第27話 俺が証明してやる……!
「うおあああぁっ! 【
カチリ。
『『オアァァァァォォォッ……!?』』
「う、うぅ…………」
「ア、アルケミっ!」
激昂とともに、壁際から這いだしてきた幽霊魔物たちを〈魔砲〉で根こそぎ吹き飛ばすと、俺はぐらりと前のめりに倒れかけたアルケミをすんでのところで胸に受けとめる。
幽霊魔物の腕に背中から貫かれたその体は、外傷はなくともまるで氷のように冷たく、肌も生気を失ったように青白かった。
「う、ううぅ……。さ、さむい……。さむい……よ……。カノン…………」
「アルケミ……! 待ってろ……! いま物件屋のトゥルカからもらった薬を……!」
懐から小瓶をとりだすと、中に入った白い液体を腕に抱きかかえたアルケミの口もとへと傾ける。
「う……。だ……め……。それ……。一本し……ん、くっ、んくっ…………」
(んぁ〜。本気で行く気なら、これもあげとくねぇ〜? 幽霊魔物対策の特製の賦活剤〜。まあ手持ち一本しかないけど、なんとかこれで逃げるくらいはできるっしょ〜。んぁ〜。キミたちに幽霊の仲間入りされちゃったらさすがに私でも寝覚め悪いしね〜)
幽霊魔物。実体のないそれは、肉体を傷つけたり物質を壊したりはできない。ただ――
活力を、精神力を、そして生命力を。まるで、まだ
そして、それが何度も何度も重なれば――
『『オオオアァァァァァァ……!』』
――待っているのは、本当の〝死〟。
窮地に陥った俺と、薬で息を吹き返したアルケミを嘲笑うように、ふたたび床や壁から這いだして、いま減らしたその数を埋めて包囲を狭める幽霊魔物たち。
くそっ……! どうする……!? トゥルカの助言どおりに逃げるにしても、そこまでの突破口が俺の〈魔砲〉だけで本当に開けるか……!? それとも、いっそのこと、一かばちか……!
「う、く……」
「あ、アルケミ!?」
そのとき、もたれかかっていたアルケミが突如として俺から体を離し、ふらつく足どりで立ち上がる。
「ごめんね……。カノン……。あたし……。足、ひっぱっちゃった……」
「な、なに言って……!? アルケミ……! あんたは、俺をかばって……!」
「ううん……。ちがうよ……。あたしの〈魔砲〉の力が足りなかったから、カノンに無理させちゃったんだもん……。これじゃ、パートナー失格だよ……。え、えへへ……。本当に、ごめんね……」
――向けられたアルケミのその微笑みは、いままでにないほどに弱々しくて。
だから、俺は。
「じゃあ、なんとかここから脱出して…………わぷっ!? か、カノン……!?」
「アルケミ……! 俺は、あんたのパートナーだ……! だから、俺が証明してやる……! 俺に可能性をくれたあんたの〈魔砲〉は、こんなやつらなんかものともしない、最高で最強の〝力〟だって……!」
胸もとに引きよせたその腕にぐっと力をこめると、俺は〈魔砲〉を正面へと向ける。
「だから、あんたも俺を信じろ!」
「うん……! カノン……! おねがい……!」
カチリ。
「うおおおおお! 【
そして、アルケミがぎゅっと俺の服の首もとをつかむと同時にいままでで最大の魔力をこめて、ぶっ放した。
『『オオオアァァァァァァッ!?』』
正面から迫りくる幽霊魔物たちがいままでよりも大量に悲鳴を上げて消滅する――けど、まだ終わりじゃない!
「うおおあああ! 消えろぉぉぉっ!」
『『オオオアァァァァァァッ!?』』
いま消えた幽霊魔物たちの横から迫りくる別の群れを俺は根こそぎ吹き飛ばした。
そう。再装填の隙が問題なら……!
「
「か、カノン……!」
「うおおおおっ!」
『『オオオアァァァァァァッ!?』』
――なぎ払う。
「うおおああっ!」
『『オオオアァァァァァァッ!?』』
床を蹴り、ぐるりと回転しながら。前後左右のすべてを俺はなぎ払いつづけた。
そして――
「はあっ! はあっ! はあっ……!」
「や、やった……よ……! カノン……! あ、あたしたち……!」
――どれぐらい時間が経ったのかはわからない。
「ああ……! アルケミ……! 俺と、あんたと、この〈魔砲〉の勝ちだ……!」
すべてが浄化された静寂の薄闇で、疲労困ぱいの俺とアルケミは、疲れきった――けど、やり遂げた顔でコン、とこぶしを突きあわせ、勝ちどきの声を上げた。
クビから始まるぶっぱ無双〜規格外の魔力を持ちながら自分では使えないゼロの少年は最強欠陥魔道具〈魔砲〉を手にして立ち塞がる全てをぶっとばし、追放された錬金少女と可愛い妹とともに最高の幸せを手に入れる〜 ミオニチ @sakuni
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ミオニチ @sakuni
代表作「闇属性だけど脚光を浴びてもいいですか」 第10回ネット小説大賞中、コミックシナリオ賞受賞。 マンガBANG!、ピッコマ、LINEマンガにてコミカライズ連載完。もっと見る
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