第6話 メンツ・アンナ

私はメンツ・アンナ。24歳。


ソルスティア王国南西部に位置する小さな農村出身。私の生まれ育った村は特産物や名産物なんて物は無くて皆んなが貧しい生活をしていた。


私の住んでいた家だって小さく質素な住まいだった。家具も誰かのお古やゴミ捨て場に捨ててあった物を貰って何とか修理りていたやつだから大抵が壊れかけ。当然贅沢なものや高価な品物なんて家にはなくて、子供の頃は新しい洋服やおもちゃなんて見たことすらなかったわ。 


そんな普通に考えれば最悪な生活。


でも。そんな暮らしの中でも私の人生はいつも宝石箱を開けるような喜びに満ちていたの。


それはどうしてかって?


だって私は可愛いかったから♡


子供の頃から、周りの大人達は私のことを「かわいい、かわいい」って天使を見るかのように甘やてくれたし、どんなわがままも叶えてくれた。私は村で特別な存在だったの。


そしてそれは十二歳になって都市部の学園に入学してからも同じ。ちょっと工夫してお願いすれば男達はみーんな私の可愛さに魅了されてどんなお願いを聞いてくれたわ。


ガリ勉君にちょっとボディタッチをしながらお願いしたら宿題は全部やってくれた。


ムカつく奴がいたらヤンキー君の胸で泣きついたらみんなボコボコにしてくれた。


欲しいものは私に惚れていた小デブの成金くんが全部プレゼントしてくれた。


生徒だけじゃなくて先生だってそうよ。


テストで赤点をとって退学になりそうな時「何でもしますから」って上目遣いで魔法な言葉を囁いたら簡単に点数を改竄してくれたわ。


あぁ、本当に人生イージーモード。


私には分かっちゃうの。


光り輝く未来が待っている事が。無限の可能が胸いっぱいに広がっていることが。


だから学園の中では見つからなかった、私を満足させれるほどに巨万な富を持つパートナーと巡り合うことだって簡単なはずよ。


私はそんな思惑を胸に秘めながら、卒業後に国でも有数の大商人の家でメイドとして働きはじめた。もちろんソルスティア王国で十本の指に入る資産家のご主人様の心を射止めるため。


なぁに、私の可愛さを持ってすれば簡単な話よ。一年も経たずに骨抜きにしちゃうんだから。


何て思ったけど現実はそんなに甘くはなかった。


主人は年老いて精力が風のように吹き飛んでしまつまたのか私に全然手を出してこないし、メイドの先輩達は皆んな厳格で厳しいしで本当に最悪。


この前なんて花瓶を一個割っただけ一時間も積極されちゃったのよ。あんなに一杯あるんだから別に一つぐらいいいじゃない。


何とか一年は頑張って働いて見たけどもう限界。これなら卒業式の日にプロポーズしてきた成金の小デブと結婚した方が何百倍もマシだったわ。


あぁもう、こんなとこさっさと辞めてやるわ。


働き始めて二年目、仕事中も頭の中はずっとそんな考えに支配されていた。もちろん仕事中は何をやっても上の空。誰の言葉だって入ってきやしない。


ただそんな私の耳にもとある噂話だけは何故か飛び込んできた。


というのもご主人様には亡き妻との間に一人娘がいるの。確かリゼッタという名前だったかしら。その子ご主人様の一人娘ということもあって目にいても痛くないぐらい可愛がられていたわ。


しかもリゼッタは顔は整っていたし、大商人の唯一の跡取り娘だしで殿方に大人気。野心に溢れる若者や爵位を継げない貴族達なんかから毎日毎日お見合い話や豪華な贈り物が送られてきたわ。


当の本人は全くそんな話に微塵も興味がない様子で、どんな殿方からのお見合い話だって聞きもせずに右から左、送られてきた贈り物何て中身を開けることすらしなかったけど。


まぁそんなお嬢様に送られてきた贈り物が、まさかいらないからと言って送ってきた相手に送り返す訳にはいかないし、売って誰かにケチをつけられても面倒臭いしでろくに管理もせずに適当に空いてる倉庫に放り込んでいるって噂なの。


