夏の夜、ちょっと涼んでいきませんか?

鈴鹿茉莉

ホラー短歌連作二十首

玄関の覗き窓から射す光フッ、と急に闇に沈む



あの襖開けない方がいいですよたまに魚や老婆がいます



気のせい、と言い聞かせつつ念入りに点検をするベッドの下とか



寝ない子を連れ出す深夜暗がりを指差し笑うお祭りだねと



この人形気味が悪くてゴミ捨て場その奥さん今日葬儀みたいよ



アーカムに行くと言ってた彼のインスタひとこと。「見つけた」



怪談の『その後の話』蒐集家、行方不明の知らせを受ける



呪いとは魔女のシロップみたいなもの薄めてみたり煮詰めてみたり



お題、ホラー連作二十首詠み終えたら何かが起きてしまうのでしょうか



あの頃はどの家庭にもありましたラベルのないビデオテープが



ホムセンでゾンビ対策真剣に妄想する夏日本の夏



知り合いのまた知り合いに聞いた話こうして呪いは伝染してく



飲み会で嫌いなあの子のドリンクの色の異常を黙って見てる



魔除けだよ笑顔でくれた友達の目の奥全然笑ってないよ



UFOを見た、取り憑かれた様に先輩は毎日同じ山に通う



うちの職場怪談とかってあるんですか?きっとあなたもすぐに分かるよ



大島てるチェックしたブラウザを閉じる瞬間過ぎった何か



近づいたり遠ざかったりするけれど結局怪異はすぐそこにある



結局さぁ人が一番怖いよねそういう彼女は人間だろうか



二十首め詠み終えた時どこからか線香の匂いしてきませんか?




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夏の夜、ちょっと涼んでいきませんか? 鈴鹿茉莉 @sugarmarmalade

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