第103話 面会と交渉

「そこで、神月さんには、幾つか頼みごとがあるんだがいいかな?」


「内容によりますけど…………。」


総理からの頼みごとって何かめっちゃ怖いんだけど。っと思っていると総理が


「その前に、君の相棒というのかな?見せてはもらえないだろうか?」


「相棒?コイツですが?」


と、哮天犬の背中を撫でる。


「その子ではなくて、スライムとか虎とか熊みたいなのが居ると報告があるんだが!」


「そっちですか。いいですよ。」


俺が、そう言うとグラム達が、指輪から出てくる。


「ほら、自己紹介しろ!」


「ハ~イなの!グラムはグラムって言うの!」


「「「しゃ、喋った!!!」」」


どうやらモンスターが喋ったことに驚愕しているようであるが、そこは無視して自己紹介の続きをする。


「俺は、スノウだぞ!」


「ウルなのです!よろしくなのです!」


こうして、自己紹介が終わると


「神月さん。触ってもいいか?」


「総理!流石にそれは、危険です。」


御堂が総理を制止するが、


「大丈夫ですよ。グラム!」


そう言うとグラムは総理の膝の上にダイブする。すると、総理はグラムを撫で始めた。


「おおっ、このプルンプルンとした触り心地たまらん。癖になりそうだ。」


それを見ていた御堂と三枝は羨ましそうな目で総理とグラムを見つめている。なので、御堂にはスノウを、三枝にはウルを触ってみないかと提案してみると了承した。

御堂は、スノウの毛並みにうっとりである。


「最高級の毛皮でもここまでのものはない。」


と、嬉しそうにスノウを撫でている。


そして、三枝もまた、ウルを撫でており、


「まるで、人形の熊みたい!」


と、嬉しそうである。


そして、お楽しみの時間はすぐに終了としてもらい話の続きを始める。


「まず、1つ目のたのみごとだが、今後、このような件、国は、スタンピードと読んでいるが、スタンピードが起こった際は、モンスターの討伐を頼みたい。」


「ただという訳じゃないでしょうね?」


「無論だ。まずは、討伐完了すれば1回につき5000万円用意する。」


「5000万??いいんですか?」


「構わん!もし、モンスターが溢れて被害が出てみろ、まずは、その被害の再建に金がかかるし、支持率も下がり、政権も危うくなる。下手をすれば、国がなくなるかもしれんから、それに比べたら5000万なんて安いものだ。だが、その代わり魔石等のドロップ品は積極的に売ってほしい。」


「別に構いませんよ。でも、俺の方でも少しはストックしておきたいんですが、いいですか?」


「構わん。そこは、自由にしてもらっていいぞ。あと、スタンピードが起こる土地まで行ってもらうんだからそこまでの費用と滞在費なんかもこちらで持たせて貰う。何しろ、全国で300位のダンジョンがあるからな。」


「そんなに至れり尽くせりでいいんですか?」


「いや、儂は報酬が少なすぎると思うぞ。」


「じいさん。そうなのか?」


「うむ。儂なら10億出しても安いと思うぞ。何しろ、神月がドロップしたアイテムを国が買い取るんだろ?それだけでも相当の利益が出るはずだ。なのに5000万は安すぎると思うぞ。」


「…………、わかった。では、2億だ。これ以上は無理だ。」


「っと言っているが、どうする?」


「俺は、5000万でも良かったけど、2億くれるって言うんならそっちの方でいいかな!」


「わかった。…………あと、もう1つ頼みたいことがあるんだが。」


「何でしょう?」


「実は、スタンピードに対応出来る人材を育成しようと思うのだが、何人か早急に育てられないか?」


「つまり、パワーレベリングをしろと?」


「「「「パワーレベリング??」」」」


「つまり、俺が、何人か引き連れて行って、俺や従魔たちが、連れていった奴が倒せないような相手を弱らせて、その相手を倒して経験値を得て強くなる。って言う方法です。」


「そんなことが出来るのか?」


「出来ますけど、これには問題も在るんですよ!」


「「「「問題???」」」」


「1つ目は、レベルだけ上がって技能が全く追い付いていないこと。2つ目は、簡単に強くなった奴は、勘違いする奴や、自分の力が急に強くなったことに酔っちゃうような馬鹿はやめて下さいね。あとは、素性だけはきちんとした人にしてくださいね。」


「「素性?」」


「何故、素性なんだね?」


どうやら、総理も御堂も三枝もピンとは来ていなかった。


「本堂、分からんのか?例えば、他国のスパイとかだったらこちらの情報が駄々漏れになる。それに、神月に強くしてもらった奴が他国に行くなんて最悪だからな。」


「別に他国に行くのはいいのではないか?」


「はぁ~本当に何もわかってないのか?…………、ダンジョンは軍事利用出来ると言うことだ。まずは、人自体を強く出来ること。そして、ダンジョンからのドロップ品。」


「そういうことね。強くなれば既存の武器は効果を持たなくなる。それに、ダンジョンから得られる物を使って人を強化することが出来る。強い者がいるだけで他国には脅威となる。また、逆にその人が他国に行けば自国が脅威に晒されるってことね。…………迂闊だったわ。こんな簡単なことに今さら気が付くなんて!」


