巨人の溜息

涼木 和貴

巨人の溜息

木星の傍であるような暗がりで目を覚ます明晰夢結末だけは選べないスプートニクに乗り込めたのに

光カーテンは図らずも時空を歪めるみたいだ瞬きをする度過ぎる数十分巨人の溜息にひしがれている


午後二時十一分からはじまる僕の一日は交差する夢と現実耽りたる曖昧模糊な私であるし

まず宿酔と一抹の不安を整理する必要がある孤独より孤独を嘆く心より小さな幸せがただ恐ろしい


窓際の生け花に陳謝してもその代償は大きい「窓際に花を飾ればカーテンを少しは開けたくなるんじゃないかな?」

過ぎたるは及ばざるがごとし、なんて呟いてみたりして過去よりも未来を想い前を向く泣いているなら意味はないかな?


雑然とした部屋に綺麗なものは不格好だから花と絵と酒と本棚の周りは綺麗にするの依り代だから

キュビスムの種々とした解釈で自己認識などする脳内で咀嚼しきったどろどろとしたものを象る艶やかさ


時間は簡単に伸び縮みするからきらいだ溶け出したバターのような10分と隙間風のような10分が

生き急げばゆっくりと、溜息をつけばせかせかと泣いてみてどうもしっくり来ないけど叫んでみても五月蠅いだけね


時間は簡単に僕を詰るからきらいだ刃渡りの方を掴んでいるみたい私ばかりに血が流れている

メトロノームにも、宇宙の砂時計にもなることはできない肉体に数多の私同居する時々間違うのも仕方がない


は光の速さで走ることは到底できないけれど生き方を忘れてはやし千鳥足すれ違う人々はみな強い

沢山の光を透過しているからこういう歪みが生まれる夢想だにせぬこと起こる現代よ地球の終わり私の終わり


マッチを擦っても、大きな欠伸をしても地球は律儀に回る性格の良い悪魔ならもう少し高い所へ飛んでください

自転も公転もそつなくこなす宇宙上戸思い切り転んでしまえば楽なのに手前で臆してばかりのこの頃


気まぐれに回転を止めてしまえばいいと思う擲ってさぞ晴れやかになれるかと期待をしていた私はおぼこ

僕達は慣性の法則に従って、華麗に吹っ飛ぶから終止符を打ってくれればその刹那上手に生きられる気がするの


眠りは一日の終わりとして余りにも象徴的だだがしかし私は強く生き抜くのきれいなおわりまで生き抜くの

だからこそ、訪れない時僕はとても困ってしまう余りにもうつくしいのね一日を終わらせることができないのよね

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巨人の溜息 涼木 和貴 @kazuki_suzuki

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