第7話 メンナ・アンツ②
私がメイド長に連れられて部屋に入ると、そこには向かい合わせで座る二人の男がいた。何故だか分からないけどその二人は私が見ても直ぐに分かるぐらいに不穏な空気を醸し出している。
私はそんな二人の様子が気になって、部屋に入って直ぐにその男達に視線を向けた。
最初に視線向けた椅子に座っている重厚な白い髭を立派に蓄え老人は、どこかで見たことのある顔をしてる。
うん、どうやら椅子に座っている老人は私の元ご主人様のようだ。いつも笑顔で和やかな姿しか見たことがなかったから、普段と印象が違いすぎてぱっと見誰だか全然分からなかった。
私はそんな主人の様子に驚きつつ、次にベットに座っている男に視線を向ける。
ただその男に全く見覚えはない。という事は恐らくこの男がご主人様の命の恩人という奴なんだろう。私はベットに腰掛けているこれから肌を重ね合わせる事になるであろう男をまじまじと見つめた。
男の年齢は恐らく二十代後半から三十代前半ぐらい。ボサボサと伸び切った粗野な髪、無骨な無精髭、筋肉に包まれた体。いかにも冒険者ですといった風貌をしている。見た目はどう見ても冒険者。
(ただ娼婦嫌いって話を聞く限りこいつは冒険者じゃないのかしら?)
というのも世間一般的に冒険者という生き物は飲む打つ買うを心情として生きている。金があってもなくても飲み屋にいき、飲み屋で余った金を持ってカジノに向かう。そしてカジノで金が増えたら娼館に傾れ込む。
そんな爛れた生活を毎日毎日飽きもせずに繰り返しているそれはそれは気持ち悪い生き物なのだ。そんな生活をしている冒険者で娼館嫌いなんて生き物は、ユニコーンより珍しい生き物よ。
(だからこいつは冒険者じゃない・・・はず・・・いやでもどう見ても風貌は冒険者なのよね?だとしたら、じゃあなんでこいつは娼婦嫌いなの?もしかして前に娼館でとんでもないトラウマでも植え付けられたとか?初めて行った娼館でお母さんでも出てきたとかかしら)
そんな当たり前の疑問が私の頭に沸々と湧いてくる。
「アンナ、お客様の隣に座りなさい」
ただそんな私にお構なしに、メイド長は冷たい声で命令してくる。私は一旦、考えることをやめて男の隣の触れる触れないかギリギリぐらいの位置に腰掛けた。
メイド長はそんな私の様子を見届けると、近くにあった机に水晶のようなものを置いてご主人様と共に部屋から出ていった。
恐らくあの水晶は監視用の魔道具だろう。どうやらメイド長は私が逃げる出すことを警戒しているみたい。
(しかしメイド長も意外と馬鹿ねぇ)
流石にこの状況で逃げる訳はない。私だって好き好んでお尋ね者なんかになりたいわけではない。そもそもこの男を一回でも射精させれば、私は自由の身なのだから。
(まぁいいわ、あんなもの気にするだけ無駄ね)
私はメイド長を心の中で小馬鹿にした後、男の前に立ち上がり深々とお辞儀をした。
「あの、この度は私達のご主人を助けていただきありがとうございます。メイド一同感謝に耐えません。この度は私が誠心誠意、貴方様の御相手させていただきます」
私は主人思いの勤勉なメイドを演じながら男に挨拶をする。男は何故かそんな私を不思議そうな顔を浮かべながら見つめているがまぁ気にすることなんてない。私はそんな様子の男を尻目にスカートを摘んで少し俯きながら自信のなさげな声で言葉を続けた。
「私、大切なご主人様の命をお救いいただいた殿方にどうしても直接感謝をお伝えしたくて、今回自ら立候補させていただきました。でも立候補した後メイド長から話をお伺いしました。貴方様は可愛い子とお相手したいという事ですよね・・・・・あの・・・・・・私なんかじゃ駄目ですよね。メイド長見たいに美人じゃないし、胸も大きくないし」
「いや嫌なわけじゃないけど・・・」
男は自信なさげに振る舞う私に対して女慣れしていない童貞みたいに挙動不審な態度をしている。この様子だとこの男、私が何もしなくても勝手に射精してしまいそうだ。
そんな考えが一瞬頭によぎったが、私はそんな思考を直ぐに振り払った。前回と同じ鉄を踏むわけにはいかない。今回は油断なんてできるわけがない。どんな簡単な仕事といえ、私の人生がかかったセックスなのだから。
だから私は万が一にも失敗しないように、この男に魔法をかけることにした。男が興奮を抑えきれないようになる魔法を
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