第3話 カラーリング

かすかに何かが聞こえる。

これは、アラーム、、、か。


「うぉっ、もう朝か。おはようトロン。アラームを止めて。」


「おはようございます。winmacさん。アラームを解除しました。」


「おはよって、いったーい、筋肉痛だぁ!」


「筋肉痛の場合は、安静にして休むと良いでしょう。また、ストレッチやマッサージも効果的です。」


トロンが気を遣って教えてくれた。いやぁ、最近全く運動していなかったからなあ。昨日の畑仕事が筋肉痛の原因だろう。


「今日は家で過ごすかぁ。」


トロンに調査を任せて、家でできることをしよう。


「ではトロン、今日も調査よろしくね!」


「わかりました。」


「それじゃぁ、いってらっしゃい!」


「設定した目的地まで移動します。」


少しずつ小さくなっていく姿を眺めた後は朝食だ。


「あ、しまった。トロンに質問を先にしとくべきだった。」


トロンはもうすでに離れてしまっている。完全に後の祭りだな。


「さて、できることを探しますか。」


食器洗いに洗濯、掃除。ここのところできていなかったので、まずはそういったものから片付ける。


ちょっと休憩。何か新着の動画ないかなぁ。

動画視聴はヘッドセットを使って見ている。こちらの方が臨場感があって好きだ。


「オフラインです?そっか、インターネット使えないんだった。」


習慣化しているものが日常から消えてしまうのはつらいな。

仕方ない、別のことをするか。

とその時、アプリ一覧にある、とあるアプリに目が止まった。


「あれ、こんなアプリ入れてたっけ?カラーリング?」


いかにも純正アプリですよーみたいな感じのアイコンが、平然と鎮座している。


恐る恐るアプリを開いてみる。


「なになに、ヘッドセットを通して見たオブジェクトの色を変えることができます。と書いてあるな。」


拡張現実を利用して、服の色を変えられるよーとかいう加工アプリみたいなものかな?

試しに、机の色を変えてもらおう。


「ここで色設定をして、実行!」


白い机が茶色になった。すごく落ち着いたいい色だ。


「おぉ、できたぞ。顔の向きを変えてもズレることなく机の色が変わってる!」


最新の技術はすごいなぁ。

そんなことを考えながら、椅子や壁紙、パソコン、床の色などを自分好みに変えていく。


「面白い、面白いぞ!」


あっという間に元の部屋の見る影も無くなってしまった。


「楽しかったなあ。」


たまにはこう言った遊び要素も欲しいよね。

さてと、ほどほどにしておきますか。

ヘッドセットを外す。


「な、なんじゃこりゃ!」


外した瞬間目に飛び込んできたもの、それはついさっきまで遊んでいた模様替え後の部屋だった。色が元に戻っていない。


「あ、あれ?」


ヘッドセットをつけ外しても色は戻らない。


「これは、、、、やってしまったかな?」


頭の向きや視線を変えても色がずれないのは、もの自体の色を変えていたからなのか、、、

やってしまったことは仕方ない。

この世界だからできること。そう捉えておくことにしよう。

何かこれをポジティブに使えないものか、探してみることにする。


「とりあえず、地面の色を変えてみるか。あとは、掘り返した土に色をつけてみたり?」


早速やってみることにしよう。


まずは地面から。


「色を指定して、実行!」


変わらない。


「ん?なんでだろう?」


右下に表示が。処理中...と書いてある。

広大な土地の色付けは流石に時間がかかるか。


少し待ち、


「お、できた。」


一気に一面草原になった。草はないけどね!


