何もない世界に来たから、私が創造神になる
@winmac
第1話 始まりの朝
私の名前は
そしてある日の朝のことだった。
「なんだかやけに静かだなぁ。」
今日は休日。いつもなら電車の音やすぐそばを走る車の音がしている。
「何かあったのか?ってそうか、昨日これをつけたまま寝落ちしたのか。」
頭からヘッドセットとイヤホンを外す。最近発売されて話題の現実を拡張してくれるものだ。
高額ではあったが、新しいものに目がないwinmacはもやし生活によりなんとか資金を確保することに成功した!
「ん?それにしても変だなぁ」
窓に近づく。
「ってあれ?」
窓に映し出されたもの、それは無であった。
何もない。
「まっさらだ、、、」
辺りを見ても、自分の家とwinmac以外に見つかるものがない。
「どうすれば、、、」
今できることを探すことにした。
「電気は?スマホは?時計はどうなってる?」
全て正常だ。
「一体どうなっているんだ、、、」
「太陽は動いているのだろうか?気温はどうだろう?」
疑問は尽きない。
「トロン!最新のニュースを流して!」
「お調べしています、、、すみません、最新のニュースを取得することができませんでした。」
「ダメか、、、」
トロンはAIアシスタントだ。いつもなら多少の無茶を言っても答えてくれるトロンが答えてくれない。
「トロン、30分ごとに室温と酸素のデータを取得して。」
「わかりました。取得したデータをwinmacのスマホに送信します。」
わからないよりはマシだろう。急に寒くなったり、暑くなったり、はたまた酸欠でゲームオーバー、なんてことは避けたい。
「外に出ても大丈夫かなぁ?」
外には酸素はあるのか?気温は何度くらいだろうか?とか、そんなことを考えてしまうのは、このような非常事態だからだろうか。
「トロン、、、外に出たい。」
「わかりました。車両を玄関前に移動します。」
インターネットが利用できないのはニュースを取得できない、ということからわかった。電気が来ているのはせめてもの救いで、自宅内のネットワークは動かすことができる。ほとんどの家電やものをネットワークで繋ぐ時代、こういった便利機能がなくなるとストレスになる。
「トロン、車から外気温のデータを取得。」
「現在の外気温は28℃です。」
「気温は大丈夫そうだ!」
いつもと変わらないものがそこにあるとわかるとなんだか安心する。
「あとは酸素だな。」
トロンを抱え、玄関前へ。
「少し開けるくらいなら大丈夫だよね?」
トロンを外に置き、すぐに閉める。開けた感覚では苦しくなったりはしなかったので、問題はなさそうだが、、、
ちょうど送られてきたデータを見る。
「よかったぁ。」
気温のデータも相違がないことを確認し、
「食べ物も探さないといけないし、外に出るか、、、」
「トロン!一緒に行くよ!」
「わかりました。」
winmacはトロンを抱え、この世界を探索しに家を出たのだった。
—————————————————————
ひたすら北に5km走らせている。10km先まで行く予定だ。
今のところは何も見つかっていない。無の世界だ。
居眠り運転をしても捕まることはないし、ぶつかることもない。手放し運転だってへっちゃらだ。
ナビには何も表示されていない。地図データがないからなのか、自動運転も使えない。だから、今はただアクセルペダルを踏み続けている。いっそのこと、トロンをペダルに置こうかな?
「トロン、現在の位置は?」
「現在位置は家を起点として6.5kmです。」
速度制限もないので、進むのはあっという間だ。単純な作業は嫌いではないが、景色もやることも何も変わらないのは少し苦痛ではある。何か考え事でもして気を紛らわせたい。これからしたいこと、明日のこと、そう言えば、ご飯食べてなかったな、1日2食でもいけるけど、、、流石にお腹が空いてくる。、
「そう言えば、ここの地面ってどうなっているのだろう?」
ある程度の余裕ができた今、ガラスの外が気になってきた。
少しずつ、この世界の情報も集めていきたい。ここはどのような性質を持っているのだろう?
トロンをペダルから持ち上げる。
「さて、トロン。外を少し歩いてみようか。」
「winmacさん、車にお戻りの際には、トロンの充電をお願いします。」
「りょーかい。」
恐る恐るドアを開け、外の世界へと踏み出す。意外と地面は硬い。なんというか、、、真っ白?ツヤがない、真っ平だ。熱くもない。
地面の深さはどのくらいあるのだろう?
軽く叩いてみる。軽い音がする。土や金属ではなさそう。
少し面白くなってきた。こういった未知のものに触れるとワクワクしてくる。何か掘るものを持ってくればよかった、、、
車の後ろに轍はついていない、これ、迷子になったら、トロンしか頼みの綱がないわけか、、、
外は心地よい風が流れ、快適な気温だ。日向ぼっことかいいかも。
今のところ収穫は外は意外に安全だということ、何もないこと、この2つだ。
「トロン、データに何か変化はある?」
「気温、酸素濃度共に大きな変化はありません。」
「おっけー、ありがとう。」
「それで、この地面ってなんだと思う?」
「すみません、お答えすることはできません。」
「そうだよね、、、先に進むかぁ」
トロンにもわかるわけないか。とりあえず先に進むしかなさそうだ。
普段ゲームをスマホにインストールしないのだが、こういう暇な時には気を紛らわすようなものが欲しい。
「何か暇つぶしになるようなものが入っていればなぁ。」
ブックアプリに入っているのは数冊の小説のみ。いつも移動時間は小説を読んだり、気になることがあればネットの海を彷徨ってみたり、、、今はこうやって無の世界を彷徨っている。
「しりとりしますか?」
足元から声がする。しりとりなんていつぶりだろうか。
「それじゃあ、いくよ!しりとり、の、り!」
いざ尋常に勝負!
.
.
.
「このままのペースで行くと到着は3分後です。」
おお、カップヌードルが完成する時間!しりとりを程々に終え、(引き分けだよ、決して負けてないよ!決して!)外を眺めている。ほんとに何もなかったなぁ。
「ん?あれ!?」
慌ててトロンを蹴飛ばす。
「強い衝撃を検知しました。反応がない場合、10秒後に自動通報-」
.
.
.
危なかった。あと1秒でもブレーキが遅れていたら、と思うとゾッとする。
すぐ先を見ると地面がない。どうやらこの世界は丸くないようだ。もし、落下していたらどうなっていたのだろう、、、ゲームの世界ならリスポーンさせてくれるのかな?でもアイテムは失うのだろうなぁ、、
「通報に失敗しました。」
でしょうね、トロンさん。
110番が繋がるのなら、真っ先に助けてもらいますよ。
ここにいるとなんだか恐怖心が湧いてくるので、早くここから立ち去ることにする。某ツリーのガラスの床とか、底の見えない穴とか、そういった場所にいると、落下した時を考えてしまって怖くなるのだ。今まさにその状況である。
「トロン、家に帰ろう。」
「わかりました。自宅までの経路を案内します。、、、10km進む。」
「雑だなぁw」
180度向きを変え、道無き道をひたすらまっすぐに進む。相変わらず何もない景色だ。地面が平らなので揺れもなく、快適なドライブではある。現実ではない世界、現実ではできないことができる世界。そんな場所に私はいる。
「さぁ、トロン、しっかりとアクセル踏んじゃって!ペダルから落っこちるなよぉ〜?」
こうして私たちの生活が幕を開けた。
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