三日後の誘惑

壱単位

三日後の誘惑


 わかってる。


 あたしは、我慢がたりない。


 いっつもそう。ちゃんと手をかければ、佳いものになるってわかってるけど。


 前回も、そのまえも、いっつも先生に怒られて。


 だって、だって。待ちきれないんだもん。


 ……こら、また君は、そうやってたくさんの餌をあげてしまう。ちゃんと分量は教えましたよね。いちにち三回、ほら、この量を、まんべんなく、みなに行き渡るように。


 わかってます、知ってます、教科書でもちゃんと勉強しました。あたし、この教科の点数、悪くないと思うんです!


 じゃあ、ほら。先生のいうとおりに、お世話してあげて。ほら、みんな、先生のほうに寄ってくる。ちゃあんと、決まりどおりにすれば、こんなにみんな懐くんだよ。


 うう。そうですね。わかりました……ほら、温度も適正にしておいたよ。みんな、あたしのほうにも寄ってきて……。


 ……先生、いっちゃったな。


 んん、でも、やっぱり待ちきれないよお。はやく結果が知りたいじゃない。ほかの子たちもみんな、すっごい素敵なできあがりだったし。あたしだって、あたしだって、やればできるんだから!


 ……このおくすり、いれちゃおう、かな。


 ふふ。みんな、寄ってくる、寄ってくる。


 かわいいなあ。どう? 気に入ってくれた?


 ……あれ? なんか、へんだ。


 ……だめだよ! ともぐいしたら! なんでそんなにみんな、凶暴なかんじになってるの。ほら、ほら、ごはんもたくさん入れておいたから。ね、みんな、仲良く。


 ……。


 だめ。とまらない。


 あああ。また、やっちゃった。絶対、怒られる。ものすごうく。


 ……もう、怒られる前にこわしちゃおうかな。


 なんで言葉と知恵をいれると、だめになっちゃうのかなあ。


 教科書には、自然にまかせなさいって書いてあるけど、待っていられないじゃない。自然におおきくなるのなんて。


 また、やりなおしだなあ……。


 今回は三日しか、保たなかったよ……。


 あ、君たちには三千億年くらいにあたるかなあ。ちょっと意味わからないとおもうけど、ごめんね。あたしたちの都合で、とっかえひっかえで。


 うまくいかないなあ。


 あたしの宇宙。





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