第2話 今後の計画

 ついに妹のセレンが目を覚ました。

 意識が、覚醒したことにより恐怖が蘇ってしまったのか、僕の腕の中に頭を隠した。

 僕は落ち着かせるためにそっとセレンを腕の中に包み込んだ。

 

 「セレンも生き残っていたんだね。村のみんながドラゴンによって次々に投げ飛ばされたり、火炙りにされていって、逃げるのに必死で他のみんなに構うことができなかった。

あんなに剣術の練習もしたのに、いざ敵を目の前にしたらびびっちまって逃げてしまった」

 

 「いや仕方ないよ、大きなドラゴンだったんだろ。そんなものと今まで僕たちは戦ったことがないから逃げて当然だよ。むしろ生き残ってくれていて僕は嬉しいよ」


 「ありがとうアレン。他の村のみんなは大丈夫かな。」


 テオの儚げな問いかけに僕は静かに首を横に振った。


 広範囲で探して反応がなかったので、他のものが生存している可能性は低いと見られる。

 村の中でも身体能力の高いテオがこの場所にいるということは、他のみんながこれ以上遠くに逃げたという可能性を追うことができない。

 「とりあえず一度村に戻ろうと思う」

 そんな僕の提案にテオは一瞬不安そうな顔をしたが、心を決めたのか首を大きく縦に振り強い眼差しを僕に向けてきた。

 村が壊滅するほどの恐怖に襲われてしまったのだから、不安になるのも仕方がない。

 未だ一言も発していないセレンを腕に抱き魔法陣を発動した。

 慣れてきたのか、もう何の障害もなく転移の魔法を使いこなすことができた。


 今度は尻餅をつくことなく、ふわっと足から村の地面に着地した。

 

 先ほど来た時にはまだ燃えている箇所があったが、今はもう静寂に包まれている。幸いにも森に炎は広がっていなかった。


 暫く村を歩いてみると、そこらじゅうに死体が転がっていた。ドラゴンの爪により身体が引き裂かれているものや、ドラゴンの炎に炙られ身体が黒く焦げ、原形を留めていないものなど致命傷となり得る要因は様々なものがあった。

 だが、一つ気になることがあった。

 死体の数がやけに少ない。

 捕食されてしまった者や原型がなくなってしまったとしても、全村民を考えると少なすぎるのだ。

 だが、今は考える余裕がなかった。

 なぜなら早く自分の家の状態を確認したかったからだ。


 そして自分の家が建っていたであろう場所にたどり着くことができた。だが、そこにはもう何もない。あるのは焼け焦げた家財と鼻に突き刺すような、焦げた匂いだけであった。


 もう何も残っていないという状況を実感して、不意に涙が込み上げてきた。

 歯を食いしばり、堪えようとするが耐えきれなかった。

 一度流れ始めた涙は止まることを知らない。

 僕はここに誓う。

 ・妹のセレンを必ず守り抜くこと。

 ・旅に出て強き者となり、必ず村を壊滅させたドラゴンを倒すこと。

 ・亡くなった人たちの分も長生きすること。


 この3つを必ず守り抜いて、次に村のみんなに会った時に恥じない生き方をしてみせる。


 気持ちを切り替えて新たな人生の1ページを綴ってやろうじゃないか。


 ずっと静かにしていたセレンが僕の手からすり抜け自分の足で立ち始めた。


 「大丈夫か、セレン?」

 まだ足が震えている。そしてセレンは僕の手を強く握りしめた。

 セレンなりに何かを感じたのであろう。


 テオも自分の家を見にいっていたようで、僕たちの元に駆け寄ってきた。

 テオの家はほとんど焼けていたものの、無事な物もあったようで少量の食べ物と一枚の写真を持ってきていた。

そこには元気いっぱいの笑顔をしたテオとテオの家族、そして僕たちの家族が写っていた。

 その写真は村でお祭りがあった際に撮った写真であり人生で初めて撮った写真であった。

 形としての思い出が全てなくなってしまったと思っていたが、残っているものもあるとわかり、少し気持ちが晴れた。


 テオにも僕の決意を聞いてもらい、共に旅に出ることにした。


 


 


 

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異世界緑化〜命を無碍に扱う奴に仕事はやらんと言われたので世界に緑を増やす旅に出ます 御野影 未来 @koyo_ri

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