僕はただサヨナラを言う練習をする
しんと静まり返る深夜二時。静寂を切るようにスマホのバイブ音が鳴り響く。眠い目を擦り、画面の明るさに目を焼き、しかし僕はすぐに目を覚ます。
「もしもし?」
『あ、でた! もしもし!』
大好きな声が鼓膜を優しく刺激する。だけど、今はどこか……
「なんか……元気ない?」
『うん……。あのね? 聞いてくれる?』
「うん。……聞くよ」
君には想い人がいる。わかってる。何度も何度も話を聞いているから。
『でね? 私が……
本当は全然聞きたくないんだ。
「そっかぁ、それは寂しいね」
だって僕は君が……。
『聞いてくれてありがと! 少し元気出た!』
そんなやつよりも僕の方が……。
「うん。良かった」
『うん! 私は君が話を聞いてくれるから幸せ者だね』
「へへっ。僕で良ければいつでも聞くよ。………だって僕、君のことが
『うん! ありがと! じゃあおやすみ!』
「あっ。……おやすみ」
わかってる。僕は君の〝ともだち〟だ。
暗くなった画面をいつまでも眺める。
「僕は君のことが、好きだ。サヨナラ」
暗くなった画面に向けていつも、
僕はただ、サヨナラを言う練習をする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます