第58話 新たな始まり
突然正体不明のブ男に殴られた。
なんの理由も因果関係もなく殴打されながら彼は気を失った。
そしてしばしの時が経つと、頭がだんだん冴えてきて、目が自ずと開いた。
「っ……なんだよ。真っ白?」
あたり一面真っ白な光景に吉川は戸惑う。
それと同時に、心の中からドス黒い感情が徐々に芽生えてくる。
「ちくしょ!なんだったんだ!あんなクソキモデブはあああ!!」
と、握り拳を作って叫ぶ吉川。
しかしこんな叫び一つじゃ、彼の怒りは収まらない。
「だから俺は学のない人間は嫌いだあ!!無知で野蛮で、頭の悪いバカしかいねーんだよ!!くっそ!!現場仕事なんかする人生における敗北者負け組風情が……もし見つかったらありとあらゆる手段を用いて潰してやろう!!!」
小皺を生じさせ、虚空に向かって叫び散らかす吉川。
そんな彼の耳に、謎に包まれた存在の声が聞こえてきた。
「吉川養一」
「ん?」
突然名前を呼ばれたことで、我に帰った彼は声がしたところを必死に探すが、真っ白な空間しか見えない。
「あなたは死んだかもしれないし、生きているかもしれない」
「何を言ってるんだ。てか、お前は誰だ!?」
「私は人に救いの道を示すもの」
「はあ?なにバカなことを言って」
吉川が目を丸くして問い返すが、謎の存在は意に介さず淡々と言う。
「あなたの下で働いていた14人の子らのうち13人は精神を病んでいる。そして残りの一人は……」
と、言い淀んでいると、吉川は口角を釣り上げていう。
「んなことを、俺と関係ないだろ!奴らが弱いから壊れて勝手に自滅しただけだああ!!」
「ほお……本当にそう思うのかしら」
「当たり前だ。会社はいわば戦場だ。見えない戦いが常に繰り広げられるところなんだよ!」
吉川は醜悪な表情をして、自信満々に胸をムンと反らす。
まるで、自分の言葉は100%正しいと言わんばかりの様子だ。
そこへ
「まあ、確かに会社は戦場かもしれない」
「だろ?」
「でも、わざわざ戦場にする必要もないんだよね?」
「え?」
「何か目的があるから、あなたはわざわざ戦場にしてきたんじゃない?」
「っ!なにふざけたことを!!」
謎の存在の言葉にキレた吉川はまた握り拳を作り嘯き始める。
「なに上から目線で言ってるんだ?君の声から察するに、まだ若いようだが、人生っちゅうのは、君が思うほど甘くないんだ!」
「人生は甘くない、ね……」
何か含みのある言い方の謎の存在。
やがて、試すような口調で言う。
「それはあなたにとってもよ」
「……」
「次の目覚めの時は、全てが崩れ去るんでしょうね」
「え?」
「その時まで、思う存分暴れるがいいわ」
「なにを言ってるんだ?」
わけのわからないことを言っている謎の存在に、目力を込めて問い返すも、謎の存在はまた意に介さず、宣言するように言う。
「悪役転生よろ」
追記
やっぱり部長の話を書かないのは歯切れが悪いんですね。
今はいろんな企画も進んでますし、新作も書かないとだから、二部の連載日程はまだわかりません(汗)
最近、ホワイトな会社に就きましたので創作は細く長くやっていこうと思います。
ホワイトというのは、給料とかじゃなく、小説を書くことを容認してくれて、尚且つ小説を書く時間が確保できる、そんな会社を意味します。
体調も良くなってきましたので、好きな運動とか趣味など楽しみながら書かせていただきます。
自分が恵まれた環境にあることに感謝しながら、仕事においても執筆においても頑張って参ります。
書きたい内容は山ほどありますので、これからもよろしくお願いいたします!
極悪魔王転生。破滅回避の為、真面目に領地経営したら勇者のヒロインたちの様子がおかしいんだけど!? なるとし @narutoshi
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