曼珠沙華
古城えつ
捨てられた仔猫みたいに泣く僕を 拭って閉じた82ページ
うちわ風 子どもを包む子守唄 夜風とまぜて夢にいざなう
保育園我が子をハグし頬寄せる今日は何して遊んでいたの?
ばあちゃんに来るなり秒で「すぐ帰れ」孫は勘付く教師の雰囲気
子の頬に父の両手は温かく ヒックヒックに上下し膨らむ
猫背なら人より多く気がついて草木の芽吹き見てきただろう
砂に書く正の字2つ踏まれ見て 焦点ぼやけ友しぶきと化す
夕暮れに待ちわびた土さらさらら 一刻にも似た白根の雫
「腹減った」「手伝ったるで」子供たち 親子で作るいつもの夕餉
夕食の青菜に虫食い無農薬 青虫浮かぶボウルの上澄み
「おかえり」と額縁越しに声かけて駆け上がる腕一段とばし
聞こえたよ天袋降り待つ戸口 君にすりすり「ただいま」の声
戸の向こう待っているかな?今日もまた
「ただいま」猫よ友は君だけ
5回に1回ぶってくるパンチ嫌いじゃないね針金しっぽ
虹の橋 渡る世間に鬼は無し「歌えバンバン」遠吠えの如く
ひっそりと緑青覆うペンダント剥がして戻りたい懐かしさ
介添えの重さが時に仇となり 払い除けたい衝動抑え
夜勤明け座って寝たい各停で家で寝るより気持ちいいわけ
本能と自我のはざまで生きてきてセミリタイアがよぎるこの頃
この先はゲームのように生きようと想わせた師はほかでもない猫
死んだならガンジス川に流してよ 次の次は曼珠沙華になるから
曼珠沙華 古城えつ @uesakura
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