第11話相談

 鏑木さんから休み時間に相談を受けていた。


「私、毒とか麻痺とかの状態異常は治せるんですけど、傷は治せないんです……聖さんみたいに両方治せたら良いんですけど……」


「そうなんだ……でも僕みたいな無能力者からすると凄いと思うけどな。それに、鏑木さんには鏑木さんの良さが、聖さんには聖さんの良さがあると思うけどな」


「有難うございます……嬉しいです、その言葉」


 鏑木さんは目に涙を浮かべながら感謝してきた。


「それに鏑木さん、ダンジョンの人体への侵食も治す事が出来るみたいだけど? それって凄いことだと思うよ! これからダンジョンに潜る時間が増えてくるかもだから、とても有用だと思うよ!」


「有難うございます。皆さんを癒せるように頑張ります!」


「頑張り過ぎないでね……あまり気負い過ぎると倒れちゃうよ?」


「はい、分かりました! 適度に頑張ります」


 凄い真面目だな……心配になってしまう……それにしてもダンジョンの人体への影響を治すことが出来るなんて凄いな……凄い能力なんだから他人と比べて落ち込むことなんてないのにな。


 そういえば、創造主様が皆にどの能力を割り当てるか決めているって言ってたな。

 どういう基準で決めているのだろう? 今度聞いてみようかな? 【夜ダンジョン】から帰還する前に『また今度心の声で話しかけますね』なんて言ってたけど、あれから全然音沙汰なしだ……。


 とそこで、僕の頭の中にある考えが浮かんできた。

 創造主様が他人に心の声で話しかけることが出来るのは【夜ダンジョン】の中にいる者だけなんではという仮説が思い浮かぶ。


 あれだけ『ダーリン、ダーリン』とか、『今度また心の声で話しかけますね』とかウキウキで言っていたのに、全然音沙汰なしはおかしい……。

 僕の仮説が合っていると、辻褄が合ってしまう……。


【夜ダンジョン】の中では、あれだけ創造主様のことをウザがっていたのに、恋しくなっているのかな、あのウザさが……まさかね……。

 そのことを創造主様が知っているとしたら、彼女は僕がまた【夜ダンジョン】の中に行くと思っているのかな?


 非常識そうだったから、【夜ダンジョン】の危険性等全く気にしていない可能性がある。

 私が大丈夫なら他人も大丈夫。

 そんな事普通に考えてそうな程、今まで会った人達とは全然違っていた。


 そもそも彼女の事を人だと認識していて良いのだろうか?

 実物はうら若き乙女だの、絶世の美女だの言っていたけれど、実物は別の場所にいるって事なのかな? 話してる感じだと思念体って可能性もありそうだけど。


 答えの見つからないことに思いを巡らせていると、鏑木さんから不思議そうな表情で見つめられていた。

 彼女には死んでも僕の頭の中で考えていることは言えないな……。


【夜ダンジョン】に入ったなんて誰にも言えないし、それに、ダンジョンの創造主様なんて人がいるなんてこと誰も信じてくれないだろう……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【ダンジョン適性零】、【獲得能力無】のダンジョン攻略者 ~【無能】のレッテルを貼られ、どれだけ馬鹿にされても僕は絶対に諦めない~ 新条優里 @yuri1112

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