第2話 不思議な世界

 この世界には端があることがわかった。その他、できることがないので一度帰ることにした。帰りのナビゲートもトロンにお願いする。


“この世界をどう生き抜く?”


地球とはわけが違うこの世界。もし、この世界に住人がいないのなら、頼ることができるのはトロンと自分の知識のみ。


「トロン、飢えを凌ぐ方法はある?」


家にはある程度の備蓄があるとは言え、いちばんの問題はやはりこれだ。


「はい、自生している植物を食糧とすることで飢えを凌ぐことができます。」


「ありがとう、トロン。」


「お役に立ててうれしいです。」


トロンにはこの世界の情報を持っていないが故にこのような回答になるのだろう。仕方がない。

自分で方法を探すしかなさそうだ、、、お腹が空いていることであまり気づいていなかったが、喉も乾いてきたな、、、水道は使えるのかな?電気と同じように使えるといいな、、、まぁ、使えなかったとしても、空気から水を採取することにしよう。

今後のことを考えて、トロンの改造をやってみたいなー

自立して動けるようにしてみたり?動けるなら外の調査もはかどりそうだ!これはやってみてもいいかもしれないな。



 旅から帰還。車に水素の補給をする。といっても、そそこまで走ったわけではないから、ほとんど減っていない。最近の家には水素を作る機械が設置されている。子供のころには考えられなかった水素社会が大人になった今、実現したわけだ。


朝だか昼だかよくわからない食事をとる。時計はすでに15時を指している。今回はカップ麺だ。トロンも電気を食べている。


「ねえ、トロン、美味しい?」


「はい、美味しいです。」


「よーく味わって食べるんだぞ?」


「わかりました。」


トロンは食べ物の心配しないでいいの、うらやましなぁ。

食べ終わったらトロンの足を設計してみるか。

手っ取り早く作りたいから、タイヤの足でいいかな?モーターは、、、、そこら辺に転がってる模型のものでも使おうかなぁ?


あれ?なんでカップ麺が食べられるの?という声が聞こえてきそうだ。実はなんと!水が使えたのだ!ありがたい、、、!

だが、電気も水道もどこから供給されているのかがわからないので、大事に使おう。突然使えなくなった!なんてことがあったら生存の危機に陥るかもしれない。


様々なことに考えをめげらせているうちに食べ終えた。早速トロンの足を設計しようと思う。

とりあえずは凹凸のない円柱のタイヤでいいだろう。摩擦?そんなものは知らない。動かなかった時に考えることにする。

ハシゴ型の簡易フレームも作成し、いざプリントへ!

あ、トロンにスマホを取り付けて、様子を撮影してもらおう。固定は結束バンドでいいかな?


プリントを待っている間に小さなスコップやツルハシ、、、みたいなものも作成する。トロンが外出中に地質調査をやってみたい。果たして地面を掘ることはできるのか!!



「もうこんな時間かぁ。」


おそらく太陽であるものもいなくなり、すっかり暗くなってしまった。モデルを作り、プリントをしているとあっという間に時間が過ぎる。今日トロンを外出させるのはやめておいたほうが良いな。


夕食を終え、水や電気が使えることに感謝をしながらお風呂へ。


「いい湯だなぁー」


いつもより何倍もゆっくりと浸かることにした。今日のこの1日は一生忘れることはないだろう。


「おやすみ。トロン。」


「はい、おやすみなさい。winmac。」


「明日の調査、よろしくお願いします。」


「わかりました。」


就寝前にトロンと会話を交わす。明日トロンには頑張ってもらおう!


—————————————————————


 スマホのアラームと共に起床。真っ先に窓の外を眺める、、、変化はないようだ。わかり切ってはいたが、少しだけ期待してしまった自分がいる。


「おはよう。トロン。」


「はい、おはようございます。」


「トロン、今日はよろしくね!」


「お任せください。」


早速トロンの改造だ!といっても土台にトロン乗せればいいのだけれどね。あとは、前回の落下未遂事件を再び起こさないように、トロンにはセンサーを搭載する。


トロンにスマホを固定して


「いざ、出発!」


「設定した目的地まで移動します。」


「いってらっしゃい。地面から落ちないよーに!」


地面から落ちるって、なかなか言わない言葉だよなぁ。

トロンが順調に離れていくのを見送り、こちらも作業をすることにする。


「スコップ、ツルハシ、あとジョウロも持って外に出るか。」


万が一のことを考えて、掘る場所は家から少し離れたところにしよう。


「ここでいいかな?」


道具を地面に置いて、いざ調査開始!

