第2話


「なんか…照れるね。迦具夜さん本当に可愛いからさ、並んで歩くだけで緊張するというか」


屋上から教室へ戻る時。

廊下を並んで歩いている時。


わたくしの可愛いはそう言って本当に恥ずかしそうに、目を逸らしながら笑った。


…失礼。


まだ結婚はしておりませんでしたわ。


月夜さんは黒いサラサラの髪をしている。

見ていると馬頭星雲の近くを通った時の記憶が蘇るくらい、綺麗なんですの。


月夜さんの瞳はアンドロメダ銀河のよう。吸い込まれそうになります。


月夜さんの肌は…宇宙では見た事が無いくらい繊細で愛おしい。気をつけないと壊してしまいそう。


そして何より、笑顔が可愛い。


自分がクラスで、いや学校で一番可愛いと思ってるのが表情から見て取れる。

本当に愚かですわ。それがまた愛おしい。


月夜さんにはこれといったお友達もいない。

誰に対しても平等に、当たり障りなく接するので仲が深まる子はいないようですわ。


まぁ、いない方が連れ去るこちらとしても好都合だけど。


学校中の人間の記憶を"書き換えた"わたくしは、晴れて月夜さんの隣の席になった。


ふふ、横顔も素敵。


「迦具夜さん、ずっと見られてると集中出来ないというか…ていうかノート書いてる?黒板、見てる?」

「わたくしはいつだって自分の見たいものしか見ませんわ」

「いや、そんな信念は聞いてないんだけど」


はぁ。そうでした。

いつの間にか"授業"とやらが始まっていたのですわ。

本当に退屈な時間。この"教科書"とやらに書いてある事を、なんでよくわからない人間がべらべら読み上げて、それを延々聞かされなければなりませんの?


いっそこの学校のシステムもしまおうかしら。


…なんて、こういう人間の退屈な生活を体験するのも、地球での婚活の醍醐味ではありますものね。


それにしても。


「ノートを書くにしてもこの机、小さすぎません?トイレのトイレットペーパーを置くスペースくらい小さいですわ」

「そんなに小さくないでしょ!このスペースをいかに有効活用するかが、私たち学生の永遠の課題なんだよ!」

「でもこれでは、満足にお茶会も出来ませんわ」

「学校でお茶会をする人はいないからね…って迦具夜さん!?」


わたくしがお茶会の準備をし始めると月夜さんは大きな声で驚いた。

そんなにこのティーカップが珍しいのかしら。

確かにこれはゴルゴン星からの侵略土産としてお父様からもらった…

「迦具夜さん!授業聞いてますか!?」

あら。先生まで驚いてますわ。

「聞いていません」


そう。だって…


「わたくしはいつだって自分のやりたい事しかやりませんわ」


「あとで職員室に来なさい」


まぁ!あなたごときの分際で命令するなんて!


「ほら、先生も怒ってるし…迦具夜さん、ここはあきらめて…」

「仕方ない、あとで先生の中の認識を"書き換えて"おきますわ」

「普通にノート書きなよ」

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お嬢様、侵略のお時間です。 やぶのき @yabunoki

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