いろいろあればいいってわけじゃないんだよ、索引

実況「とうとうトータル五万文字を越えました、漢和辞典アワード2023の実況かげると」


解説「解説はたかぱしです」


実況「このアワードまだまだ続くんでしょうか……?」


解説「風任せ成り行き任せなのでよく分かりませんが、たぶん七万字ぐらいでゴールできそうな気がします」


実況「まったくあてにならない感じですね。ともかく、半ばは過ぎているわけですね」


解説「ほぼほぼ部首順の辞書のポイントは解説しましたし、五十音順の辞書は少ないので解説も少ないですし、そのあとで各辞書のアピールタイムをとって、最終的にアワード発表。まあ、あと二万字でしょう」


実況「おおよそ小説なんて当初の予定の1.5倍になるものですが。ひとまずたかぱしさんを信じましょう。それで、部首順漢和辞典の話は終わったんですか?」


解説「おおむね終わりましたが、最後にいろいろな索引を見てみたいと思います」


実況「ここまで、引きやすい漢和辞典の選び方、部首索引の引きやすい漢和辞典、音訓索引の引きやすい漢和辞典、と解説してきた流れで他の索引にも注目しようというわけですね」


解説「そうです。ちなみに、一番最初の“引きやすい漢和辞典”というのは、実は“直接部首引きするとき引きやすく感じる漢和辞典の選び方”だったりします」


実況「へー、そうだったんですね。いろいろな“引きやすい漢和辞典”がありすぎて、もはや結局どれが引きやすいのか分かりません」


解説「ま、結局は全部買って持つのが正解です」


実況「それはない。ともかく、これまで出てきた直接部首引き、部首索引、音訓索引以外の引き方から漢和辞典を選考アワードしていくわけですね」


解説「漢和辞典によって、趣向を凝らしたさまざまな索引があったりなかったりして、これもなかなか面白いですよ」


実況「なるほど、ではちょっとだけ期待することにして。まずはスタンダードな部首順漢和辞典の索引というと、なにがあるんでしょうか?」


解説「必ず備えられているのが『部首索引』『音訓索引』『総画数索引』のみっつですね。これがない部首順漢和辞典というのは、なんというか、かなり手抜きなアレです」


実況「『総画数索引』が初出ですね」


解説「漢字を総画数で探すことのできる索引で、立ち位置的には“最後の手段”ですかね」


実況「え、なぜに最後の手段なんですか? 総画数って、音訓と違ってひとつしかないし、部首のように知らないと苦労するわけでもなく、確実な探し方のような気がするんですが」


解説「そうですねえ。もちろん、好みの問題なので、いつも総画数索引で引くという人もいるでしょう。それで問題があるわけではないですが。同じ画数の漢字なんて山のようにあるので、索引の中から目当ての漢字を探すのが面倒なんですよ」


実況「うーん、面倒なのはちょっと」


解説「ほんの一部の漢字を除いて画数は一つしかないわけで、画数を数え間違えたらもう漢字を見つけるのが無理ですし」


実況「いえ、あの、待って。画数が複数ある漢字とかあるんですか……?」


解説「たとえば『臣』が6画か7画かはきのこたけのこ戦争並に意見の分かれるところです。ちなみに6画がきのこ派で7画がたけのこ派」


実況「なぜそんなことに……?」


解説「従来(康熙字典とかで)は6画の漢字とされてきたのですが、日本の偉い人が決めた書き順では7画になってるので。正直めっちゃ困ってます」


実況「どっちでもいいだろ、と言いたい。言いたいけど、ここまで何度も漢和辞典では画数が画数が画数がと画数を基準に漢字を並べてきたことを考えると……困りますね」


解説「偉い人に膝詰めしたい気分です。でもまあ、すべては○次アニメ版公式見解。多少のずれはご愛敬です」


実況「そんな総画数を使った総画数索引は、辞書によって使い勝手が違ったりするんでしょうか」


解説「音訓索引以上にないと思います。だいたいスタイルは同じです。総画数ごとに漢字を並べる、同画数の漢字は掲載順、つまり部首順に並べる、というものですね」


実況「へえ、同画数の漢字は部首順に並んでるわけですか。部首を知らないと見つけるのに苦労するということですね?」


解説「苦労するというよりか、部首を知っていた方が手間なく探せるということなんですけど。部首知ってるんだったら部首引きした方が楽じゃん……ってことになります」


実況「そうでした……。それで、総画数索引は総画数から地道に漢字を探す最後の手段なわけですね」


解説「でもでも。部首索引に嫌われ、音訓索引に敗北したとき、最後の砦の総画数索引は実に頼りになります。そして、それでもどうしても漢字が見つけられない、そんなときは」


実況「お、ここで『他の索引』の出番ですね!?」


解説「いえ、違います。そんなときは『この辞書にこの漢字は載ってないんだな』と諦めるときです!」


実況「……他の索引の出番は?」


解説「ぶっちゃけ、部首索引・音訓索引・総画数索引のみっつ以外の索引を使ったこととか……ないですね」


実況「ないの!?」


解説「『大漢和辞典』ならともかく。ハンディ漢和辞典でそこまでして漢字探したこととか、ないんですよ」


実況「いやでも、今日は『他の索引』の話ですよね?」


解説「はい。漢和辞典アワードとして改めて索引を見て、『へー、こんな索引あるんだー、すげー、おもしれー、使えるか分からんけどー』と思ったやつをご紹介します!」


実況「使えるか分からんのかい」


解説「というわけで、『他の索引』で選ぶならこの漢和辞典セレクト!」


実況「えーと、どんどんぱふぱふ~」


解説「これはガチで使える方の他の索引、『四角号碼しかくごうま索引』!」


実況「しかくごうま? ってなんですか?」


解説「四角号碼とは(以下略)です」


実況「流れるように省略されちゃってますが!?」


解説「話すと長いので知りたい方はこちら https://kakuyomu.jp/works/1177354054887256976/episodes/1177354054887260114 をご覧ください」


