忘らるる男の歌
南雲 皋
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同僚は人に好かれる笑顔して わたしの成果を
プルタブを開けて飛び出す泡になり 幸福そうに消えてゆきたい
無意識に通勤電車に乗りたがる脚を叩いて逆のホームへ
誰からも見向きもされぬ
角曲がり逃げた裏路地 足音が聞こえ
物陰に隠れ見守るその姿 あまりに自由で涙が落ちた
声掛ける勇気もなくて帰り道 伸びる影さえ届かず切れて
一人きり
人混みが視線がいつしか気にならず それでも裏路地通いは止めず
ネオン
死に金になると思っていたものが役に立つなら全て彼女に
受付に彼女の名前を告げ入り 壁に
舞台上輝く彼女のその視線 カチリと噛み合う音が一瞬
仕事終え 出てきた彼女に声を掛けられるようなら苦労はなくて
ひらひらり 揺れるスカートいつの日か この手の蜜に気付いてほしい
突然の別れに血の気が引いていく 彼女の写真はどこにもなくて
思い出の場所に走れど姿なく
何一つ残らぬ世界にサヨナラを せめて彼女の為に祈りを
忘らるる男の歌 南雲 皋 @nagumo-satsuki
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