と、三枝は1人反省をする。


「なる程な。助言感謝する。一刻も早く対処に当たろう。それと、神月さん。今の話を聞いて人選をしたいので少し時間をもらえないか?」


「いいですよ。別に俺は、暇人ですから。」


「それは、助かる。これからは、御堂の方から連絡を入れるようにする。御堂、頼むぞ!」


「総理、わかりました。神月さん、これからよろしくお願いしますね。」


そう言うと御堂が手を出し握手を求めてくるので、俺はそれに応じる。


「こちらこそ!お願いしますね。」


「それと、これは重要な事だが、神月さんは他国に行くことはないよな?」


「ええ、俺は、この国が気に入ってますから他国に行くことはないですね。ただ、旅行とかなら行ってみたいと思いますけどね。」


「そうか。それを聞いて安心した。それと、最後にもう1つだけ質問をしてもいいかな?」


「答えられる範囲であればいいですよ。」


「では、君の強さの秘密を教えてもらえるかな?」


俺は、どうしようかと悩む。その理由としては、俺は国に言っていないことがあるからだ。それは、自宅に出来たダンジョンの事である。もし、バレる様なことがあらば、俺は、犯罪者になってしまう。でも、ここで話しておけば後々面倒にならずにすむから教えとこうと思う。もし、捕まるようならどこか他所の国にでも行けばいいわけだし、


「えっーと、実は言いにくい事が1つありまして…………。」


「何だ。何でもいいから言ってみろ!」


俺が、言おうとしていると玄羅が、


「神月…………お前、ダンジョンの在りかを知っているだろう?しかも、国に言っていないな!しかも、国からダンジョンが一般開放されるまでの約4ヶ月間、ずっとダンジョンに通ってレベルを上げていたんじゃないか?」


「…………ぐっ、どうしてそれを!」


「簡単な事だが。お前の強さは4月からダンジョンに行ってる奴等よりも明らかに強い。いや、強すぎる。だが、ダンジョン出現時からダンジョンに入っているようなら、あの強さに納得できるような気がする。」


すると、総理が


「1つだけ確認したいことがある。」


「何でしょう?」


「もし、そのダンジョンが今回の様なスタンピードが起こった場合、対処は出来るのか?」


「その当たりは大丈夫だと思いますよ。」


俺が、居なくてもテイムした猫や犬達(今は進化しているが)に任せておけば問題はないだろう。


「神月さん。それは、今貴方が遠くに居るこの状況でも同じことが言えるんですか?」


御堂さんがそう質問してくる。そして、4人の視線が俺に集中する。


「大丈夫ですよ。」


「あらあら、随分簡単に言ってくれるわね。その根拠を教えてもらえるかしら?」


今度は三枝さんが聞いてくる。


「俺の従魔達が毎日のように探索してますから異変には直ぐに気が付けるでしょうし、アイツら結構強いので大丈夫ですよ。それに、スタンピードしてくるモンスターの経験値が美味しい事を知ると喜んでやると思いますよ。」


「そっ、そうなの。」


総理、御堂さん、三枝さんは少し顔を強張らせる。


「神月。従魔というのは、そいつらてだけではないのか?」


「んっ?俺は、従魔がコイツらだけだと言った覚えは無いけど。」


「うむ、確かに言われてないな。それで、そいつらはどんなモンスターなんだ?」


「ああ、実はモンスターじゃないんだよ。」


「じゃあ、何なんだ?」


「拾ってきた仔犬と魚を捌いている時に集まって来た猫や犬に餌をあげたらテイム出来た。それで、そいつらに自給自足させるために鍛えていたら強くなってたな。それで、そいつらが外に散歩に出掛けると、近所の野良犬や野良猫を連れて来たり、他にも蛇やら狐やら連れてくるんだよ。まぁ、餌をやったら喜んでテイムされてくれたけどね。」


「ちょっといいかしら?」


三枝さんが手を上げて質問をする。


「その自給自足と言うのはどう言うことなの?」


「そのダンジョンは、5階層ままではゴブリン系の魔物しか出てこないんだけど、6階層になると森と草原になるんですよ。草原には牛系と豚系の、森には猪系のモンスターが居て、倒すと肉をドロップするんですよ。それに、良く見れば野菜なんてのも成ってたりするんで食べることには困らないんですよ。ほら、野良だと餌を探すのも大変じゃないですか!あと、下の階層に行く程、モンスターは強くなるけどその分味も良くなることを教えると、皆強くなって下の階層に行きたくて仕方ないらしんですよね。今のところ、11階層からはオークが出てきて、コイツらも肉をドロップして、16階層からはミノタウロスが出てきてコイツらも肉をドロップします。そして、21階層からは、一面海で海中に入らないと行けないんてすけど、水中なのに呼吸が出来るんですよね。各階層には色んな海の幸が有ることを教えてやると、みんな張り切ってレベル上げに励んでますよ!」


っと、ここまで、饒舌に話しすぎてしまった。4人全員の目が点になっている。すると、総理がいち早く正気に戻り、


「はぁ~!スタンピードが起こっても対処が出来ることだけ確認できれば問題が無かったのに、色々と爆弾発言を入れおって!」


「あっ、もう1つ爆弾発言を入れるなら、アイツらは色々な進化を遂げてましたよ。」


「「「「進化???」」」」


「そう、進化。」


すると、総理が頭を振る。


「はぁ~、もうわかった。ダンジョンを黙っていた件は不問に処す。ただし、条件として、スタンピードは自分達で解決すること。他人にはダンジョンの存在を知られないこと。勿論、ここに居る私を含めた4人は口外を禁じる。そして、従魔の管理を行うこと。もし、従魔が問題を起こしたら責任は取ってもらう。以上だ!」


「わかりました。御配慮ありがとうございます。」


俺は立ち上がり、総理に頭を下げる。

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自由人になる~ダンジョンが出現した世界で~ @kyo2450

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