第1回カクヨム二十首連作部門ノ2

名無しのオプ=アート

ナツノカゼ

真夏日の 午後四時の風 冷たくて 恨めしくなる 小さな窓に


ほとぼりが さめない部屋の 窓にたち 金魚のように 風を吸いこむ


部屋を渡る 風に流され 水を飲む 汗で重たい 上着が熱い


この身にも 夏の日差しに あぶられた コンクリートの 余熱が残る


ほとぼりが のこる部屋から 風をみる 窓をへだてて ちがう世界だ


まだ高い と影と風 北向きの 額縁の窓 夏を映して


夏を背に 肩から上は 北風が へその下から 扇風機吹く


北風に のった蝉の音 乙なもの 遠いマンション へだてて聞ゆ


ホーキング 放射終えたか 部屋の隅 その薄暗さ 涼しげになり


気がつけば 蝉の音は止み 心太ところてん 押しこむように 北風入る


落ちてゆく 水母くらげのような 服を脱ぎ 寿留女するめのような シャツに着替える


南向き 玄関を開け あふれだす 光へ背中 押していく風


アスファルト その蓄えた 熱量で コンクリの家 溶かすつもりか


打ち水は まだ早すぎる おきなす 死に水になる 打ち首にせよ


冷やし飴 北風受けて 飲むアイス 二度買い物す 心太こころぶと


太くなれ 身も心も 太くなれ 星飛雄馬ほしひゅうまの 姉も見守る


北風の 中を道路に あぶられる 涼しいはずが 止まらない汗


知らぬ間に 巨人の星に 着いたとは 陽炎の中 うごめく人ら


乾物を 戻す蒸し器の 中にいる シャツが命を 宿やどりつく


夏の熱 残して沈み ゆく夕陽 その上面うわつらを 流れゆく風


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

第1回カクヨム二十首連作部門ノ2 名無しのオプ=アート @nameless_op_art

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