空みがく

優木ごまヲ

空みがく

ふるさとは山国なれば夏の海


島々に伝わる神輿ひとつずつ


船着いてとんびの狙う麦茶かな


自転車のかごになんでも梅雨あがる


打水を終えたふりしているところ


ハイビスカスお勝手口を開けはなち


この土地の言葉真似たり青ぶどう


みんみんと蝉知らぬ耳あやしつつ


テーブルに置く手のひらや夏深し


静やかな西瓜の軌道変わるとき


ゴチックでHUG MEとある残暑かな


水澄めば見えなくなってゆくものも


数珠玉をつないだ針と糸のこと


ひたすらに燕の帰る空みがく


冷ゆるともなお小包のふっくらと


人柄にふれて芋がらにも触れて


こおろぎを方位磁針とする夕べ


せっけんはいま下ろしたて上り月


露寒にかけ流しなる言葉あり


星飛んでますます黒き土鍋かな

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

空みがく 優木ごまヲ @yukigomao

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