その噂話をたまたま耳にして私は思ったわ。何て運がいいのかしらって。


だってそんなもの何個かなくなったてって誰も気づくわけがないでしょ。むしろ私が有効活用してあげた方が倉庫で燻っているよりプレゼントも嬉しいはずよ。


私はその噂を耳にしてたから直ぐに実行に動き移したわ。


場所を割り出すためにお嬢様のお付きのメイドにこっそりついて回ったり、掃除をしているフリをして自分でも屋敷中を探し回ったりあらゆる手段を尽くして、三ヶ月間かけてようやくその倉庫の場所を嗅ぎつけたわ。


そしてその一ヶ月後、泊まり込みの仕事がある日に私は計画の結構に移した。夜中皆んなが寝静まった頃こっそり部屋を抜け出して倉庫に忍び込んでプレゼント達をありがたくいただこうとした・・・のが運の尽きね。


残念な事にその倉庫には侵入者対策用の魔道具が設置されていて登録された人以外の人間が入ると警報が鳴る仕組みになっていたの。


倉庫に入ると直ぐにけたたましい防犯ブザーの音が鳴り響いたわ。その音に注意を引かれてるうちにすっ飛んできた元Sランク冒険者のメイド長にあっけなく捕まっちゃったの。


私は言い訳もする暇も与えられず館の地下にあった牢屋行きよ。


本当に最悪。


ここで働いてからいい事なんて一つだってありゃしない。


私は牢屋に何日も監禁された。

厳しい壁に囲まれ、自由を奪われて人生の底に絶望を感じた。暗闇の中で何度も私はどうなるんだろうって自問した。希望の光なんてりゃしなかった。


そんな風に絶望に打ちひしがれて数日立ちもう諦めかけていた時、何故か牢屋にメイド長がやってきて私は牢屋から釈放された。


何が何だか混乱している私にメイド長はお風呂に入るように言ってきた。そしてお風呂から出たら直ぐに仕事の時に来ていたメイド服に着替えさせられて馬車に乗せられたの。


そして馬車に揺られる事一時間、ついたのがここ。


歓楽街ウェストバル。


その光景を見た時改めて私の輝かしい人生が終わったと理解したの。私は一生ここで奴隷となって娼婦として死ぬまで男に股を開き続ける生活をするんだって。そんな生活をするぐらいなら・・・


例え殺されたとしても良い。逃げだそう。そう覚悟を決め足に力を入れようとした時、メイド長の口から全く予想だにしていなかった言葉が飛び出できた。


なんでもこのメイド長が言うにはご主人様がちょっと前にとある男に命を救われたみたいなの。


その恩もあって老人はその男の願いを叶えてげる事にしたらしいの。どうしても一度でいいから可愛い女の子を抱いてみたいっていう願いを。


それを聞いてご主人はウェストバルで一番の高級なお店、貴族やお金持ちの御用達の一晩で金貨が何十枚も飛んでいく高級娼館に連れていっこうとしたんだけど一つ大きな誤算があったみたい。


その男は大の娼婦嫌いみたいで一般人でしか勃起しないみたいなの。


その話を聞いてご主人様は大変お困りになったわ。どうしても命の恩人のお願いを聞いてあげたい。ただ、だからといって館で働いているメイドをあてがう訳にはいかないし、当然娘を抱かせる訳にはいかない。


どうするべきか?と悩んでいた時、たまたま牢屋にいた私に白羽の矢が立ったった。雑に扱ってもいい丁度良いやつがいたってね。


そのおかげで私は牢屋から解放された。しかもセックスして私が三回逝くまでに男を射精させることができたら私の罪は無かった事にしてくれる挙句に口止め料として盗もうとしていた贈り物も幾つか貰ってもいいみたい。


はーぁ、私はまだ神様に愛されていたのね。


この女やご主人様がどうしてこういう条件を付けてきたかわかったもんじゃない。ただ私のことを見誤っている見たいなのは確かみたい。


私は純情そうな見た目だけどあんたと違って処女じゃない。むしろ男の扱いには手慣れている方なの。一回射精させるなんてお手のもの。早漏な奴なら十秒もたたないんじゃないかしら。


しかも娼婦嫌いの男なんて私が一番得意なタイプじゃない。私はほくそ笑みながらメイド長につれられとある館の一室に入った。


それが未来への扉だと信じて。

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