一冊の本を読むつもりで読書して欲しいという言葉通りの物語で、読む人の時間を充実したものに変えてくれます。
序盤は密度の高い過去の話から始まり、じっくりと読み進めました。
しかし話が進むにつれてスピード感が増し、軽快な読み味になっていくので、本を読む時の重さが良い意味で解消されていきます。
素晴らしい剣の腕を持ち、また鬼としても強力な力を持つ主人公、紫蓮。
個人主義的な一面を見せ、実力に裏付けられた自信を持つ紫蓮を中心にして進む物語は、クールで落ち着いた雰囲気があります。
紫蓮は鬼で強力な力を持つため、どこか安心して読み進めることが出来ます。かと言って敵が弱かったり一人の力で無双するのではないため、多様な能力を持つ敵に紫蓮がどう対処するか、また共に戦う仲間たちがどう戦うのかという面白さがあります。
仲間たちも紫蓮に頼り切りではなく、人間の力で鬼を倒すということがこの物語のテーマの一つ。人間である隊長たちと紫蓮の同期の成長にも注目です!
最後に、紫蓮は復讐心だけではなく、戦いを求めて鬼を狩っています。
鬼を憎み人に手を貸しながら、同胞として鬼たちと過ごした思い出を持つ紫蓮の、頼もしさや危うさもこの作品の醍醐味です。