架空の恋

朽葉陽々

1話目

先生に校則違反を指示されたあの子は黒が似合わなかった

コロッケがまだふすふすと泡を吹くその間だけ君と居られる

坂道を登る途中で振り向いたあなたの影だけ触れた気がして

あだ名だけ脳裏に響く午前二時きっとこっちがほんとのなまえ

夕焼けに見惚れる君の後ろ側虹が二重に架かってたのに

いつまでもあなたの姿見えぬまま罫線の間薄汚れてく

「あのね」ってあなたに伝えたいことがイニシャルばかり並んで光る


絶対に叶わない筈だったから嬉しいけど嬉しいから困る


「好きになって」なんて贅沢言いませんだからお願い、どうか愛して

あなたがドラゴンになる夢を見たどうせならないから見れる夢


夜、車中、眠るあなたの唇にひときわ黒い影がかかった

血飛沫より素敵なものが煌めくのあなたが私を撃ち抜いたなら

今じゃなきゃ貴方が貴方の命ごときらいできらいできらいできらい

布団じゃあ蛹の代わりにならないね君とふたりで不完全変態


いつの間に触れた炎でできた傷 その罅割れであなたと分かる


遠く遠く消えてしまった君なのか生まれたばかりの白色矮星

伝う涙拭われなくて気付いたの「君は世界の中心だった!」

烏瓜 火を灯すまで きっとザネリはカンパネルラが好きだった

どの愛も印刷するのはきみじゃない グーテンベルク、今どこにいる?



白黒の架空の恋で歌を詠むあの子の頬だけ色づいていた

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架空の恋 朽葉陽々 @Akiyo19Kuchiha31

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