異世界緑化〜命を無碍に扱う奴に仕事はやらんと言われたので世界に緑を増やす旅に出ます

御野影 未来

第1話

 僕の名はアレン。

 人口100人ほどの集落で皆で力を合わせて自給自足生活を送っていた。

 畑で野菜を育てたり、森に入り木の実や山菜の採取や獣を狩ったりして14年間を過ごしていた。

 この村では5年ほど前から人口不足を理由として、15の誕生日になると村から出ていかなければならない。

 森で修行をして、いろんな街に出て冒険をし、嫁を探さなければならない。

 僕の誕生日は一週間後。

 一週間後にはこの村から出て旅に出なければならない。

 物心ついた時には剣術を父を含めた村の人たちによって稽古をつけてもらっていた。

 僕には剣術のセンスがあるらしく、同年代の子達と比べても狩の成功率が高い。というか狙った獲物は逃したことがない。


 それもそのはず僕には家族、村の人の誰にも言っていない秘密がある。

 それは魔法も使えることだ。

 この村には魔法という概念が存在していない。

 無意識のうちに身体力強化を使用している人がほとんどだ。

 僕には小さい頃から守護妖精のリアが付いていて、魔法の使い方を教えてもらっていた。

 リアとの契約には守護妖精の存在を他の人に話してはならないというものがあった。守護妖精は多く存在しておらず、選ばれたものにしか付いていないらしい。12歳くらいまでは、父と一緒に狩に出かけていたので獣との戦闘にあからさまな魔法は使えなかった。1人の空いた時間に少しずつ練習をして、使えるようになった。

 2年程前からい一人で狩をするようになり、魔法を戦闘に使えるようになり戦闘が楽になった。


 まだ魔法に不慣れな部分もあるが、一週間後には旅に出なければならない。

 自信を持って使えるようにあとの一週間を大事に狩に励みたい。


 僕は剣を腰に携えから近くにある森に向かう。


 「行ってきます!」


 「いってらっしゃい!あっ、アレン!最近獣達の様子がいつもと違うらしいじゃないの。森の奥深くは危険だから行ってはだめよ」

 「うん、わかってる」

 「危ないと思ったら全速力で逃げてきなさい」

 「はーい!」


 今までは獣をすぐに見つけることができたし、人間を見た瞬間に襲ってきた。

 だが、最近獣達は隠れていて、人間を見ても知らんぷりをしている。

 リアが言うには近くに強大な獣がいるために怯えてしまっているのではないかということらしい。

 なので僕は最近森の奥深くまで潜って探してみてはいるがなかなか見つからない。

 母には悪いが、村のみんなを守るためにも森の奥深くまで行き調査を進めている。

 今日も最低限の食事分の獣を倒した後森の奥深くまできていた。

 

 「今日も収穫なしか、、」

 今日も強い獣を見つけることはできなかった。だが不思議な光景を目にした。普段はお互いに近寄らないはずの猪と兎、そして熊が集まっているではないか。

 明らかにおかしな光景に驚きが隠せなかった。

 特に何かするわけではない様子で、村からもだいぶ遠い場所だったのでしばらく観察をした後家に帰ることにした。

 変に刺激を与えて厄介なことになってしまっては困るからね。


 「ただいま!」

 「「「お帰り!」」」

 いつもは家族それぞれ自分達の時間を探していたが、少し暗くなっており心配をかけてしまっていたのか両親、そして妹までが玄関の近くで僕の帰りを待ち侘びていた。

 

 「アレン今日の狩はどうだった?」

 母は満面の笑みで僕に今日の狩の成果を聞いてきた。


 「もちろん問題なく狩ってこれたよ。ほら猪二体に兎が二体」

 この森に住む獣は全て大きくて、一体で一週間は過ごせるくらいの量になる。

 「あら、今日は随分と豊作じゃない!」

 この一年位は一週間後の旅立ちに向けて狩った獣のうち数体は魔法で作ったアイテムボックスにしまって保存している。アイテムボックスに入れておけば鮮度を保ったまま保存することが可能となっている。

 「一週間後にこの家を出ると思ったら、張り切っちゃって」

 

 「今日はご馳走だね!」

 妹のセレンは目を輝かせており、喜んでくれていて、僕は嬉しい気持ちになった。

 家族の分だけでは消費しきれないので、近くに住んでいる村の人たちにもお裾分けをした。


 ___________________________________


 ついに村を出る日がやってきた。今日までの数日、食料は必要なかったので森の調査を目的として森の中に潜っていた。

 森は特に変わった様子もなく平和な時間を過ごすことができた。


 一人での旅に緊張して、太陽が昇る前に目が覚めてしまった。

 まだ外は暗く周りはよく見えない。


 こんな早くに起きてしまっては旅に影響が出てしまうと思い、再度布団の中に潜って目を瞑った。

 嫁ってどこで見つけりゃいいんだ?

