思い出した故郷

今日も僕はいつも通り畑仕事をしていた。

「トマトもキュウリもナスもたくさん取れたな…今日はちょっとご馳走作ろっと!」

夏のこの時期は1日にたくさんの実が取れる。

1日収穫したら5日は収穫しなくてもいいくらいの量なのだ。

そして5日たった後にもたくさんの実が取れる。

夏はそれのエンドレス繰り返しだ。

「よし、今日はこれで畑仕事を終わりにしよう」

畑から立ち去ろうとした、その時だった。

「………ん?」

よく見ると土の中に何かがある。

「本?」

土を掘り、本を取り出し、表紙の土をはらう。

そこに書いてあったのは

「【ロケットと地球化学】…」

地球…?なんだ。地の球、つまり星…?でも……何か…思い出しそう……な…


───ニュース速報です。世界第三次大戦とも呼ばている現在の核戦争により、地球が滅びる確率が極めて高いということが発表されました。

───XXXXX。逃げて。あの博士のところに行って、ロケットに乗って地球から逃げるの。

───死んでも離れても、俺らはずっと一緒だもんな!

───さよなら、地球こきょう


「ッ!!!!!」

思い出した。故郷母なる星のこと。そして、博士のことも。

僕は走って家に行き、スマホを手に取る。そしてチャットを開いた。

『みんな!』

『ん?どうしたの?』

真っ先に反応してくれたのはベガだった。

スマホで写真を撮り、それをチャットに送る。

『なんだよこれ?地球?』

リゲルも来た。

『みんな思い出して!僕らの住んでいた星は地球だ。核戦争の地球から逃げてきたんだよ…。』

その文を送った後の数秒間、チャットには気まずい空気が流れた。

きっとこの2人は覚えていない。いや、思い出せないというのが正しいのだろうか。

それはきっと、地球から逃げることに対して僕ほど悲しみを抱かなかったからだろう。

自分にとって都合が悪いことはすぐに忘れる。人間の心理だ。危険な地球から逃げてこれたのだ。普通は嬉しく思うだろう。

だけど僕は地球こきょうを離れて別の星に行くなんて考えられなかった。

僕の言っていることが分からないのか、ベガすら何も反応してくれなかった。

まずい、このままでは僕がただの変人になってしまうではないか。言っていることは本当なのに…

次の瞬間、何も変わらなかったチャット画面にひとつのチャットが表示された。

『ソル…俺も思い出した。地球のこと』

『ホント?!アル!』

彼の名はアルタイル。僕含めみんなからはアルと呼ばれている。

『俺ら…きっと神に睨まれているだろうな。死から逃げて呑気に暮らしてるんだから』

その通りだ。確かに、僕たちは戦争にには関わっていない。誰かを凶器で傷つけたわけじゃないし。でも、にならどうだろう。外国のたくさんの子供やその親の命を奪った日本の軍隊と同じ国の人だ。

恨まれて当然。神に見下されて当然。死んで当然。

でもそんな中、博士は僕たちを生かそうと計画を立ててくれた。

なぜ僕たちを生かそうとしてくれたのかは分からない。

僕たちはそんな博士に甘えて、神に甘えて今を生きている。

『私も思い出した!地球…私たち人類のせいで…』

『そうだ!俺らの故郷は地球だ…』

僕たちの手によって滅ぼした地球に会いにいく資格はない。

でも…

『地球…行きたいなぁ』

そう思ってしまった。

僕は地球が大好きだ。広くて、面白いものばっかり。時に残酷だけど、世界中のみんなと分かち合うことができたら、それほど楽しいことはないと思うんだ。

この星だってとてもいい。可愛い動物をお世話して、自分で育てた作物を食べて、自由気ままな生活ができる。

その生活を手放すことになるかもしれない。

『みんなは、行きたい?』

きっとみんな地球に行く代償を分かっている。それでもみんなは

『私は行きたい』

『俺も。リゲルは?』

『もちろん』

と言ってくれた。嬉しい。

これから僕らは地球を目指すんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

星の住人の地球捜索記 ベル @bell_1111

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