実況「全然分からんけど、とにかくそういう索引があるんですね?」


解説「あるんです。そしてこれは『部首索引』『音訓索引』『総画数索引』と並んで使える第四の索引です。が」


実況「『が』?」


解説「残念なことに現在出版されているハンディ漢和辞典で採用しているものが、すでにない……」


実況「ちょっと。ないものを紹介したんですか」


解説「今回エントリーしている漢和辞典の中では、すでに廃版になっている大修館『漢語林』(初版)のみ『四角号碼索引』がついています!」


実況「一応、古書では手に入るんですね」


解説「補足として、大修館書店『新漢和辞典』改訂版(1982年発行)にも別冊四角号碼索引がついてます。四角号碼索引がほしい方はぜひ探してください」


実況「1982年……これまた古い辞書ですね」


解説「大変な貴重品です。でも四角号碼があると漢和辞典を引く手段が増えるので、ハンディ漢和辞典にもつけてくれたら嬉しいなと思います」


実況「がんばれ大修館」


解説「続いて。実はこれも使えるんじゃないか系他の索引、『熟語索引』!」


実況「おお、今度のは分かりやすい。熟語で引くことができる索引ですね?」


解説「そうですそうです。簡単な『四字熟語索引』とか『成句索引』が(おまけっぽく)ついている漢和辞典はいくつかあるんですが、本格的な『熟語索引』がついているハンディ漢和辞典って意外と少ないんですね」


実況「こちらも貴重な漢和辞典と言えますね。その漢和辞典とは?」


解説「大修館『現代漢和辞典』です」


実況「それひとつだけですか?」


解説「知る限り、熟語索引のあるハンディ漢和辞典はこれだけです」


実況「すごいですねー。というか、漢和辞典の引きやすさとか索引の話になってから、やたら大修館が登場しますね」


解説「さすが裏ボス」


実況「もはや裏でもなんでもない気がします」


解説「堂々たる漢和辞典界のボスと言えるでしょう」


実況「言われても大修館書店さんは特に嬉しくともなんともないでしょうが」


解説「さて、みっつめは、使うかどうかは分かんないけどいろいろな索引を一番揃えている漢和辞典です」


実況「いろいろな索引とは?」


解説「『語法索引』『故事成語・成句索引』『人名・書名索引』『同訓異義字索引』が1冊のハンディ漢和に。それが旺文社『漢字典』です」


実況「またこれは、たくさん揃えましたね」


解説「これをハンディへコンパクトにまとめるというのは、なかなかすごいことだと思います。使うかどうかは分かんないですが」


実況「使うとしたらどういう人でしょうか」


解説「どうなんでしょうね。文法や故事成語、人名書名なんかなので。高校生や大学生の漢文初学者向けかもしれないですね」


実況「ちなみに、エントリーしている『漢字典』は第二版です。最新の第三版の索引は不明です。ご了承ください」


解説「最後は、なんじゃこの索引『植物名・動物名索引』!」


実況「なんじゃこのって。植物名や動物名で引ける索引、ですよね」


解説「そうなんですけど。本来カタカナ表記な動物を漢字で書くとこうなるぞっていう一覧になってるんで。索引として使うと言うよりは、カタカナ動植物を漢字で書きたいときに使うやつになってます、これ」


実況「まあ……確かに……索引じゃあないですね」


解説「和風ファンタジーとか中華ファンタジー書きたい創作者には便利かと思うのでおすすめですが」


実況「あれ、ちょっと前にも創作者におすすめの漢和辞典、ありましたよね? 確か」


解説「学研『漢字源』です」


実況「そうそう、それそれ。『しりのあな』の『漢字源』。で、今回のカタカナ動植物名一覧は」


解説「学研『漢字源』です」


実況「やはり」


解説「おかしいです……『漢字源』といえばハンディ漢和辞典界のハイエンドクラス最上級辞書のはずなのに……評価すればするほどネタ漢和辞典になっていく……不思議」


実況「たかぱしさん、白目むかないで!」


解説「まあ、いろいろな索引があれば何かのときに使えるかもしれないので。でも。なんでもかんでもあればいいってもんでもないですよねえ」


実況「さすがに索引がついていて邪魔になることはないとは思いますが」


解説「それでも、無駄な索引は不要! という方もいるかと思います。そんな方には三省堂の漢和辞典がおすすめです。基本『部首索引』『音訓索引』『総画数索引』しかついてません」


実況「潔いですね」


解説「某辞書にも見倣ってほしいです。『引きやすい工夫が満載!』のキャッチコピーに『満載しすぎて引きづらいわ、逆に』と突っ込みたいです」


実況「某辞書って、誰のことですかね」


解説「さて。誰のことでしょうね」


実況「というところで、本日の漢和辞典アワードはお時間です」


解説「そしていよいよ次回は五十音順漢和辞典の登場――!?」


実況「ほどほどにご期待ください~。なお、予告は予定ですので以下略」

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