ノイズ¬キャンセリング
花野井あす
ノイズ¬キャンセリング
その
殻に
四方八方から押し寄せる波は、時には雷の如く烈しく、時には小鳥の囀りのように穏やかになる。
殻を
波は寄っては離れ、そしてまた寄ってくる。
右から轟いだと思えば左から
上から凪いだと思えば下から
押し寄せては引き、そしてまた押し寄せる。
くすくす
ひそひそ
殻の表面で波紋は共鳴する。
くすくす
ひそひそ
空気で反響し、外皮で反復し、内部で反芻される。
故に波はより一層重なり、より複雑になり、混沌の渦となる。
波の渦に逼迫され、抜け口に栓をされて膨らんだ
脈打つような閉塞感を抜け出そうにも、手足のないその身をくねらせても、もう何処へも行けない。
くすくす
ひそひそ
くすくす
ひそひそ
木霊する波紋はどんどん、どんどん蝸牛を殻の奥深くへと追い込んでゆく。
くすくす
ひそひそ
くすくす
ひそひそ
蝸牛はその肥大した軀を殻で押さえつけられながら何度も、何度もその身を打ち付ける。
いたい
くるしい
もう、いやだ
蝸牛は自ら塩を飲んだ。
どんどん、どんどんその身は縮んでゆく。
これでもう、嫌なものから耳を閉ざせるであろう。
ノイズ¬キャンセリング 花野井あす @asu_hana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます