第2話 成長

「できたんだ、好きな人」

「できたっていうか、ちょっとかっこいいな〜って思う人はいる」

「ふぅん」

 柚葉がコーヒーをかき混ぜた。

「どんな人?」

「えっと、笑うと顔がくしゃってなって可愛いの。それから、いつも優しく接してくれる。私が間違えても怒らない」

「ハードル低すぎだろwww なんでそんな臆病なんだよwww」

「へ? そうかな」

「だって、優しく接してくれるとか怒らないから好きだなんて、相手に求めるハードルが低いんだよ」

「ああ〜……マジ?」

「美子ってそんな臆病な子だっけ」

「臆病なとこは……あるけどさ」

「もっと強くならないと、表面だけ優しいやつに搾取されるよ〜」

「そう……かな……」

 柚葉はチューっとストローからコーヒーを飲んでいる。む、むう。そう言われればそうだな。

「なんかさー、小さい頃は親に愛されてきて楽しかったけど、大人になったら放任されるし愛されてもなんか受け取りにくいしやだ」

「愛着問題?」

「そうかもしれない」

「ガラスのハートちゃんだからね〜美子は」

「うええ。強くなりたいよ」

「まぁ個性といえば個性なんだけど。でも渡りにくいよね世は」

「強くなれる?」

「う〜ん。美子はさ、弱いけど、弱いままでいいと思ってる感じじゃなかった?」

「……ほんとはそう思ってる」

「なら無理して強くなろうとしなくていいんじゃない? だってそれ、美子の本心じゃないじゃん」

「確かに」

「弱いまんまで、幸せになれたらいいねぇ」

「……うん」


「羽柴さん、この資料、よくできてたよ。ありがとう」

「お役に立ててよかったです」

 川原さんがそう言って、去っていった。

「ご飯とかに誘わないの?」

 真野さんが私に小さい声で言ってくる。

「う〜ん、そういうことをしてみたいんですけど、私、まだ私に胸を張れるような感じじゃないので、もっと自立した大人になってからまだいいなと思えたら、アプローチしてみようと思います」

「あら素敵。頑張ってね」

 真野さんがにこりと笑った。

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恋愛、かくあれかし はる @mahunna

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