短歌を二十首見事に連ねられております。根幹となるのは、雨。降り方も様々です。中でも、カビが生えたまでの描写にどきりといたしました。私も黴の類いはお付き合いがありましたが、結婚後は食パンを冷蔵庫にしまう癖がつき、暫く振りの一首でした。これも二十首ある内のひとつです。細やかな一つ一つとそして連なりを鑑みて、読みやすく心理的に深い所もあり、大変楽しませていただきました。是非、ご一読ください。
失恋の痛手が、梅雨の時期の情景に重ねて丁寧に詠まれています。パンにカビを生やしてしまう程のやさぐれた気持ち。思い出の品を雨捨てきれず雨に晒したいという自暴自棄な気持ち。しかし雨は悲しい心に容赦なく降り注ぐだけではなく、癒しにもなる。雨の後には天使の梯子が現れ虹も出る。二十首の構成が巧みで、まるで短編小説を読んでいるよう。悲しみから再び希望に向かって進み出すまでの心の軌跡が読み取れ、つらくもどこか清々しい連作となっています。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(1191文字)