無名の人生

名無しくん

謎の少女と謎の男性との出会い

『ここは…どこだろう?』

目が覚めるとそこは見知らぬベットだった。

見知らぬ部屋、なぜ私はここに居るんだろ?


『あれ、何も思い出せない…』

どれだけ頭を回転させても自分がどうしてここに居るのか、さっぱり思い出せなかった。


それだけじゃない、自分が何者なのか、自分の名前すら思い出すことが出来なかった。


『これじゃあ、なんでここに居るのか思い出すのは無理そうね』


自分の事で、唯一分かったのは容姿だけだった。

ベットの近くに綺麗な手鏡が置いてあり、それを手に取った時初めて自分の顔を知った。


でも、鏡に映った自分の姿は顔は傷だらけで、

体に関しては、裸に包帯を巻いているだけだった。

『あら、転んだのかな?』

傷に関しても全く覚えが無かった。

そして、声が出ない事にも気が付いてしまった


『これじゃあ、私が誰なのか、何があったのか聞くのは無理そうね。』


考えるのを諦めて、ベットに倒れ込み自分顔の傷を撫でた…その時、頭の中に知らない映像が流れた。その映像には横たわっている私と私を抱き上げてる見知らぬ男性が写っていた。


「〜〜…?……ー~」

「ーー 〜…ー」


『誰かしら…何を話しているんだろ?』

会話の内容が気になって、ひたすらに頭を回転させるが、肝心な声にノイズがかかっていて聞き取れなかった。


『ダメね、全く分からない。私と知らない誰か、私が忘れてるだけで知り合いなのかもしれないけど…まぁいいわ、どうせ考えたって分からないなら考えないのが1番。』


そうして考えるのをやめた私は、ふと自分が寝かされている部屋が気になった。


『ここは、私の部屋なのかしらねぇ?』


私は部屋を見回したが、見れば見る程、男の人の部屋のように、黒を基調にしている、家具が並んで居て、自分の部屋とはとても思えなかった。



『私はあまり女の子っぽい物は好きじゃないのかしら?あ、でもあれは、私のモノにしては大きいわね』


部屋の隅に掛けられている服は、これまた黒ベースな清楚スーツだった。

明らかに、私が着るには大きすぎるスーツを見て、ここは私の部屋では無い事を確信する。


『ここは兄の部屋なのかしら?』

私に男兄弟が居たのは定かでは無いが…

とりあえず、この部屋以外も見てみようとベットから起き上がった。


『少し体が痛い気がするけど、そこまででは無いなぁ~』

パッと見、かなり大きい怪我に見えるけど、私は痛みに強いようだ。


部屋を出ると、リビングらしき部屋に続いていた。

『凄い大きなリビングだなぁ。

でもやっぱり生活感があまりないと言うか、部屋数は多いけどこのリビングほんと一人暮らしの男の人の家みたい』


とんでもなく部屋数は多いが、リビングはまたも、黒基調で、物も少なくどうしても女の私が住んでるようには思えなかった。


『こんなにお部屋あるんだし、ここはあまり使ってなかったのかしら?

もっと色んな部屋を見たいけど…なんだか気が引けるわね』

記憶が無い以上知らない家な気がして、勝手に部屋の扉を開けることは出来なかった。

仕方ないので、無駄に広い廊下?を歩き回る事にした。


「〜…ー〜ー」

『何かしら…またノイズが…』

また何が映像が流れるのかと思い身構えたが、いくら立っても流れてこず、次第にリアルでなっていることに気づく。


「ーーー!〜ーー!」

『何かしら、この音?』

妙に気になった私は、音の正体を探るべく耳を済ませ音に近づいていった。

『ここだ…』

音の先は、半開きの扉から光が漏れている部屋だった。

好奇心を抑えきれず、半開きの扉に手をかけゆっくりと扉を開けて行った。


『なんだ…テレビか…』

部屋には、大きなテレビと、沢山の本、そしてソファーが置いてあった。


『このテレビ、壊れてるのかしら?』

どれだけ耳をすましても、全てノイズがかかってしまう。

そして、ふと画面を見てしまった。


それは丁度、ニュースをやっているようだった。

『一体なんのニュースなのかしら?』'

何故か、その画面に釘付けになってしまったのだ…


「~ー…!!」

天気予報らしき物が終わり、次のニュースに映像が写り変わった。

そこに移る景色は車とトラックの衝突している映像を映し出していた

『あら、これはすごい事故があったのね』

ただ流れていく映像を見ていると、ふと見知った写真が現れた。


『あれ…これ、私だ』

何故、私がこの事故のニュースに出ているのか、どれだけ耳をすましても、ノイズがかかっていて分からない…文字を読もうにも文字を認識することが出来ない

『へぇ、私字が読めないだ』


テレビに夢中になっていた私は後ろから近づく足音に気づく事が出来なかった。

「あ、目が覚めたんだな。

って、そんな格好でうろついて…俺も男なんだけど…」

『びっくりした、誰かしら?この人』

気付いたら後ろに居たようで、肩を掴まれて初めて存在に気づいた、そして何か話していたのだが、この人の声もノイズがかかっていて何を言っているのか認識することすら許されなかった。


『あぁ、テレビが壊れてたんじゃないのね。

それにしてもこの顔…何処かで、』


ふと、頭の中で流れた映像を思い出した。

『あぁ…あの時私に話しかけてきた人か…』

「あ、言葉が分かんねぇのか…ちょっと着いてこい。」

『ん〜、わかんない。何を言ってるのかしら?』


言葉を理解出来ない私はただ首を傾げる事しか出来なかった。

そんな様子を察したのか男は、私に向かって手招きして、部屋を出てった。

『ん、ついて来いってこと…で合ってるのかしら』


直感で、男の後を付いて行った。

「これ、君の服が入ってるから、さっさと着ろ。今の格好じゃ裸も同然だろ…」

リビングに付いたら、男は立ち止まって、謎の紙袋を差し出してきた。

『受け取れってこと…出会ってのかしら?』

意思が分からず、男と紙袋を交互に見つめると、男は、袋を突き付けてきた。


『何かしら、これ?』

袋の中には綺麗なワンピースが入っていた。

もう一度男を見つめると、目を逸らして私の体を見ないようにしていた。

『あ、そういえば私包帯だけの裸だったのよね。あぁ、これを着ればいいのね。』


男の意志をやっと理解出来た私は渡されたワンピースを着て見せた。

「よし、ちゃんと着たな。お前、名前は?」

『…何を言ってるんだろうか、首を傾げてるから何か聞いてるのかしら?』

「ダメか…じゃあ、お前は今日から無名な。どうせお前には名前も認識出来ないんだろうし、適当でいいだろ…」


何を言ってるのか、一切理解出来ないのに、何故だかこの男は信頼出来る…

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