第108話 黒騎士、援軍を送る

「庵!」


 目の前で紅さんの雰囲気が張り詰めるのが解った。


 同時に前方に開いたゲートが帯電を始める。


 バチバチと青白いスパークが弾け、縦に割れていた線が横に開く。ゲート開放の瞬間だ。


 その場にいたほぼ全ての冒険者たちが身構える。


 すでに武器を構える者もいた。


 そして、


「グルアアアア!」


 ゲートの中から大量のモンスターが姿を見せる。


 ゴブリン。オーク。オーガ。ウルフ。鳥型のモンスター。昆虫。


 様々な姿・形をしているモンスターが一斉に冒険者を襲い始めた。


 もちろん冒険者たちは攻撃を開始する。


 けたたましい音が響き周囲では戦闘が始まった。




「チッ! 本当にシロのことでも待ってたっていうの?」


 魔力を放出する紅さん。炎をまとって一直線上の敵をまとめて吹き飛ばした。


 俺も、


「クロ、準備はいいね?」


 と背後にいる少女へ訊ねる。


 彼女は即答した。


「当然」


 直後、黒い魔力が周囲へ放たれた。


 味方も、敵すらもその魔力の圧に屈する。動きがぴたりと止まりその間に、


「黒き茨を受けなさい」


 クロがくいっと手の先を上に向ける。


 地面を伝って広がった俺の魔力から黒い茨が飛び出し、周囲のモンスターたちを一瞬にして貫き絡めとった。


「ひゅー。さすが庵。やっぱ頼りになるわね!」


「生き残った奴はお任せします。好きに攻撃してください」


「了解了解っと!」


 紅さんが地面を蹴って飛び出した。


 次々にモンスターが紅さんや他の冒険者たちに狩られていく。


 その様子を一瞥してから後ろを振り向く。


「シロ」


「なに」


「大丈夫かなって。俺とクロがいるけど狙いが君である可能性は高い」


 相手はまだシロが君主の一部を持っていると思っているかもしれない。


 だから俺は彼女を全力で守るしそれがクロとの約束だ。


 本当はもっと安全な場所に送りたかったが、皮肉なことに最前線——俺のそばが一番安全っていうね。




「平気。二人がいるからわたしに恐怖はない」


「……そっか。それならいいんだ」


 シロは強い子だ。余計な心配だったね。


 そう思って視線を正面に戻すと、


「グオオオオオオオ!」


 ゲートから十メートルはある巨人が複数体現れた。


 これまでに見たことないモンスターだ。


「あれは……巨人族」


「巨人族?」


「エルフみたいな亜人種のことよ。身体能力がとにかく高い。けど頭はパー」


「シンプルだね」


 実に解りやすい種族だ。


 けど、たしかにあの身体から繰り出される攻撃は脅威だろう。ただ歩くだけで地面が揺れる。


「なんだか面白そうな敵が出てきたわね! 燃やしてやるわ!」


 遠くでは紅さんがそう叫びながら巨人へと突っ込んでいった。


 向こうは大丈夫そうだね。




 ——プルル。プルル。


「ん? 電話?」


 ポケットが急に震えだした。


 スマホを取り出すと、画面には天照ギルドの名前が。


 通話ボタンをタップする。


「もしもし」


『あ、よかったあ……ギルドマスターが電話に出ないから心配したんですよ』


「紅さんなら戦闘中ですよ。楽しそうです」


『でしょうね……ですが大事なお知らせが』


「お知らせ?」


『東京都内に開いた全てのゲートからモンスターが。現在、東京全域で戦いが起こっています!』


「……マジか」


 やっぱりタイミングがよすぎる。


 相手はなにを狙っているのか。それとも無差別に攻撃してるのか。


 理由は解らないがこの状況を放置もできないな。


「解りました。東京全域に応援を送ります。すべてのゲートを攻略してみましょう」


『……え!? な、なにを……』


 返事は返さずひとまず電話を切った。


 後ろにいるクロに、


「クロ、話は?」


「聞いてたわ。わたしの出番ね」


「そういうこと。頼んでもいいかい?」


「任せて。始めるわ」


 すっとクロが右手を空にかかげる。


 かざし、俺の魔力を引き出して魔法を発動した。


 地面が紫色に輝く。


「——出でよ冥界にいる我が眷属たち!」


 死霊系黒魔法。


 京都の戦いでクロが使った魔法だ。


 地面から異形のモンスターや人間が現れる。


「魔力消費は激しいけど全力でいくわよ?」


「ああ。他のゲートを一気に攻略する」


 俺のそばから放たれた大量の眷属たちが、周囲に散らばっていく。


 おのおのが細かくクロに指示を出されながらモンスターを討伐していく。


 これなら俺はこの場所から離れずに済むし、たとえやられてもデメリットはない。


 その上で援軍まで送れる素晴らしい魔法だ。


 再び電話をする。今度はこちらからギルドに。


「もしもし」


『あ、急に電話を切らないでくださいよ!』


「すみません。それより、すべての冒険者たちに通達してください。これから皆さんのもとに黒いモンスターや人間が向かってくるって。それは仲間だから極力攻撃しないようにと」


『……へあ!?』


 電話口で職員の女性がおかしな声を出す。


 だが、俺の再三に及ぶ説明のおかげでなんとか納得した……のか?


 とにかく、現場にいる冒険者たちへ眷属の話が通達されていった。




———————————

あとがき。


作者、風邪を引きダウン……

苦しいですが頑張って更新します。できなかった時は察してください←


よかったら反面教師の新作、

『悪役貴族の末っ子に転生した俺が謎のチュートリアルとともに最強を目指す(割愛)』

を見て『★★★』などで応援してくれると、体調がよくなるかも⁉︎(バカ言ってないで休め)

でも面白いですよ!

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ダンジョン配信者を助けたら盛大にバズった黒騎士、実は正反対の白魔法を極めようとしているらしいです 反面教師@6シリーズ書籍化予定! @hanmenkyousi

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