獅子

キョロキョロと好奇心で目を輝かせるソラとそれを愛おしさを隠さずに見つめるカイ。そしてその保護者としている吸血鬼の俺。そんな怪しさしかない俺達を門番が止めるのは当然で、だからこそ招待状を見せた瞬間に案内し始めたことに驚きを隠せないでいた。


「おい」

「はい、何でしょうか?」


だからか、少し好奇心が疼いたのは。浮かぶ笑みを隠さずに男へ問いかける。


「お前の名は?」

「レオン・ファーレです」


男は何一つ迷わず名を名乗る。そして微かに口角を上げた。それがなんだか薄気味悪い。


「…なんだよ」

「いえ、あの方の仰った通りだと思いまして」


男は誇らしそうに笑う。男の言うあの方の心当たりはナッチしか思いつかないが…ナッチはどうでもいい奴に忠告なんてするだろうか。


「ねぇね、そ…ぼくたちのお名前は分かる?」


コテリと首を傾げながらソラが問いかける。男はしゃがみソラと視線を合わせると優しげな笑みを浮かべて口を開く。


「貴方はソラ・シュレイツ様、大人の方がゼロ・シュレイツ様、そしてそちらのお方がカイ・ク」

「ボクはカイです。その名はもうボクの名ではありません」


少し高揚しながらもカイの名前を口にしようとした男は拒絶された事に信じられないような顔をする。けれど一つ大きな深呼吸をすると悲しそうな、けれど柔らかい笑みを浮かべた。


「そ…うでしたか。申し訳ありません。…それで、どうでしたでしょうか」

「えへへ、大正解!ねぇね、何で知ってるの?」

「それはあの方から皆様のお話を聞いていたからです」


そう告げ男はまた立ち上がり案内を再開する。


「カイ様、ソラ様、ゼロ様、ようこそいらっしゃいました。本日は誠にありがとうございます」


男はこちらに視線を向けず礼を言う。そして大きな扉の前に立つと開け、と魔力を込めて口にしそれに呼応するようにゆっくり扉が開かれていく。


「ここから先は王の御前、どうか、王の、我等の願いを叶えてくださいませ」


男は端に避けて深々と頭を下げる。そして扉は完全に開かれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ユキマチの塔 @Nissyu_3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る