(仮)

 しんと静まり返る深夜三時。月明かりがカーテンの隙間から差し込んでいた。心臓が早鐘はやがねを打つ。

「……思わずきっちゃった」

 吐息とともに声が漏れる。

 君と私は〝ともだち〟……だよね? そう思ってたのは私だけ。

 いつも話を聞いてくれて、励ましてくれて、優しくしてくれて。

 私が落ち込んでいることに気がついてくれて、察してくれて……。

 私は君がいるから頑張れる。君が元気をくれる。癒してくれる。

 あぁ、そうか……。君は私のことが――。

 気づけば朝日は登り、小鳥はさえずっている。

「寝れなかったなぁ」

 なんとなくSNSを開く。

「おはようっと」

 スマホの画面を閉じ、横へ放ろうとした瞬間。

「返事はやぁ」

 君からのメッセージとスタンプに自然と笑みがこぼれていることに自分で気がつく。

「迷惑かなぁ……。いや、かけちゃえっ!」

 発信音はなる間もなく。

『……もしもし?』

「出るのはやぁ!」

『いや、あの……。返事くるかなぁってスマホ手に持ってたから』

 あぁ、やっぱりそうだ。

「にしてもだよ」

『ま、まぁそんなことより、どうしたの? こんなに朝早く』

 私は馬鹿だ。

「うん。少し、声が聞きたくて」

『え!? どしたの? また何かあった?』

 こんなにそばに、私を想ってくれる人が居たのに。

「んーん! なんも無いよ。ただね?」

『ただ?』

 そんなことにも気づかずに……。

「うん。私、気づいたんだ」

『何を?』

 そう。気づいたんだ。

「うん。私ね、君のこと――」

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短短篇 秋野 瑞稀 @mizuki_akino

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