私/ボクのエンディング

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 ──私/ボクのエンディング



 ファティマの体が完全なテリオン粒子に置き換わる直前。


「いよいよ崩壊が始まったようだね」


 ハーバートがファティマを診察してそう言う。


「準備はできているかね?」


「ええ。私はできています」


 これからファティマという存在は消滅し、サマエルと融合する。


「ボクもできているよ、お姉さん。でも、これでお別れだね……」


「お別れではないですよ。これからずっと一緒に過ごすんですから」


「そうだね。うん。そうなんだよね」


 ファティマが微笑みサマエルも笑った。


「崩壊が始まっている。テリオン粒子の拡散が始まった」


 ハーバートがそう分析して告げる。


「では、お願いします、サマエルちゃん」


「うん。お姉さん、一緒になろう」


 ファティマが両手を開いてサマエルを迎え入れ、サマエルが腕の中に入り、ファティマをそっと抱きしめた。


 そして、テリオン粒子としての体を維持できず崩壊を始めたファティマがサマエルに融合していく。


「……これが新しいテリオン粒子からなる生命体……」


 ハーバートがそう呟く中、ファティマとサマエルが融合した姿が見えた。


「こんにちは、ハーバートさん」


 黒髪と銀髪の混じった少女がハーバートにそう言葉をかける。


「ああ。今の君はファティマさんなのか、それとも“終焉の獣”なのか」


「どちらでもないし、どちらでもあります。私/ボクの中にはひたつの記憶と感情が存在します。ファティマとサマエルの両方の記憶と感情が」


「そうか。では、来てくれだろうか? 君を案内する準備はできている」


「ええ」


 ファティマとサマエルが融合した少女がハーバートに続く。


「ところで、君を何と呼べばいいのだろうか?」


「そうですね。リリス、とでも呼んでください」


「分かった、リリス」


 ファティマとサマエルが融合した少女リリスの言葉にハーバートがそう返す。


「ここから人工星辰世界へ。後のことは任せてくれ」


「はい。お願いします」


「では、よい眠りを」


 リリスは人工星辰世界へと向かった。エーテル体の存在とほぼ同様の存在であるリリスは人工星辰世界の中に溶け込んでいく。


「ファティマ、サマエル」


 リリスがつぶやく。


「ふたりのことは覚えています。決して忘れない。ふたりがこうして一緒になれたことを嬉しく思います。これからずっとふたりで過ごしていくんだ。私/ボクの中でこうしてふたりで……」


 リリスの中にあるファティマの感情とサマエルの感情は喜びのそれであった。


 それから5年後には衛星軌道上に星間移民船を建造するドックが作られ、それからさらに5年後には最初の星間移民船が就航した。


 星間移民船にはエデンの住民だったものも、ゲヘナの住民だったものも、区別されずに乗り込み、新天地を目指して出発した。


「こうして人類は楽園に帰還する」


 エリュシオンから旅立っていく星間移民船をハーバートは見つめた。


「最初の楽園からは追放された。だが、新しい楽園を見つけるのだ。私はそのことを祝福しよう。君も同じ意見だろう、リリス……」


 ハーバートは人工星辰世界の制御端末に向けてひとりそう呼び掛けた。



 人類は新たな楽園を目指し、宇宙へと旅立つ。



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異端な私と悪魔な彼女の楽園追放 ~依存系メンヘラ大悪魔と行く失格魔術師のポストアポカリプス世界で下克上!~ 第616特別情報大隊 @616SiB

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