わたしを見て
阿下潮
わたしを見て
息をするように毎朝服を着て嘘をつくように紅なんぞ引く
髪を切るようにリップを変えてみる 何が変わるの? 何か変わるの
意気揚々今日の装備はつよつよです赤のヒールと老舗の餡パン
玄関の鏡の前の約二秒 間違ってないよね大丈夫
颯爽と赤い靴底見せ上る階段よろけ餡パンつぶす
弊社ではコンプラ的にダメでした知ってたけどさ黒いマニキュア
タトゥーってどれぐらい痛いのかなあ? 入れるとき? 意味なくなったとき。
色を変え形を変えて素材変えどうせ最後は脱がされるのに
昼休憩ファッショニスタは闊歩するわたしの前には薄い餡パン
腕を振りこの道を征くわたしこそ貴女にとって美しくあれ
餡パンと水しか口にしてないのに直す化粧ってコスパは? 意味は?
繰り返すわたしを見てと本当は見ないでほしいでも見てほしい
背が高いとか目が大きいとかさあ、作れるじゃんかそんなの全部
なにを着てなにを叫んでいようとも服は服だしわたしはわたし
雨の日の髪を気にする貴女の手まだ見てたいからがんばれ梅雨
地下鉄の窓に浮かんだ幽霊だ着飾るだけがファッションじゃない
見上げれば貴女の代わりに月が笑うそぞろ歩けばヒールも笑う
この部屋に貴女のシャツが落ちているそれをめがけてわたしは落ちる
きわきわでわたしの形保つのは抜いたら終わりのピアスの栓
息を吐き今日の化粧をこそげとる嘘枯れ果てぬ明日くる前に
わたしを見て 阿下潮 @a_tongue_shio
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます