エピローグ
大きくなった日衣がしたこと。それは少しずつ幸せの力を皆に分け与えていく。
人々は笑う。この島には神様がいる。だから誰もが笑顔になれる。不幸を撒き散らしてはいけない、神様の逆鱗に触れるから。
みんな幸せ、ハッピーエンド。例えそれが死であろうとも。
「おばあちゃん、死なないで」
一人の少年が涙を流す。
「神様どうかお願いします! おばあちゃんを助けて!」
少年の願いは虚しく、お婆さんは死に向かう。これまでお婆さんはたくさんの死に向き合ってきた。両親の死、旦那の死、友達の死。それでも神様を恨むことはなかった。
「大丈夫だよ、潤也」
お婆さんは、笑う。お婆さんから名前を一つもらった少年は泣きながらお婆さんに抱きつく。
「神様はね、ちゃんと見てくれてるよ」
少年の祖父はお婆さんの手を取り、真っ直ぐ見て言う。
「俺の孫の代まで生きたんだ。大往生だよ」
しわしわになったお婆さんの手を、少しシワのある息子が握る。
曾孫の少年は、涙を拭い手を重ねた。
「潤也、見てご覧」
お婆さんは曾孫の潤也の手を強く握って指さした。
「あれはね、先に旅立った元気爺ちゃんと私が結婚した時に、神様から貰った大切な宝物なんだよ」
指さす瓶には造花の青いバラが飾られてる。
「きっときっと……、あれ?」
潤子はふと、目を向ける。そこには日衣が立っていた。
「あなたは、もしかして……」
皆が振り返る。日衣は笑顔で前に出て、潤子の手を握った。
「ひーちゃん! ひーちゃんなんだね!」
潤子は涙を流して握られた手を強めた。
「か、神様!? 神様! おばあちゃんを連れてかないで!」
潤也が必死に訴える。日衣は首を横に振った。
「じゅんちゃんはね、もう休まないといけないんだよ」
そして、潤也の頭を撫でて、こう言った。
「あなたにもきっと幸運があるから」
日衣は潤子を抱きしめる。
「ひーちゃん、大きくなったねぇ」
「そう言うじゅんちゃんは、歳をとりすぎだね。せめて最期はあの頃に……」
日衣が潤子の頭を撫でると潤子は若返っていく。神様の奇跡に誰もがド肝を抜かした。医者はひっくり返り、看護師は人を呼びに行く。
「じゃあね、バイバイ」
潤子は日衣に抱きかかえられて天へと旅立った。天の上では、みんなが待っていた。
「潤子、遅かったな!」
「やっと皆で遊べるね」
日衣は優しい目で言う。そして、そっと皆の魂を導いた。
次の輪廻へと向かう潤子たちはきっとまた、この島で幸せになれるはず。
神様と神様の子の加護の元で。
神様の子 みちづきシモン @simon1987
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