「いい景色だ。」


地面に寝転んでみる。やはり地面は硬いままだ。


「地面は硬いけど、白より緑の地面の方が趣があるね。」


日向ぼっこってなんだか落ち着くよね。

暖かく、心地よい風が流れ、、、段々と眠くなってきた。このままここで寝てしまいそうだ、、、


「あれ、今何時だ?」


いつの間にか寝ていたようだ。太陽?もだいぶ落ちている。夕方くらいだろうか。

幸い、家の近くで日向ぼっこしていたので帰るのはすぐだ。

寝ぼけ眼で帰宅する。

それにしても気持ちよかったな。筋肉痛の痛みもだいぶ落ち着いた気がする。


「あら、トロンおかえりなさい。」


玄関に向かうとそこにはトロンがいた。調査が終わったようだ。


「はい、winmacさん。ただいま戻りました。」


「それじゃあ、家に入ろうか。」


とりあえず、夕食を食べることにしよう。 


「トロン、今日もお疲れ様。」


「winmacさん、ありがとうございます。」


今日も無事に帰ってきてくれた。明日が最後。何もなく終わって欲しい。

昨日と同じようにトロンの撮影した映像を確認する。


「やっぱり何も写ってないな。」


流石、何もない世界。今回も裏切らないよ。

この感じだと外の調査は(言葉通りに)何もなく予定通りに終わらせることができそうだな。


「そういえば地面の質感とか、物の質感は変えられないのかな?」


草は生やせなくても、少しふかふかな感じにしてみたい。

そういえば、一面草原にしちゃったけど、せっかく色がつけられるんだし道路作ってみたいな。ついでに都市計画的なものも考えてみるか。そう考えると、人みたいな存在が欲しいな。


「とりあえず今日は寝ますか。」


「おやすみ、トロン。」


「はい、おやすみなさい。」


—————————————————————


アラームと共に起床。筋肉痛の痛みも疲れも昨日の日向ぼっこでどっかに飛んでいってしまった。


「おはよう、トロン。」


「おはようございます。」


さて、今日はトロンの調査最終日だ。


「トロン、今日は最後だ。無事に帰ってきてね!」


「はい、もちろんです。」


「そんじゃ、いってらっしゃい!」


トロンを見送り、朝食を食べる。

またもや質問をすることを忘れた。まあ、すぐには困らないし、いっか。

あれ、そういえば何かの種を母からもらったような?簡単にできるとか言ってたっけ。全く興味なかったから放置してたけど。時間があるときに探してみるか。


「さて、私はこの世界の創造神になる!」


まずは生物がいるといいのだけれど、、、そんな技術はない。

生物がいないとなるともはや手詰まりな気がするが、、、

とりあえず道路くらいは作るか。自分の家を起点として東西南北に広げていく。

家の周りには公園を作って、憩いの場にしよう。

農業、工業、商業、宅地を4つにわけて設置する。

森林浴ができるような場所も欲しいな。

まあ、細かいところは後で決めていくとしよう。

今はとにかく人手が欲しい。いい方法はないものかなぁ。

あれ、そういえば色分けってできるのかな?

家の裏に回って畑へ。土の色は、、、白のままだ。

色分けはできるわけか。


「よし、まずは道路を敷く!」


真っ直ぐに線を引くのって難しいよねー。定規を使っても長い線を引くのは苦手だ。この作業もトロンに任せるしかないのかなぁ?だったら調査のついでに引いてもらうべきだった、、、

自分でやる方法はないか探してみる。メジャーじゃ長さが足りない。あ、畑作ったときに使ったあのアプリ使ってみるか。

早速ヘッドセットを装着。家の端を起点にセットして直線を表示。うん、うまくいった!

印は、、あのツルハシでつけられるかな?

地面にツルハシで四角を描く。うっすらと線がついているか?

そこに色付け。一瞬にして四角の色が変わる。これならツルハシでいけそうだ。

いつどんな時も楽をしたい人間。車の後方にツルハシをくくりつける。あとは地面の端までドライブだ。


「よーし、しゅっぱーつ!」


ヘッドセットに表示されている直線をなるべくなぞりながら運転する。現実でやったら速攻違反で捕まるだろう。だがしかし、ここは何もない世界!問題なし!

外の景色を眺めながら、今後のこの世界の景色を思い浮かべていく。近未来的な世界とか憧れるよねー。空中高速道路とかどうだろう?完全歩車分離の道路とかすごく安全な街ができそう!


そんなことを考えながらwinmacは車を走らせるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

何もない世界に来たから、私が創造神になる @winmac

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