第4話自衛隊員のオジサン

 俺はダンジョンの入り口付近に来ていた。

 ダンジョンの入り口付近には法律で決められている通り、装備ボックスが設置されていた。

 このエリアの外には、武器を持ち出すことが出来ず、違反したら重い罰が下る。


 俺が挑戦するのは、地下迷宮タイプのダンジョンだ。

 天空に浮かぶ城タイプや、海底迷宮タイプも興味あったが、先ずはこちらに挑戦することになった。


 それにしても、天空や、海底の場合、装備ボックスはどうするんだろう? 今度調べてみるかな。





 ダンジョンの入り口だ。

 入り口には自衛隊員さんがいる。

 この人に話しかけないといけないのかな?


「あ、あの……」


「何だね?」


「ダンジョンに入りたいんですけど、受け付けはこちらでよろしいですか?」


「受付は確かにこちらだけど、え、えーーーーーーーーーーー!!! いやいや、君、そんなスポーツウェアみたいな軽装でダンジョンに入れるわけないでしょ! 即死間違いなしだよ! 入れるわけにはいかないよ!」


「こちら、冒険者ライセンスと入迷宮証です。区役所で申請して受理されました。偽造ではありません。ちゃんと見てください、天美龍二と記載されてありますし、顔写真も僕と相違ないですよね?」


「いやいや、そういう事を言ってるんじゃないよ! 軽装過ぎるんだよ! 他の冒険者を見てごらん、防刃、防弾装備、兜、鎧、盾とかフル装備だよね? 君みたいに丸腰でやって来た冒険者は初めてだよ!」


「お褒めに預かり光栄です。それでは、そろそろ中に入ってもよろしいですか?」


「褒めてないから! 君、人の話聞いてた?」


「武器の持ち込みに関しては、法律の定めによると、他者への危害を加える事に関してのみ法律に盛り込まれており、自己防衛に関する議論は現在でも国会で審議がなされておりますが、現行法では禁止する規定はないはずではありませんか?」


「何でそんなふざけた恰好なのに、レスバ強いんだよ! ちょっとオジサン感心したじゃない、近頃の若者は勉強熱心だって!」


「なるほど、御許可頂けたということですね? 感謝致します」


「許可してないから! 君、さっきから話聞いてる?」


「どうしても駄目ですか? 子供の頃からの夢なんです、異世界に行くことが。ダンジョンと異世界は違いますが、それに似た物に挑戦出来る事に喜びを噛み締めていたところなんです。それが、奪われるとなると、僕、生き甲斐を失ってしまいます……」


 俺は真っ直ぐな目で自衛隊員さんを見据える。


「なんて真っ直ぐで、キラキラした目で訴えかけてくるんだい……オジサン、これまでにそんな希望に満ちた若者達が死にゆくのを見てきたから、中々首を縦には振れないんだよ……」


「必ず帰ってきます! 嘘ついたら針億本飲ませてもらってもいいです」


「オジサン、そんなに針持ってないよ……本当だね? 本当に、本当に生きて帰ってくるんだね?」


「約束します! 嘘ついたら殺してもらっても構いません!」


「いや、死んだら殺せないから……分かった……君のその真っ直ぐな言葉を信じてみるよ! DanTubeの使い方は分かる? DanAnalyticsは? DanSearchConsoleは?」


「僕は配信者でなく、純粋な冒険者になりたいので、DanTubeは関係ないと思いますが、勉強の為に参考にさせて頂こうと思います。残りの二つもダンジョン分析の為に使わせていただきます。何から何までありがとうございます」


「良いんだよ……君が帰って来てくれさえすれば……オジサンは待ってるよ!」


 俺は受け付けを抜けて、ダンジョンの入り口を進んでいく。

 振り返ると、自衛隊員さんは俺に向かってサムズアップしてくれていた。

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