 他の街に行けばいろんな人に出会えるか。

 パーティー組んでいろんなところを旅したいな。

 そんなことを考えていたら以外にもすぐに眠りの中に溶けていった。

 

 光が目に差し目が覚めた。

 まだ眠ったままの体を起こして、欠伸をしながらリビングに向かった。

 

 「おはよう、随分といい夢見てたのね、今日は旅立ちの日よ!豪華な朝食を用意したから座って待ってて」


 「はーぃ」

 

 また一つ大きな欠伸をしながら席に着く。

 すでに料理は並べ始めていて、妹のセレンがせっせと運んでいる。


 目の前にはフレンチトーストがあった。小麦を手に入れるのが難しくパンを食べる機会は滅多にない。最後に食べたのは2ヶ月前くらいか?


 色とりどりの果物も並んでおり、本当に豪華だ。

 最後にコーンスープが運ばれてきて、家族みんなが席についた。


 「いただきます」


 「「「いただきます」」」

 僕の挨拶を始めとしてみんなが一斉にいただきますと言った。


 どの料理もとても美味しかった。

 コーンスープは暖かくマイルドな味で、母の優しさに包まれたかのようだった。

 2ヶ月ぶりのパンはフレンチトーストとオシャレなものに変身してやってきて、こちらも非常に美味しかったら。

 果物も甘味が強くジューシーで食べ応えがあった。

 朝ごはんにしてはとても多く大満足な朝食で満腹となった。


 最後に旅の支度の再確認をして、ついに旅の出発の時間となった。

 村のみんなが僕のお見送りにやってきた。

 

 「いい嫁見つけてこいよ!」

 

 「無事に帰ってくるのよ」


 「悪い奴らに騙されるんじゃねぇぞ!」


 村のみんなは様々な言葉で僕を見送ってくれた。

 

 村を出てしばらく道を進んでいると風のよく通る草原に出た。

 今までは森がそばにあり、こんなにも広い空間を見たことがなかったので味わったことのない不思議な感覚に陥った。


 自分の住んでいた村からどのくらい離れたのかなと思い、村の方向に目を向けてみた。

 すると、遠くに紅く光っているのが見えた。その上には黒煙が広がっており、何か良くないことが起こっているということが一目瞭然であった。


 すると、今まで姿を隠していたリアが姿を現した。リアは非常に焦った様子であった。


 「アレン村がたいへんなの、でっかいドラゴンが村で暴れて村全体が火の海となってしまったなの。水の妖精達が頑張って消火してるけど、相手がドラゴン故に力量差がありすぎて追いつかないの」


 リアの話を聞き、僕はすぐに転移魔法を発動させた。転移魔法は一度行った場所なら転移をすることが可能だ。あの小さな村では使う機会がなくてあまり使ったことがないが、ついに使う時が来た。

 草原に出るまでに3時間ほどかかったが、この魔法を使い慣れていなくて転移魔法の準備に15分ほどかかってしまった。使い慣れている魔法陣は頭に思い浮かべることで発動が可能だが、使い慣れていないとうまく思い浮かべることができず発動ができないのだ。そのため地面に手で魔法陣を描くしかないのだ。

 準備が完了した後すぐに魔法陣を発動させた。

 魔法陣は浮かび上がり光を纏い始めた。

 そして僕は転移したい場所を強く思い浮かべた。

 すると僕の身体にも光が纏い始め、光が全てを覆うと村に転移することができた。

 辺りを見回すと全ての家が焼き尽くされていた。

 人の気配がなく、家が淡々と火で燃える音だけが聞こえてくる。


 ドラゴンはすでに飛び去った後のようだ。

 

 僕は焦燥感にかられた。

 僕の家族は、

 村のみんなは、

 無事でいてほしいただそれだけを願いに魔法でserchと唱え人を探した。

 近くにはいないようだ。

 少しずつserchの範囲を広げていった。

 すると、1つ反応があり、森の中にいるようだった。

 僕はすぐに走り出した。


 「おーい!誰かいないかー!」


 serchで示した場所に段々と近づくと啜り泣く声が聞こえてきた。


 草や蔦を掻き分けていくと子供の後ろ姿が見え

た。

 長い髪の毛は乱れており、ここまで走ってきたということが伺える。

 

