僕はただサヨナラを言う練習をする

 しんと静まり返る深夜二時。静寂を切るようにスマホのバイブ音が鳴り響く。眠い目を擦り、画面の明るさに目を焼き、しかし僕はすぐに目を覚ます。

「もしもし?」

『あ、でた! もしもし!』

 大好きな声が鼓膜を優しく刺激する。だけど、今はどこか……

「なんか……元気ない?」

『うん……。あのね? 聞いてくれる?』

「うん。……聞くよ」

 君には想い人がいる。わかってる。何度も何度も話を聞いているから。

『でね? 私が……

 本当は全然聞きたくないんだ。

「そっかぁ、それは寂しいね」

 だって僕は君が……。

『聞いてくれてありがと! 少し元気出た!』

 そんなやつよりも僕の方が……。

「うん。良かった」

『うん! 私は君が話を聞いてくれるから幸せ者だね』

「へへっ。僕で良ければいつでも聞くよ。………だって僕、君のことが

『うん! ありがと! じゃあおやすみ!』

「あっ。……おやすみ」

 わかってる。僕は君の〝ともだち〟だ。

 暗くなった画面をいつまでも眺める。

「僕は君のことが、好きだ。サヨナラ」

 暗くなった画面に向けていつも、


 僕はただ、サヨナラを言う練習をする。

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