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花野井あす
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旅人は一人、崖の前にいた
左右は何もなく――
崖の底は何も見えない
川が流れているかもしれぬし、そうでないかもしれない
木々が生い茂っているかもしれぬし、そうでないかもしれない
然程深さはないかもしれぬし、そうでないかもしれない
刹那とも言える時の中、旅人は迷った
此処で立ち止まるか
此処で諦めるか
私の旅は、此処で仕舞いか
元に戻ることは出来ない
他の道を選ぶことも出来ない
旅人は考える
時間はない
左右は壁
後ろには戻れない、進めない
此処は賭けに出るか
運が良ければ
川が流れていれば
木々が生い茂っていれば
崖が浅ければ
若しかすれば前に進めるかもしれない
若しかすれば旅が続くかもしれない
旅人は足を踏み出した
結果はどうあれ
旅人の旅は続く
0/1 花野井あす @asu_hana
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