 僕は相手を驚かさないようにゆっくりと近づき声をかけた。

 「だいじょうぶ?僕がきたから安心して」


 すると子供は僕の方を振り返った。


 「お、、おにいちゃん?」

 

 まさかの人物に驚きすぎて息が止まるかと思った。


 「え、セレン!?」

 セレンは僕を見るなり飛びついてきた。

 僕を強く手で掴みくっついていて、離れない。身体は小刻みに震えていて悲惨な事態に恐怖を覚えたのであろう。

 僕はセレンが落ち着くまで、じっと待っていた。

 やがて、スーッ、スーッとリズムの整った寝息が聞こえてきた。


 ずっと緊張にさらされていて疲れてしまったのであろう。 


 顔の緊張もほぐれ穏やかに眠っている。


 僕はセレンを胸に抱いたまま他に生存者がいないかserchをかけてみたが、反応はなかった。

 リアにも探してもらったが、村は全て焼き尽くされていて人は見当たらないと言っていた。

 森の中まで焦げ臭い匂いが漂っている。

 セレンが寝ていて動けないのでserchの範囲を広げて人がいないか探した。


 すると、今僕達がいる場所から10km先に反応があった。

 幸いにも僕は一度その場所に行ったことがあった。

 だいぶ森の奥深くにいるようだった。これだけの体力を持っているとすると、若い男性がいるのだろうか。

 今はほとんど動いていない。


 すぐにでも行きたかったがセレンがいるので簡単には動けなかった。

 まだ使い慣れていなくて不安だが、頭に魔法陣を思い浮かべて転移の魔法を使う方法を試してみることにした。

 意識を脳に集中させて転移する時の魔法陣を思い浮かべた。すると、体内にある魔力が全身を駆け巡り、じわじわと身体が温まってきた。やがて、足元に魔法陣が浮かび上がり光が体に纏った。光が身体全体を包み込み転移の魔法を使うことができた。

 

 そして、一瞬にして別の場所に移動することができた。

 どすんっ!


「いってぇー」

 座標設定が完璧すぎて目的の人の上に転移してしまった。

 下には男の人が潰されていた。


 「わわわっ!すいません」

 僕は急いで移動をして謝った。


 よくみてみると見覚えのあるオレンジの髪をしている人が目の前にいた。


 「って、テオ!?」

 テオは僕と同い年で昔からよく一緒に遊んでいた。誕生日は僕より後なのでまだ村に残っていた。お見送りの時は何やら用事があるとかで来れなかったらしい。

 「その声はまさかアレンか?!」


 「うん。そうだよ!」

 テオは身体能力が高く剣の技術も同年代では最も優れていた。

 なので生き残っていてくれたことはとても嬉しいし、何より心強い。

 そう思っていたのも束の間。急にテオが倒れて意識を失った。

 喜びのあまり気が付かなかったが、よく見てみると目の当たりに傷がついていた。ある程度の血は拭き取ったようだが、薄く色が残っている。

 この傷の具合だと大量の血が流れ出て、貧血を起こしてしまっているのだろう。


 僕は魔法で傷を治して痛みを消すことは可能だが、失われた血までを治す効果のある回復魔法を使用するには魔力が足りない。

 

 僕はとりあえず簡単な回復魔法をテオにかけた。

 すると今までは少し険しい顔をしていたが、顔の緊張がほぐれて安堵の表情を浮かべている。

 暫くした後テオは目を覚ました。まだ頭がぼんやりしているようだったが命に別状はないだろう。


 「大丈夫か、テオ。傷はもう痛くない?」


 「あれ、俺気失っちまってたか。ドラゴンに襲われて、必死に逃げて、そして、、、あれ傷がもう痛くない?」

 

 「僕が治したからもう痛むことはないはずだよ」

 

 「傷を治す?」

 そうなるよね。妖精のリアのおかげで僕は魔法というものを知ってるけど、そもそもあの村には魔法という言葉自体が存在していなかったから当然の疑問だよね。

 リアのことは話せないし、どう説明しようか迷っていた。

 よし、ここは本に書いてあったということにしよう。

 それから僕はテオに魔法でどんなことができるのか、普段からみんな身体能力強化を使っているなどの話を説明した。

 最初は何を言っているのか分かっていないようだったが、実際に魔法を見せたことで納得してくれた。


 話が終わる頃腕の中でずっと寝ていたセレンが目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 


  


 

 

 

 

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