手始めに、手で地面を引っ掻いてみる。


「何も掘れないや。ツルツル滑るだけだ。」


そう簡単には掘らせてくれないようだ。


「そんじゃ次は、、、スコップ!」


「いくぞ、、、えい!」


勢いよく地面に突き刺す。


さくっ


「え゛」


刺さった。慌てて引き抜く。スコップは壊れていないようだ。


「どうなっているんだ、、、ツルハシはどうだろう。」


カツッ


地面に傷が入ったものの、少し固いようだ。削れる気配がない。

プラスチック製のツルハシだからかな?


「不思議な世界だ、、、」


スコップでもう少し掘ってみる。感覚的には、、、砂?土?その真ん中くらい?な感じかな?


「水をかけるとどうなるのかな?」


まずは何もしていない地面へ。かけた瞬間、水が地面から消えていく。すごく水はけが良い。

お次はスコップで掘った方へ。こっちはどうだ?


「おぉ!」


なんせ、色が白なので分かりづらいがかけたところが湿っている。


「これなら畑とか作れそう!」


「あ、そう言えば。」


湿った土のようなものを手に取り、手でこねてみる。

ちょっと粘土っぽくなってきたかも?


「何か作れるかな?」


研究用にたくさん持って帰ろう。あ、袋がない、、、ジョウロの中に入れておけばいっか。


新たな発見というものは楽しくなってくる!

畑には何を植えよっかなぁ。冷蔵庫に入ってる野菜で育てられるものはあったかな?

粘土で何作ろう?土器作ってみよっかなぁ?一度やってみたかったんだよね、、、


「しまった!」


うち、ガスないじゃん。火、使えないよ?

オール電化が裏目に出た。


「トロンに火の起こし方を聞いてみるかぁ」


とりあえず、できることからやろう。地面を踏み固めて元に戻し、家へ帰宅。


「というわけで、自分もついに家庭菜園を始めるぞー!」


ちなみに野菜より肉派。

だけれど、生きるためにはつべこべ言っていられない。

正確に寸法を図るため、ヘッドセットを装着する。


「まぁ、だいたいここで、、、大きさはこれくらいでいいかな?」


すごく測量が簡単だ。高いものを買っただけある、と実感する。


「でもなんか、畑っぽくないんだよなぁ。」


地面が白、掘り返したところも白。見分けが付きづらいからなのか。いや、土の色でないからだろうな。


「とにかく、あとはタネだ。」


これはトロンの知識を借りるしかない。トロンが帰ってくるまで待機だな。あとは、間違って踏まないように柵を作っておこう。棒と糸だけの簡易的なものだが、ないよりはマシだろう。


「よし、こんなもんかな。」


さて、次は焚き火のための薪が欲しいなぁ。木を切るといえば、斧かな?


「とりあえずイメージで作ってみるかぁ。」

とまあ、作ってみた!やすりでなるべく先を尖らせてっと。こんな感じかな?

試しに斧を一振り。様になってるかな?

地面を試し掘りした場所に移動する。


「さて、やってみますか。」


地面に斧を振りかざすのもなんだか妙だなぁっ!


コーン


おおぉ!

少しではあるが、割れ目が入った。

「この調子で薪を切り出していこう。」

というか、なんでつるはしは使えなかったのだろう?

プラスチックの斧が使えるのだから、いけると思うんだけどなぁ。

ハンマーなら地面割れるかな?明日やってみよう。


「だいぶ暗くなってきたな。」


トロンはいつ帰ってくるのかな?

ふと顔を上げると、一直線にこちらに近づいてくるものが。


「トロンだ!」


よかった。無事に帰ってきてくれた。トロンに駆け寄る。


「おかえり、トロン。目的地を削除。」


「目的地を削除しました。」


トロンを抱きかかえる。もし、トロンを失うことがあったら、この世界では生きていけないだろう。


「トロン、家に帰ろうか。」


「はい。」


トロンとともに夕食を食べる。食後はトロンが撮影した映像の確認だ。


「何もないかぁ。」


そこまでうまくはいかないだろうことはわかっていた。


「明日はこっち方面を頼むか。」


今日は寝ることにしよう。


「トロン、おやすみなさい。」


「はい、winmacさん、おやすみなさい。」

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