りを見回してみた。

 冒険者達が数十人、或いは百人以上いるかもしれない。

 ファンタジー世界で見るような、剣や鎧を身に纏った冒険者達がいた。


「凄い……俺が求めていた異世界の光景みたいだ」


 俺は感動していた。

 だが、俺のそんな気持ちなど知らないかのように、冒険者達は俺の格好をヒソヒソ声で蔑んできた。


「なんだ、あの格好? 自殺志願者か?」

「確かに、でも、顔とスタイルはイケてない? 天美龍一そっくり!」

「分かった! 撮影とか? でも、天美龍一がこんなとこ来るか?」

「ウチのギルド来れば良いのに。あのルックスなら即人気出るだろうから、戦闘員じゃなくても来てほしいわ」


 ヒソヒソ声なので、全て聞き取れたわけではないが、周りの冒険者達からはあまり良い印象を持たれてないことが容易に分かる。

 この格好の所為か? 動きやすくて良いのに。


 己のポリシーで、自分の身一つで挑戦するから、武器も、防具も身に着けてないが、他の冒険者達からはヤバい奴に映っているんだろうか?


 DanAnalyticsによると、ダンジョン内の魔素が濃い場所が凶悪で沢山モンスターが出現する場所だというが、現在の濃度は10%なので、現在は安全な状態だということなのだろうか。





 そんな緩んだ気持ちのままダンジョンを進んでいたが、それは甘えだと直ぐに気付いた。

 距離は離れているが、巨大な何かが凄いスピードで突進してくる。

 その巨大な何かに追い立てられ、冒険者達は逃げ惑っていた。


「うわー! 逃げろー!」

「なんで、トロールがこんなところに!」

「いいから早く逃げろー!」


 トロール。

 ファンタジー作品で、醜悪且つ巨体で描かれるモンスター。

 それよりも、特筆される特徴は、その圧倒的な再生能力。


 重火器類で攻撃しても、ほとんどダメージを与えられず、与えたとしても直ぐ回復してしまう。

 現に今も逃げ惑う冒険者が多いが、勇敢に立ち向かっている冒険者もいる。

 だが、その攻撃は少しだけのダメージしか与えられず、即座に回復してしまう。


「グルルルル! ウホウッ! ウホウッ!」(俺訳:どうした、人間共、この俺様を倒すのではないのか?)


 俺はモンスターの言葉は分からないが、適当に訳してみた。

 そんなトロールに恐れをなしたのか、攻撃していた冒険者達も逃げ出している。


「うわー、やっぱり回復してるし、無理ー!」

「逃げるなー、戦え!」

「無理だって! あの回復力見たろ!」


 フロアの中央には俺とトロールが睨み合っている。


「そこの軽装のお前ー! 早く逃げろー! 殺されるぞー!」

「あんな非常識な奴、構うなって! 早く逃げるぞ!」

「そこのイケメン君ー、早く逃げて! そんな国宝級の顔なのに、殺されたら勿体無いわよー!」


 色々な心配の声を掛けて頂いている。

 冒険者って温かいな。

 でも俺には試したいことがある。


 俺はジャンプしてトロールの顔面をブン殴った。

 トロールは吹っ飛び、ダンジョン壁にめり込む。

 ダンジョン壁は事前に調べていた通り、回復力がありトロールの体をフロアに押し戻す。


「「「「「え、えーーーーーー!!!!!!!」」」」」

「トロールを素手で殴った⁉」

「それよりあのジャンプ力何⁉」


 周りの冒険者達は驚いているが、この程度普通ではないのか? まだ倒せていないし。

 俺はフロアの中央に押し戻されたトロールの片足を持つ。


「グルルルル、ルル、ルル!?」(俺訳:コイツ何をしようとしている!?)


 俺はトロールの片足を持ってその体を振り回し投げる。

 プロレス技のジャイアントスイングの様な形だ。

 本来ならジャイアントスイングは、相手の両足を持って振り回す技だと思うが、コイツの体が大き過ぎて、片足しか持てないので、そのまま振り回すことにする。

 再度ダンジョン壁にめり込み、ダンジョン壁の回復力でトロールの体は押し戻される。



「「「「「いや、いや、いや、ありえないって!!!!!」」」」」

「トロールを振り回している!」

「何なんだあの馬鹿力は⁉」


 流石トロールの再生力。

 一発叩き込んだだけでは直ぐ再生してしまう。

 これならどうだ!


 俺はトロールの再生力以上の打撃を打ち続ける。

 するとトロールの体が跡形もなく消え失せた。


「「「「「うおーーーー!!! スゲーーー!!! ヤッター!!!」」」」」

「トロールを単騎で、しかも素手で倒しやがった!」

「なんだ……あの軽装男、強すぎだろ……」

「強いしカッコイイし、最高!」

「てか、天美龍一に似てない? まあ、天美龍一がこんなとこいるわけないか」


 他の冒険者から祝福されているみたいだ。

 異世界には行けなかったが、ダンジョンに来てよかった。

 こんなワクワクする気持ちが味わえたのだから。

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【検証】この世はクソつまらんから異世界転生したかった俺、やっぱり異世界転生は無理だと気付いてしまったので現代のダンジョンで無双してみる事にしてみた~バズるとかどうでもいいのに勝手にバズってました~ 新条優里 @yuri1112

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