第26話 紅い空

 画面に映っている少女がそう言った途端場の空気が凍りつく。何を言っているのかがまったくもって理解することができない。傀儡政権、打倒、取り戻すなどといった様々な言葉単語。

 

 私はツキさんのほうを見ると偶然にも目があってしまう。その表情はどこか暗く、何かを悟っていたような表情だった。まるで今このことが起きるのを前々から知っていたかのようで。


 「我々は敵国に寝返り偉大なる帝国を壊し、見捨てた愚かな政治家達とは違う。私たちは偉大な帝国人だ。だからこそ、我々は敵国の言いなりになっている傀儡政権を打倒し偉大なる帝国を取り戻さないとけない」


 少女の堂々とした雰囲気に圧倒される。瞳に声色、そして雰囲気までもが熱を帯びている。


 「我々はこれより武力をもって傀儡政権を打倒する」


 端末の画面から少女が消える。再びこの空間静寂が訪れ何とも言えない空気が広がっている。


 私と同じくらいの年の子がまるで狂ったかのようなあの表情が印象深く脳裏に焼き付いている。とても忘れられそうにはないあの言動に表情、そして行動に呆然とすることしか出来ない。


 「これからどうするの?あのままだときっとこの生活も終わるよ」


 「ど、どうして・・・?」


 「だってこの学校、国がほとんど関与してるから。銃とか兵器とか色々」


 ツキさんは落ち着いているかのように見えるがどこか焦っているようなそんな感じがするのは気の所為なのだろうか。私にはわからない。でも、このまま放置していいという訳ではないのはわかる。


 「止めに行ってきます」


 「あなたはそれでいいの・・・?この国はとてもじゃないけど独立国とはいえな

 い」


 ツキさんは冷静とはいえないよう表情になっている。先程までの表情は何だったのだろうか。でも、私は決めている。


 この国は私が壊す♡


 「この国を、政府を壊すのは私がやらないと♡」


 「動く的ちゃん・・・?」


 呆気に取られているツキさんを気にもせずあの少女たちの向かっている先へと走り出す。あの映像だけじゃ正直わからないが政権を転覆させようとしてるのだからきっとあの場所だろう。


 この国の首都にある国会・・・きっと国会議事堂に向かっている、いやあの時既に国会議事堂付近の場所で待機していたと思う。だってこの学校から結構距離が離れた場所にあるのだから。少なくとも三十分はかかる。


 だけどそんなの私には関係のないこと。だって私には・・・これがあるのだから。


 「紅い空」


 一瞬世界が暗闇に包まれ次の瞬間空の色が一瞬にして紅色に変わる。それに加え、太陽がなくその代わりに空には満月が浮かんでいる。


 私の身体の奥から力が溢れ出るのを感じる。感じるたびに自然と笑みがこぼれる。あの少女以上に狂っていて禍々しいがそこには見る人を狂わせるかのような美しさがある。








 今我々は国会議事堂前で国の駒たちと銃撃戦を繰り広げている。ある程度我々の反乱は予測されているとは思ってはいたがそれにしても駒の数が多い。対策はしてはいるが案外苦戦を強いられている。だけども我々は止まるわけにはいかない。


 私は駒に向かって銃弾を放つ。放った銃弾は命中するがいかんせん数が多いので一向に減る気配がしない。それどころか先程よりも数が増えている。


 きりがないと感じ始めたので私は己のリミッターを外そうとした時だった。急に世界が暗闇に包まれた。両者ともに銃撃が止まり静寂が訪れたが、気づけば再び銃撃先が再開された。そんな時と同時に世界が暗闇から開放されていた。その代わりに空色は紅色で満月が出ている。


 まるで吸血鬼が現れたみたいだった。


 

 

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陰な私はいつの間にか戦場に送られていました 宮乃なの @yumanini

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